| ここ数年、会社の仕組みに関する商法の改正が続々と行われている。ドイツ法を前提とした法律の在り様をアメリカ法的なものに変えていく狙いといわれている。商法の市場経済化と言ってもよいかもしれない。
この商法改正は、本誌「バランス」読者のすべてに直接的に関わることではないが、ぜひ参考にしてほしいと思い、主要な改正点を記載した。
残暑厳しいときに少々暑苦しい話だがご容赦の程をお願いしたい。
1.額面株式制度の廃止
標記の件を述べる前に、株式等についての基本的なことを簡単に述べておこう。
(1)株式と株券について
株式とは、株式会社の「社員」という地位の形式である。ここで言う「社員」とは、雇用されている従業員の意味ではなく、株式会社への出資者の意味である。
そして株券だが、その株式の権利を証券の形で表すものである。当然に「有価証券」の筆頭である。株主と株券と株式いずれも意味が異なるが、概ね株式会社の所有にかかる言葉と理解できる。
いわば、株式会社の出資者としての権利を、「株式」という形で発行する。株主は所有株式数をもち、その具体的証書が「株券」である。
株券を直接他人に譲渡する、または証券市場で売却することで、株主の権利を譲渡し、かつ投下した資金を回収し、値上がり益を享受することができる。もちろん値下がり損失を被ることもあり得る。通常、株式の譲渡は株券の受け渡しで成立する。
しかし、株式譲渡が日々刻々と頻繁に行われている証券市場では、株券の引き渡しは手続き等が面倒になるため、保管振替制度が確立しており、株式を購入しても、実際には買った株券を手にしない場合も多い。売るときも自らの株券引渡はない。
もちろん現実に株券をてにしてみたいというのであれば、株券の交付を受けてもよいのである。しかし、多額の株券の保管は不安でたまらなくなってしまう。
(2)額面株式、無額面株式について
額面株式は、1株あたりの額面金額が定められており、各株主が株券を通じて有する会社に対する割合的地位が金額で表されるものをいう。イメージするならば、株券という紙の上に、例えば「1株の額面5万円」というような記載があるものである。
一方、無額面株式は、額面金額の記載のない株式、つまり1株の金額が定められておらず、各株主が有する会社に対する割合的地位が「株式数」だけで表されるものである。
今般の商法改正前は、新規設立の設立会社の額面株式1株の額面金額は原則「5万円」以上であった。
これまでは、1株の発行価額が5万円を下回ることができないため、株式分割などで株式の流通性を阻害するものであるという問題点の指摘があった。
例えば、1株を2株に分割するなどである。
また、証券市場での株式の時価が、日々刻々と変化する状況では、額面金額と株式時価は関係なく断絶したものとなっており、額面金額は株式流通・売買の上でほとんど意味をなさなくなっていた。
そこで、今回の商法改正で、株式会社の発行する株式は、すべて「無額面株式に一本化」することとなった。
商法改正の趣旨としては、発行する株式の大きさは、会社がその管理コストや株価の動向等を判断しながら、発行会社独自で決める、というものである。
株式の発行は、会社の資金調達の側面を持っている。株式分割等が容易にできることで、広く流通させたり、投資しやすくできるとされている。
なお、株式にかかる事項は、会社の定款の絶対的記載事項であるため、定款変更が必要となる。平成13年商法改正に伴う全国株懇連合会「定款モデル」の改正例を示しておこう。
【現行定款モデル】
第2章 株式
(額面株式1株の金額および1単位の株式数)
第6条 当会社が発行する額面株式の金額は50円とする。
(2)当会社の1単位の株式の数は、1,000株とする。
【定款モデル改正例】
第2章 株式
(1単元の株式数および単元未満株券の不発行)
第6条 当会社の1単元の株式の数は1,000株とする。
(2)当会社は、1単元の株式に満たない株式(以下「単元未満株式」という。)に係わる株券を発行しない。ただし、株式取扱規程に定めるところについてはこの限りでない。
2.監査役の任期について
株式会社んぼ監査役についても、改正事項があるが、まず基本的な事項を記載しておこう。
(1)監査役の職務
取締役の職務執行の監査(会計に関する監査を含め、会社の業務全般についての監査である)が「監査役の職務」である。
なお、小会社(株式会社の資本の額が1億円以下の株式会社)の監査役の監査業務は、特例法により、「会計監査」に限られている。
監査役は、チェック機構であるため、取締役等から何らかの影響が及んではいけないし、その独立性が阻害されるようでは、その設置意義が損なわれることになりかねない。
よって監査役は、その会社の子会社等の取締役等との兼務を禁止されている。言うまでもないだろう。
監査対象期間の年度途中まで取締役であった者が監査役に選任された場合を、「横すべり監査役」というが、判例上は、横すべり監査役による自己感さも許される、とする立場をとっている。
このあたりは、法の趣旨を適切に捉えて吟味する必要があるように思える。
(2)監査役の任期について
今回、株式会社の監査役の任期は3年から「4年」に延長(法273条(1))された。
実は、以前、平成5年改正で監査役の任期は2年から3年に伸長されている。
これらの改正趣旨は、前述したような、監査役の独立性などと密接な関連がある。
任期が短いと監査役も再選を期待するなどして、経営者の意向に沿うような職務執行を行う傾向が生じる危険性がある。
また一方で、任期をのばすことは、監査役の地位の安定化、監査の実効性を高める意味があるのだが、一度再任されると改正後は、8年と任期が長期にわたることともなる。
これが改正法の趣旨に沿っているのかという点も問題となろう。
なお、株式会社の監査役の4年任期は、施行日が平成14年5月1日である。
平成14年5月期決算に関する定時総会で選任される監査役より順次4年の任期が適用される。
ただし、監査役の任期については経過措置で、「この法律の施行後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結前に在任するものの任期に関しては、なお従前の例による」とある。3月決算の法人については、施行日である平成14年5月1日の後に最初に到来する決算期は、平成15年3月期決算に関する定時総会で選任される監査役から任期が4年となる。再確認されたい。
商法改正点2点だけ記載した。我々が数多く関与している「非営利・協同」の分野でも株式会社が存在しており、中身よって改正点について取り組む点もあるかと思う。こうした改正が何を意味するのか、学ぶべき点はないか、など世の流れとともに学習すべき「手がかり」になれば幸いと思う。
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