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会計&法律

補助金会計と、会計参与制度
2004/07

1.「設備投資の補助金の会計処理」


 一般の法人では設備投資にかかる国庫補助金が交付される事例はほとんど無いが、医療機関や福祉団体等ではしばしばお目にかかる。
 例えば、5億円の設備投資事業に対して2億円の国庫補助金が交付されたりする。一方では、この間の公的負担抑制の施策から当該国庫補助金等も減額や総額規制の過程にあり、当てにしていた補助金の交付を受けられずに計画が頓挫してしまう事例も観られる。

 他方、様々な分野とりわけ非営利の事業分野における会計変貌はこの国庫補助金等についても大きな変化をもたらしつつある。
 今回はこの設備投資にかかる国庫補助金の会計処理を巡る論点を整理してみた。

(1) 一般の医療法人等での会計処理

 5億円の設備投資、例えば建物建設資金に対して2億円の国庫補助金の交付を受けた場合を想定してみよう。
 原則的な会計処理は、建物支出は「建物」勘定に計上処理し、収入した国庫補助金は臨時的な収益であるから「特別利益」として計上処理することとなる。しかし、一般の医療法人では、法人税等が課税されており、そのままの処理ではせっかくの国庫補助金2億円が課税され半分程度に減ってしまう。
 国から交付された金額について国に納税するという、おかしな事態となってしまうことから、法人税では課税の繰延措置を設けている。補助金で取得した「建物」勘定の「圧縮記帳」処理である。
 分かりやすく言えば、特別利益はそのままとして、建物のうち補助金部分を減額(圧縮)する会計処理によって圧縮損失を計上することを認めている。これは納税者の任意の選択であるから自動的に課税猶予となるわけではない。納税者が国庫補助金にかかる設備投資の圧縮処理の明細等を申告書に記載添付することが要件である。
 法人税法が認めている圧縮記帳処理は3つあり、一番目は5億円の「建物」勘定より2億円減額(特別損失)してしまう方法であるが、これは建物の投資額や以後の減価償却費を実態とはかけ離れたものとして表現する方法であり、会計理論からは支持されない。
 二番目の方法は、取得時に2億円だけ引当金(圧縮引当金)を計上する方法(特別損失)である。しかしこれも会計理論上からは当該引当金の計上根拠が支持されず、選択されることは希である。
 三番目の方法が会計理論からは支持される方法で、法人の総会等で確認される剰余金処分計算書で「圧縮準備金」繰入2億円とする方法である。この場合は法人税法上、申告書別表で当該繰入額だけ減算(課税所得を減額)する手続きを採ることとなる。以後は、繰り入れた圧縮準備金は一定年数で取り崩して課税所得金額に年々加算をしていくこととなる。課税の繰延といわれるものである。

(2) 学校法人会計基準

 私立学校では学校法人会計基準の適用を受けることとなるが、設備投資にかかる国庫補助金は、消費収支計算書(企業会計でいう損益計算書)において、補助金収入を立てるほか、同額で基本金に組入をしてしまう処理とされている。その点だけ観れば、建物5億円と基本金が2億円増加するという結果になる。減価償却費の計算は5億円を前提として実施するので何となくダブった投下資本回収計算のようにも映る。

(3) 社会福祉法人会計基準

 社福の会計基準は、この間新規改定され、適用実施過程にある。従来は学校法人会計基準に近い処理であったものの、新基準では、事業活動収支計算書(企業会計でいう損益計算書)において国庫補助金収入を計上すると共に、同額で「国庫補助金等積立金」に積み立ててしまうこととされている。
 従来は基本金に組み入れて減価償却も実施しない取組であったが、市場経済化と自己責任論の施策から、5億円を前提として減価償却費をを計上する取組が強制され、同時に当該国庫補助金等に相当する減価償却費部分の金額を「国庫補助金等積立金取崩益」として収益化を図る会計処理を要求している。

