税務相談アレコレ
我が集団は、業務の大半を「非営利・協同の会計の監査や調査、経営や会計管理等の相談」で占められているが、税務に関する事項の相談も少なくない。同時に民間企業や個人の税務に関する事項も多岐に渡って対応している。今回は近時の相談事例からその一端をご紹介しよう。相談相手が明らかとなってしまう事例では少しアレンジして記載しており、また本稿は税務のテキストではないことから全てを言い尽くしているわけでもない。いずれにしても税務の面からも、最近の世相を垣間見ることが出来る。
1.遺言書と相続
最近、遺言書に関する相談事例が多い。もちろん当方は法律を専門に扱う事務所ではないので実際に遺言書の作成を引き受けることはないが、その考え方等の相談には乗っている。多額の財産を有する方々や、相続時の争い等を回避するための相談等様々である。
相続は人の死亡によって開始するが、その相続開始により、亡くなった方(被相続人)の配偶者や子供らは法定の相続人となる。相続税の申告納税は相続開始の日より10ヶ月以内とされている。例えば海外にいて音信不十分だった相続人にとっては死亡の事実を知った日(通常知り得た日)が相続開始の日となる。大半の申告納税は期限があり、期限後では様々なペナルティが課されることから、期限の開始の日は重要である。
遺言書は被相続人の意思で相続財産の承継内容等を指定するものであるが、遺言書がない場合は、法定相続人間で協議を行い、被相続人の財産等の承継内容を決定する。この内容を記載する文書が「遺産分割協議書」であり、相続財産の相続登記や相続税の申告内容の重要な基礎となるものである。
一方、遺言書は、成年たる人はいつでも作ることが出きる。また何時でも書き直すことも可能である。私の扱った事例でも何度も修文された方もいる。通常は、公証人役場で二名の立会人の面前で、遺言書を読み上げて確認署名して作成する。費用が少々かかるものの、公的な文書であり、その発効と処理機能が強力なる文書である。
遺言書での財産等の承継では、相続人甲には遺産の1/2を、相続人乙には遺産の1/4を、と割合等で指定する場合や、相続人甲にはA土地を、相続人乙にはB預金をなどと具体的・個別的に指定することも可能である。近時ではその組み合わせによる遺言書が多く見られる。
遺言書で指定された財産等以外の財産については相続人間で遺産の分割を協議することとなることはいうまでもない。また法定相続人以外の者に相続させる遺言書もある。有する蔵書を友人へ相続させたい、等もある。
法定相続人以外の者が相続すると、相続税は法定相続人の相続の場合に比し二割増となる。
法人を相続人として指定することも可能である。株式会社であれば受贈財産は一般の法人税等がかかるが、公益法人や人格なき団体はそうではないことから、その場合は当該団体等を個人とみなして相続税を課する仕組みとなっている。
ときおり遺言書を作成した被相続人の作成時の意思能力が後で問われる事態となることもしばしばである。痴呆老人等の場合である。あまり関与したくない事案である。
遺言書は公正証書とするほか、被相続人自身で記載し署名押印して作成する場合もある。当然に被相続人自筆のものかどうか裁判所で確認する手続きを要する。筆跡鑑定を伴う「検認」手続きである。筆跡鑑定等は正確でほぼ確定されるケースが多い。
2.企業再編税制と合併
 |
左のような法人を吸収合併するとき、従前の税法では、資産・負債を帳簿価額で引き継げば土地の「含み益」に対する課税は生じない取扱だったが、がらりと変わった。いわゆる企業再編税制の設置の影響である。非営利・協同の事業体の合併でも然りであり、留意を要する。
欧米資本が提唱する企業と経済のグローバル化と市場経済促進化は、多くの諸国に法制や税制の変革運用を求めており、我が国とて例外ではなく、むしろ不良債権・不健全経営の処理の促進と相俟って、この間我が国では商法や法人税法を中心として、株式の移転・交換の法制・税制の設置の他、企業分割等の新規法制を含む企業再編法制・税制の仕組みが設置公開されている。従来の合併税制は廃止され、この企業再編税制の中に組み込まれることとなった。
