外形標準課税について
1.東京都の石原都知事が、大手都市銀行を対象に事業税の外形標準課税を導入し、評判になりました。政府、日銀の低金利政策や多額の公的資金の注入により大手金融機関が救済され、多額の事業利益を獲得していることは周知のことであり、それに対する課税強化は石原都知事の普段のタカ派的政治姿勢への賛否にかかわらず、多方面からの賛同が寄せられました。
その基本的な内容は、
- 納税義務者
「資金量」が5兆円以上の銀行業等を営む法人(いわゆる都市銀行)
- 課税標準
業務粗利益(貸倒損失等を除いた、利ざや等の銀行の本来の儲け。低金利により現在は最高水準にある)
- 税率 3%
- 課税期間 2000/4月以降開始の5事業年度
といったことです。
2.政府・自治省では、こうした東京都政策について、政府の経済政策の遂行を妨げる可能性等の問題を指摘し、「慎重な対応」をもとめつつも、「法的には問題ない」と言わざるを得ませんでした。
しかし、政府もさらにこの議論を契機に、あるいは逆手にとって、外形標準課税一般について、政府として、大手金融機関に限らず法人全般を対象とする方向で検討を進めようとしています。この中味は東京都の実施した外形標準課税とは異なり、不況にあえぐ赤字中小企業等を「ねらい打ち」するものであり、重大な問題点を含んでいます。
現在検討途上であって、実施されるか否か、また、課税標準を含めた外形標準課税の実施内容は流動的ではありますが、ここでは、その概要を紹介しておきたいと思います。
3.まず、適用税法ですが、国税である法人税ではなく、地方税である「法人事業税」がその対象として考えられています。なお、医療事業のように、社会保険収入は現状でも事業税非課税となっている法人の取扱いは現状ではわかりません。ただ、医療事業でもそれ以外の収入には課税されているので、外形標準課税の影響が全くないとは思えません。
4.次に納税義務者ですが、現在検討されているのは、個人ではなく法人を対象としています。(個人については当面考えていないようです。)
法人については、いわゆる赤字法人もその対象とします。つまり、法人税や法人事業税では現在赤字法人について税金が出ません(課税所得が算定される法人のみ納税)。現状は経済不況の長期化により法人の2/3以上が赤字で法人税等を収めていないのです。税収の落ち込みが激しく、したがって、赤字の法人についても税金を徴収する仕組みを作りたい、という論拠です。
この「根拠」は、法人についても様々な行政サービスを日常的に受けており、赤字だからといって、そうしたサービスを受けさせないわけにはいかない。したがって、その対価として一定の納税をさせるべきだ、ということです。
一見もっともな理屈に聞こえますが、実情を考えるとそうともいえないと思います。つまり、赤字の法人の多くは、中小企業です。中小企業は現実には青色吐息の経営が続き、企業倒産も増えています。そうした法人に対する実質上の増税を求めることになります。さらにいうと、中小企業は現状ではそんなに行政からのサービスを受けているかというと、そんなことはない、というように思えます。
5.次に課税標準ですが、現在のところ、政府税調で試案として出されているのが、下記の4点です。
(1)事業活動によって生み出された価値
経済用語でいう「付加価値」の考え方に近いと思いますが、具体的計算式は下記の通りです。
= 利潤 + 給与総額 + 支払利子 + 賃借料
利潤は、いままでの課税標準ですが、それに給与等を加えるということです。給与については、今までも個人の所得税として法人が源泉納付してきましたが、法人としても人件費部分に応じた税負担をさせようという考え方です。
人員の多い高人員構造の法人の負担は高くなります。
(2)給与総額
(1)の内、人件費部分だけを対象とするということです。(1)の簡略型です。
(3)物的基準と人的基準の組み合わせ
物的基準としては、事業所家屋床面積や事業用資産の価額等、人的基準としては従業員数や給与総額等があります。従来、複数の県にまたがる法人での法人事業税等の分割基準についてこうした考え方が部分採用されています。
(4)資本等の金額
資本金等に基づき課税するという考え方です。現状でも法人住民税の均等割りについて、こうした考え方が採用されています。
6.最後に税率ですが、当然課税標準の採用方法により異なってきますが、日本税理士連合会が一定の試算を行っています。
それによると、下記のような状況です(98年度税収実績を前提として、税収総額が変わらない場合の税率を算定している。
なお、現状の法人事業税の法人所得に対する税率はおおむね5〜10%)。
(1)事業活動価値の場合
税率は1.5%程度となる。中小法人の税負担が大きくなる。
(2)給与総額の場合
税率は2%程度となる。(1)と同様中小法人の負担が大きくなる。
(3)物的基準と人的基準の組み合わせ
事業用試算価額と給与総額を50%ずつのウェイトで試算すると、税率は1%弱となる。
(4)資本等の金額
税率は3%程度となる。資本金額の大きい大法人ほど負担が大きくなる。
7.外形標準課税が導入されるとすれば、おそらく(4)は採用されないと思います。そうなると、利益の大規模な大企業は優遇され、中小企業の負担が増えることは確実です。特に赤字法人での税負担は多額になるものと思われ、現状でも消費税負担に苦しむ赤字法人がさらに経営困難に陥ることは明らかと思われます。
消費税と同様、反対の声を強めるべきです。