(4) 国立大学法人会計基準

 国立大学は独法化したものの、経常的運営費も施設整備費も国からの交付金で賄うこととされている。設備投資のすべてが国庫補助金だといっても過言ではない。
 もっとも独自の自己資金で設備投資をすることは問題ないし、この4月からの新年度から減価償却費の計上も始まっている。今まで減価償却などとは無縁であった国立大学の役職員らは、いかなる理解や共通認識を形成していくのか興味が尽きない。
 この新たな会計基準では、設備投資にかかる国からの施設整備交付金を負債に計上することとし、減価償却資産を取得したときは資本剰余金に振り替えるものとされている。そして自己資金で賄った資産の償却費は活動収支計算書に計上するが、交付金で取得した資産の償却費は直接資本剰余金を減額処理するという煩雑な会計処理を指示している。
 交付金を負債計上するという取組は、我が国の会計処理ではまったく新たなものであり、注目をしていたところであるが、次の新基準に反映されることとなった。

(5) 病院会計準則改定案

 現在検討中の病院会計準則改定案では、設置主体の如何を問わずこの基準で処理する旨を強く促しているが、設備投資にかかる国庫補助金については収益にいきなり立てずに負債計上し、相当する減価償却費のみ収益化を図る会計処理とする提起である。一般の医療法人では税法の支持なければ選択不能であり、税制度の改訂方向と共に注目される。私見では、設備投資にかかる国庫補助金は制限なく非課税とし、資本剰余金に計上する処理が適切と考える。
(坂根 利幸)


2.会計参与制度


 21世紀初頭の商法大改正の議論が大詰めとなっている。前回の本コーナーで、この間の改訂事項の議論を掲載したが、今回は「会計参与」制度の制定議論を紹介する。

(1) 小規模会社の監査役監査

 資本金1億円超もしくは負債総額200億円以上の株式会社についてはそれなりの監査制度が設置されているが、そうではない中小企業の監査役監査は会計監査に限定されており、かつ、その監査実態は役員らが作成した決算報告書類(計算書類)に適当に印鑑を押すのみの実態が通例であると言われている。きちんと監査をしている監査役には申し訳ないが、実態は実態である。

 これに対して政府の審議会では、円滑な経済運営の展開、適正な情報に基づく投融資などによる適正な資金循環の促進などを期するべく、中小会社の計算書類の適法性・適正性を如何に担保するかという課題が、平成17年度に向けた商法改正予定事項の重要な審議項目の一つとなっている。
 しかし、報酬等の負担をし難い中小企業に会計士監査を義務づけるのは酷であること、他方で監査役の監査レベルを急速に向上させる方途もないこと等の理由から、全く新たな制度として「会計参与」という制度の新規設定の議論が最終版となっている。(法制審議会・会社法「現代化関係」部会)

(2) 「会計参与」制度の概要

 監査役の代わりに会計参与という職制を会社に新たに設置し、就任資格は会計士や税理士らの専門家とし、計算書類の作成業務を担当させるということである。株主総会で選任され、任期・報酬等については取締役等と同等の規律が適用され、選任設置は任意であるが、取締役会を設置する中小会社では会計参与を置くことで監査役の設置は不要と出来うるという議論提案である。株主総会での説明責任、計算書類の5年間保存義務など課せられることとなる。

(3) 評価と私見

 もともと中小会社にも会計監査制度を導入しようという会計士業界に対抗する意義で、税理士会らが提起した対案制度であるが、両業界を含めて概ね賛意が出ていることから、この新規の制度の設置が確実な状況にある。平成17年度通常国会に法案提起をするものとして準備が進められているが、私見では反対である。
 第一に、正規の監査ほどの経済的負担はないものの、やはり専門家らへの経済的負担が増大すること、第二に、この理由の方が重要であるが、そうでなくても決算や計算書類の理解の向上を図らない経営執行部らの実態がより固定化してしまい、株主やら労働組合やら従業員らに対するアカウンタビリティ(説明責任)の機能が半永久的に向上しなくなりうること、これらが賛成しがたい理由である。

 いずれにしても、「現代化」という名の下で、会社の決算書についても、何か形式的な正確性を追求することが重要であるような取組に映る。本来は、会社の経営実態を適正に分かりやすく説明しうる役員らを如何に配置形成していくかが重要であると考えているが、それでは市場経済化の促進スピードから「遅い」ということであろうか。
2004/07(坂根 利幸)


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