従来の合併税制では、合併比率が均衡で、合併存続法人側の資産負債承継で何らの評価替えをせず合併消滅法人での帳簿価額のまま受入処理していれば、合併消滅法人での清算所得課税も、合併存続法人での合併差益課税も発生ずることはなかったが、この4月より適用されている新税制では、合併における資産・負債の移転については当該時点の価額(いわゆる時価)によるものであることが明確に規定された。
即ち合併における資産の価額は時価によることが原則とされたのである。これは企業分割を含む企業再編税制の一貫した想定となっている。
従って従来の合併清算所得の算定申告はなくなり、合併年度の期首から合併期日の前日までの期間を通常の合併解散年度として扱いつつ、当該年度で時価と帳簿価額の差損益を計上して申告納税することが明確化されたのである。この故に税制が「がらりと変わった」と言っているのである。
しかし、一定の要件に合致する、即ち企業再編を促進する方向にマッチしている分割・合併等では、当該「含み益」等を計上せず帳簿価額のまま承継し税務上も容認する道を設けている。いわゆる適格分割であり、適格合併である。
耳慣れない言葉であるが、一定要件に合致する再編を「適格」と称して、時価評価課税を見送ることとしているのに対して、当該要件に合致していない分割・合併等は「非適格合併等」としてそのメリットは与えず時価評価課税を原則として実施することを定めたものである。
では「適格合併」とは何かというと、一つは企業グループ内の再編たる100%親子会社の合併である。これらは実態として従来通りの課税態様即ち時価評価課税を免れる道が用意されている。
同時に企業規模の接近した企業同士の合併即ち企業再編というよりも業界再編に近いものとしての合併にも同様に時価評価課税を回避する道が用意された。当該企業規模接近とは、企業規模の差が、人員数、収益規模等で5対1程度の範囲内であることが法定されている。大規模企業と小規模企業の合併では不適格合併と認定され、消滅法人側での資産の時価評価課税が実施されることとなりうるのである。大生協と小生協の合併などがこれに当たる可能性がある。要注意。
3,法人格なき団体と消費税
悪法と指弾されている消費税は、現実には施行後10年超を経てもなお、その算定のための実務処理や実務量が相当程度を要することから、我々税務専門家においても、いまだ「悪法」という声をよく聞くところである。
会社や事業を営んでいる公益法人等では、消費税の算定納付を既にはじめてから久しく、また申告納税をしていない法人でも、該当するときの準備をしている法人も少なくない。しかし「法人格なき団体」は、必ずしも十分な検討準備をしているとは言い難いと認識している。
御存知のとおり、法人格なき団体とは、おおむね社団たる組織であり、PTA、福祉団体、障害者団体、業界団体等々である。中には新設医療法人のように法人格を取ることが容易ではなく、取りあえず法人格なき団体でスタートするような場合も存する。
これらの団体はよって立つ法人規制法律がない訳で、法律の埒外にある。したがって法人格がない団体と称するのである。預金をするにも、事務所を借りるのも、対外的法律行為は全て代表者等の個人名義とならざるを得ず、大変に面倒である。
もっとも、近時はNPO法人や中間法人等の法制が整備され、その面の心配は解消しつつあると見えるが、私どもでは法人格が取れれば良しと単純に理解しているわけではない。
とりわけ以下の消費税では、時々とんでもない事態に陥る団体も少なくない。また当該課題は労働組合等にも通ずる論点でもある。
(1)消費税の納税義務者と免税ライン
消費税は原則として納税者間で転嫁しつつ、最終ユーザーへ販売またはサービス提供する時点で完結する納税連鎖の仕組みを想定している。したがって他の税目と異なり、法人形態での納税義務の差は原則として存在していない。
事業を営む個人、会社、労働組合法人、社団・財団法人、医療法人・協同組合、自治体等全ての事業者たる個人・法人が原則として納税義務者となる。
法人格なき団体も事業を営んでいれば然りと言える。しかし何でもかんでも申告納税というわけではなく、小規模事業者は申告納税を免除されている。いわゆる「免税業者」である。
年間の消費税課税対象売上高が3千万円未満であれば、消費税の申告納税は不要である。現行消費税法の定めであり、一方では益税ではないかと指摘も受ける部分である。
ある年に3千万円超となると、その年の2年後は、消費税の申告納税をしなければならない。
