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2002年9月1日

退職給与引当金廃止(法人税法「2003/03期」より)

 本年(2002年)の通常国会・税制改正では、法人税法の算定の上で重要な改正、いや改悪があった。

 周知の通り、「退職給与引当金の廃止」である。これは約8千億円の増税財源措置の一環であるが、何のための増税かと言えば、大企業などの「連結納税制度」すなわち企業グループで税金を通算算定し得る制度の創設により、赤字企業を沢山抱えている大企業に有利、つまりは大幅減税となってしまい、その穴埋めの有力な増税財源として「退職給与引当金廃止」となったものである。

 大企業優遇を労働集約型の中小企業等に増税押しつける「小泉流痛みの政治」の象徴とも言えるだろう。我が集団のクライアントは全日本民医連の病院経営を始め中小企業が多く、将来の職員退職金支給のための準備費用が一切税金計算上費用として処理できないこととなったことは大きな痛みである。

 今回は当該改悪税法の意義等について簡単に説明することとした。

1.改悪税法の意義

 2002(平14)年7月に、法人税等の一部を改正する法律が公布され、当該退職金税制改悪は本法(法人税法54条)が削除され、新規の附則に取り崩し規定などが盛り込まれている。

(1)適用年度

 退職給与引当金の繰入廃止は、2003年3月31日以後に終了する事業年度からとされた。従って、一般の3月決算法人は、この進行中の年度からの適用となり、新規の積立(繰入)は一切有税となってしまった。今後の税金負担が相当に変わりうる。法人税だけにとどまらず、法人税を基礎として算定する法人住民税や事業税にも影響を及ぼすことは言うまでもない。

 03/03/31に終了する事業年度をこの取扱では、「改正事業年度」と呼んでいる。

 以下、退職給与引当金廃止に関連して改悪制度の概要を述べることとするが、細かな取扱いなどについては、不明の部分があり、経理担当者におかれては、今後の通達、あるいは解説本などに留意されて、年度末決算処理のイメージを把握しておくことが大切である。

(2)繰入額の全額所得加算

 法人税法第54条が削除され、法人税法から退職給与引当金の損金算入制度が消滅した。

 簡単に言えば、退職給与引当金を積み増し計上しても、当該繰入金額全額が「損金不算入」となり、税金計算上、課税所得金額に加算されるということである。法人税申告書別表4において当期繰入金額の全額加算となる。

 なお、退職給与規程の意義・範囲や、退職金支出の場合の取崩規定などを定めている旧法人税法施行令第105条から第110条まで規定は引き続き効力を有することから、退職者の退職に伴って前事業年度末の退職者の期末要支給金額の取崩処理などは従来通り実行しなければならない。(法人税法施行令等の一部を改正する政令、附則第5条、[政令第271号、平成14年8月1日])

(3)02/03期の期首無税残高の取崩

 新たな積立は全額損金不算入となったほか、既に積み立ててある金額(期首無税退職給与引当金金額)については、以下の通り全額を一定期間内に取り崩して益金算入することが定められた。(法人税法改正附則第8条)

 法人区分別の取崩年数

(1)大法人(資本の金額又は出資金額が1億円を超える普通法人又は保健業法に定める相互会社等)

 取崩年数改正事業年度より4年間

(2)中小法人および協同組合など(上記以外の法人)

 取崩年数改正事業年度より10年間

 すなわち、改正事業年度の期首(3月決算法人では02/04/01現在)の退職給与引当金税法残高について、中小企業や協同組合等は10年間で取り崩し(益金算入)せよ、という改悪内容である。

 医療法人、公益法人、人格なき団体等はもとより資本金1億円以下の株式会社などは、みな10年間で有税化することを意味している。

 税法限度額以上に退職給与引当金を積んできていた経営では、02/03月末現在では、退職金期末要支給金額の27/100が無税残高として当期(02/04/01)に繰り越されているのが一般的であるが、この金額を「2.7%」ずつ取り崩させ(益金算入)、2012/03期には税法無税残高はゼロとなる、という規定である。

2.算定イメージ

(1)事例条件

項目  
金額
02/03期末要支給額
1,000
同決算退職給与引当金残高
500
同上のうち税法限度超過額
230
02/04税法退職給与引当金残高
270
02年度退職者の期首要支給金額
10
02年度退職給与引当金繰入
60
03/03期末要支給額
1,100
会計方針 50%積立基準  

 上記の設例は自己積立法人で、01年度末は50%の積立を実施しており、旧法人税法規定での繰入残高限度額27%相当金額を超える金額が有税と算定されている。

(2)02年度概算計算

退職給与引当金勘定項目 会計計算 税法計算
02/04/01期首残高
当期退職者取り崩し
新法での必要取崩金額
当期積立
03/03/31期末残高
500
-10
-17
77
550
270
-10
-17
0
243

 まず、右側の税務計算欄は、新法通達に従って、10年間の取り崩し規定を適用し、退職者取り崩し金額との差額を算定し(事例では17)取り崩しを行った。

 このような算定をするのかどうか、新通達などが明解ではないため確認し得ていないが、幾つかの情報を総合するとこのように推定される。

 仮に退職者の退職取り崩し金額が、必要な、1/10の取り崩し金額より多い場合には、法人税所得計算上減算処理するという情報も得ているがはっきりしていない。

 旧施行令が有効とされている以上、退職者の取り崩しが必要であり、その取り崩し金額に加えて1/10の金額を追加取り崩しせよ、というようには今のところ読みとれない。

 このような税法算定を繰り返していけば、中小企業協同組合では10年後に退職給与引当金の税法残高はゼロとなる。

 一方、会計計算では、退職取り崩しと、新法の1/10取り崩し金額までの差額取り崩し分について、益金算入という規定から取り崩し処理が要求されることとなるので、当該金額を取り崩している。また事例の経営では、50%積立方針なので当該差額を含めて期末要支給額の50%相当金額となるよう追加積立をした。

 この結果、会計残高550は、03/03期末要支給金額1,100の50%に達することとなる。

 当期の法人税申告書別表では、77の金額を加算計上することとなる。おそらく年初に予定した税金負担予算の算定が狂うこととなろう。

 いずれにしても、上記の設例は現時点の推定であり、最終的には新通達などで処理方法の確認を要する。各経営の担当者は充分に留意されたい。

(田中 淳)


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