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2001年9月1日

地方自治体病院の経営改革

 私共が所属する公認会計士協会の機関誌に「JICPAジャーナル」という月刊誌があり、経営や会計を巡る法律、基準等各種情報の記事を掲載し、会員へ情報の徹底を図っている。その対象は当然、会計士の主たる業務先である民間営利法人に関するものがほとんどであるが、01年5月号では「地方自治体病院の経営改革に挑む」という特集が掲載され、研究者、総務省担当官、自治体病院経営責任者の論文が掲載されている。
 こうした機関誌で特集が組まれること自体、非営利の公的セクターや医療福祉事業の経営や会計に関する関心の高まりがあり、また、経営的な問題が重要視されていることの反映と思われる。
 我々の関与先として、医療福祉事業を営む民医連経営や地方自治体の労働組合もある。また、当雑誌での議論には、一定対応していくべき部分と、批判していくべき部分とがあると思われるが、参考になる事項が含まれているので、本号では地方自治体病院の基本的経営状況や今後の対応の方向等について、その概要のいくつかを紹介することとしたい。

1,地方自治体病院の概要

(1)概要

 地方自治体病院とは、地方公共団体(都道府県、市町村、一部事務組合等)自らが開設する病院であり、各地方議会の審議により、設置、運営されるものをいう。
 実態としては、地域の基幹病院として、高度医療や、医療過疎地域での医療の中心を担っている病院が多い。
 
 法的には、地方公営企業法の適用を受けるものがほとんどで、地方財政の特別会計として運用され、基本的には独立採算であるが、高度特殊医療や僻地医療等を担う趣旨から各地方自治体からの補助金を受領し、運営されている。
 この補助金の病院経費に占める割合は、98年度全国平均でおよそ16%、東京都の場合は約30%となっている。
 
 地方自治体病院の数はというと、99年度時点で998病院、全国の病院数に占める割合は約11%である。1病院当たりの病床数で区分すると、300床以上、100〜300床、300床未満それぞれで約1/3ずつを占める。
 
 地方自治体病院の総病床数は99年度時点で約23万床であり、全体として減少傾向にある。また、外来患者延べ数は141百万人/年となっており、99年度時点では増加傾向を示している。

(2)経営状況

<全国自治体病院の経営状況の推移>(単位:億円)
年度
95
96
97
98
99
総収益
37,583
39,331
40,084
40,067
41,412
内医業収益
32,261
33,943
34,595
35,094
35,873
経常損益
△764
△362
△690
△1,083
△1,016
赤字病院割合
50%
44%
53%
59%
56%

 総収益と医業収益との差額の主なものが、地方自治体からの補助金収益と思われる。
 
 全体として、補助金収益を受けても1〜3%の経常赤字の水準となっている。
 
 また、年度推移でいうと、96年度までは一定の経営改善基調にあったが、97年以降経営悪化が進行している。これは、民間医療機関の状況とも一致する推移であり、97年度以降の診療報酬制度の改悪や経済不況の深刻化の影響が現れていると思われる。また、98年度での急速な悪化は、薬価の改訂による差益減の影響が大きいと分析されている。
 
 累積損失(赤字の累積)の状況は不明であるが、それらは、「不良債務(赤字補填のための地方自治体財政からの借入の意味か?)」として認識され、「第4次病院健全化措置」により、2000年度時点で18病院で「健全化措置」が進められている。

2.地方自治体病院の経営改善策

 国及び地方自治体財政の深刻化が叫ばれている中で、上記の地方自治体病院の赤字状況についても、再検討の議論が行われている。
 また、国立病院等での独立行政法人化の議論がある中で、地方自治体病院の経営担当者自体にも現状の経営の改善を模索する動きが出てきている。

(1)地方自治体側

 研究者サイドの意見として下記の意見が提起されている。

(1)自治体病院の役割の「明確」化
 全体の医療供給体制の中で、自治体病院の役割を「明確」にし、自治体病院と民間等や自治体病院同士の役割分担を明確にしていく。(非効率、重複する機能は合理化する。)
 
(2)補助金の算定根拠の明確化
 補助金について、抽象的に算定するのではなく、診療科や部門毎の管理会計を導入し、分析を行った上で具体的に補助金の必要額を算定する。
 
(3)診療報酬制度の見直し
 高機能医療については、診療報酬上包括制(DRG)を導入し、採算がとれるようにする。
 
(4)人的体制と処遇の見直し
 事務系職員について、一般公務員業務としてのローテイトから分離し、医療専門職としての体制を確立する。また、給与体系についても、年功給中心からインセンティブを発揮しうる職能給中心に移行する。

(2)地方自治体病院側

 研究者や病院経営責任者サイドの意見として、下記の意見が提起されている。

(1)使命、役割の明確化
 市場競争原理の中で、また患者、地域住民の立場で、各自治体病院の使命を明確にしていかなければならない。
 自治体病院としての機能、役割の明確化が必要。
 
(2)管理システムでのイノベーション(企業革新)の導入
 医療行政に応じた機能体制、既存組織の抜本的改革、コスト意識の昂揚と情報管理の活用等。そして、これらについて、各レベルの職員に理解を求める作業が徹底されなくてはならない。
 
(3)PFIの導入
 従来の業務委託やアウトソーシングの枠を超えたPFI(民間資金の活用による公共施設等の整備)の活用。この点では、すでに滋賀県や高知県で実践が進められつつある。(民間営利事業の参入はこの面からも促進されうる。)
 
(4)ITの活用
 従来の「レセプトシステム」「医事会計システム」「健康診断システム」などに限定された情報管理から、「オーダリング」等を活用した総合的な医療、経営の情報管理システムへの移行。特に経営管理の視点でのシステム開発と活用が重要。
 また、広告規制の見直しを受けての患者向けの情報伝達手段としてのホームページの活用、他の病院、診療所との連携のための情報ネットワークの整備等が期待される。
 
 以上、概略を紹介したが、我々が関与している病院経営と共通する課題もあるが、この間の基調は「構造改革ありき」がそのベースとなっており、命と健康を守り、発展させることが、いずれの地域でも重要なことである点が忘れ去られているように映る。
 引き続き注視と検討が必要な点は疑いがない。

(根本 守)


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