消費税の課税売上高とは、通常、物品販売、出版、事務請負、代理、貸付等々一般の商売と同様の事業の収益を言う。労働組合の手数料収益とか機関紙販売収益なども該当するし、会館テナント料なども該当することとなる。
(2)原則課税の場合
消費税は、収益に係る消費税からコストに含まれた消費税を算定控除して納税することを原則としている。いわゆる原則課税法人である。
左は、法人格なき団体の典型的な消費税算定収支表である。概ね収支計算書に近い。
不課税売上のウェイトが高いのが特徴。
会社の場合には、不課税の収益が課題になることはない。この場合は「寄付金収益」などであるが、それほど多くはないからである。会社の消費税の算定では非課税売上高(利息収益とか保険収益とか土地の譲渡収益とか社会保険・介護保険診療収益などである。)と課税売上高とで、課税仕入高を按分算定して消費税を算定することはあっても、不課税売上高が算定基礎に入ることはない。
これに対して法人格なき団体や公益法人、自治体では、不課税収益が課題となってしまう仕組みとなっている。この場合の不課税売上高とは、入会金収益、会費収益、組合費収益、カンパ収益等々である。これらの収益を仕入や経費に含まれる消費税に活用している筈だという前提で消費税の課税仕入高の算定をすることとなっている。極めて複雑な計算を要するのである。
原則課税法人では、消費税の調査の際に全ての収支が対象となり得て、その煩雑な点でも悪法という人もいる。
課税売上高が年間2億円超となると原則課税法人となるが、2億円未満の法人では次の簡易課税制度選択が可能となる。
(3)簡易課税制度
簡易課税制度は、上記の原則課税法人とは違って課税売上高のみ算定すれば簡便的に納税計算しうる制度である。比較的小規模な事業者の事務軽減として設定されている。
課税売上高に含まれる消費税から控除する「経費等に含まれる消費税」を実額で集計算定せずに、業種毎の概算率で算定するものである。
卸し(90%)、小売り(80%)、製造(70%)、不動産(60%)、その他(50%)とされている。
したがって、その他業種で5千万円の課税売上高の団体では、消費税の納税額は次の通りと算定される。
5千万円(税抜き)×0.05×0.5=125万円
一般に原則課税方式では、この税額の倍以上になりうることが予測される。更にその手間暇を考えれば、消費税は極めて高くつく税目と言うことも可能である。
簡易課税は選択制度であり、課税売上高2億円未満の年度の2年後において選択可能であるが、あらかじめ所轄税務署に届出書を提出することを必要としている。適用する年度の前事業年度末までが期限である。忘れれば原則課税法人となる。
なお、以上の点は公益法人全般に共通な点、法人税の収益事業課税は別途の課題である点、決して疎かには出来ない課題である。
努々、ご油断なきように!
4.サラリーマンの臨時収入
サラリーマンとは奇妙な呼称であるが、勤務人であり、月給等を頂いて労働力の再生産を営々と継続している人々である。
現在は、勤務先の会社等において、年末最後の給料・賞与の際に1年間の所得税を精算する年末調整の手続きを経て、当該勤務者の所得税は完結し、翌3月の確定申告を行う必要はない。
もっとも、現在計画されている議論では、年末調整を廃止する方向性が打ち出されている。大手企業側の年末調整事務コストの軽減化要請と、流動化しつつある労働勤務実態への国税徴収対応のより強化要請と、現在は一部の給与データ等の収集に留まっているサラリーマンの税金データを全て収集するためにも、年末調整の廃止が至上命題化している。したがって月々の源泉徴収税額はより多めに徴収し、精算は自主的にせよ、という仕組みとなることが明白である。少なくして追加で納税では誰も申告したがらないこととなるからである。またコンビニなどから電子申告する仕組みを構築運営することにより全サラリーマンの税データを瞬時に手間かけずに収集する仕組みも並行して検討されている。いよいよ、SF並の税金データ社会が登場することとなる。
この点でも以下に述べるような事例をよく知っていると何かと好都合となることは疑いがない。
(1)共済会からの給付
企業にしろ団体にしろ、労働組合や職員共済会等を組織しており、加入者たるサラリーマンが各種の給付を受ける場合がある。
まず当該共済会の掛け金等であるが、民間の生保会社や損保会社または全労災等などの認可法人への掛け金は、年末調整の際の生命保険料控除や損害保険料控除の対象となるが、通常の職場共済会等では当該控除の対象とはならないことに留意を要する。もっとも、民間生保等に繋いでいる場合もあり、一概には言えないものの概ね無認可共済事業である。
このような自主的・相互扶助的非営利・協同の共済事業から受ける給付金は原則として非課税である。冠婚葬祭での給付や見舞金等は通常多額とはならず社会通念上課税するには至らない程度であるからに他ならない。
しかし時折、多額の生命共済給付等が支給される共済会もある。この場合、しばしば混乱するのは、みなし相続財産として相続税の対象で相続人一人当たり5百万円まで非課税という定めの適用があると錯覚する事例がある。
確かに遺族の受け取る民間生保の生命保険金等はそのような取扱が相続税法で定められているが、基本的には認可されている契約や共済事業法人での給付が対象であり、無認可の共済会の給付は相続税の対象外となる。
見舞金程度の額を超える無認可生命共済給付は、遺族においての「一時所得」として所得税の確定申告を要するものと言える。
また生命共済については「受け取った者」の所得であり、遺族においてそれぞれ受け取る者と受取金額を決めても良い。一時所得は、50万円の控除を差し引いて、その1/2の金額を他の所得と合算して算定納税することとなるので、受け取る者が多いほど、つまりは分散するほど節税となりうる。
100万円以上の単位の生命共済給付等は要注意であろう。
(2)年金の受取
サラリーマンでも既に年金を受け取っている高齢者もいる。どちらで生計を維持しているかどうかは別として、公的年金は所得税法上は雑所得としての扱いであり、定められた公的年金控除を算定差し引いて所得金額とする。
通常、年金のみの生活者であれば年金にかかる源泉徴収税額で事足りるため、医療費控除等の申告がなければ確定申告をする必要はない。しかし別途サラリーの入金があれば、その税金と年金の方の算定結果とを合算して所得税を総合計算確定する必要があり、3月の確定申告での手続きを必要とする。
確定申告時には、介護保険・健康保険等の社会保険料の控除、生命保険料・損害保険料控除、医療費の控除等も忘れないようにしたいものである。
(3)原稿料収入
サラリーマンが原稿料などを交付された場合、翌年3月の確定申告が必要であろうか。
決まったサラリー以外の原稿料収入があった場合は、金額によって確定申告での精算が必要かどうかが決められている。
原稿料の収入から、その原稿作成等にかかった文具代や書籍費、調査費や交際接待費・取材費等の必要経費を控除して、当該「雑所得」の金額が20万円以上となれば、給与所得と合算して所得税の精算をすべきこととなり、確定申告が必要となる。
通常、原稿料は収入の10%の源泉所得税を差し引かれていることから、よっぽど多額の原稿料を除いて、概ね所得税の還付となる場合も多いが、後から住民税の増額となって跳ね返ってくる。
毎年のように原稿料があるサラリーマンは青色申告の制度の採用を薦めたい。青色申告は一定の帳簿記録を要求されるが原稿料程度の収入と経費の記録は困難ではなく、青色申告控除の特典も利用でき節税に貢献しうるものと思う。
確定申告が必要なのに「していない場合」、後から見つかるケースもしばしばである。その場合は追加本税の10%のペナルティが取られ得るし、いろいろ面倒ともなる。近時では税務署からは連絡がないのに市役所などから原稿料の収入が洩れている、との指摘を受けることもある。税務署と自治体の税務情報交流も馬鹿には出来ないのである。
なお、原稿書きが反復継続し、「業」の程度となれば、所得税法上は「雑所得」ではなく「事業所得」となる。必要経費の概念は変わらない。
(4)ギャンブル収入
公営の競馬などのギャンブル収入も所得税の申告が必要なのである。もちろん勝ったものだけの申告が必要ということではなく、負けた時の掛け金は必要経費というよりも所得計算上通算されうる。
しかし負けたときの馬券を取っておいたり記録を付けたりする例は少ないかもしれないし、大体、申告したという話は聞いたことがない。
また、通算で負けていても、他の所得と相殺することは出来ない。良く考えられている仕組みと言える。
麻雀等違法な賭博による収入でも所得税法上は事業所得、一時所得、雑所得等として申告が必要である。
何事も記録は宝で、胸に刻んでおくべし。