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会計&法律

労働組合の会計論点
――適正な会計実践を!
2005/02




 長年に渡り、会計のアドバイザーとして生きてきたが、その中でも我が協働では労働組合に関する業務も少なくない。組合自身の会計監査、労組の不正経理事件や不明会計事案、労組に対する税務調査の立会や会社の経営内容の分析や相談等々、多岐にわたっている。いずれ1冊にまとめたいと考えているが、さわりの論点をしよう。


1.資金収支会計から発生主義会計へ

 比較的規模の大きな労働組合を除くと、労働組合の会計は概ね「資金収支会計」である。すなわち、組合費を中心として入金した資金収入と、各種の活動費や書記局費で支出した資金支出を対比して「収支差額」を算定し、前期繰越金を加算して「次期繰越金」を算定する仕組みである。

 この場合の繰越金は資金残高すなわち、現金預金の年度末残高の合計と一致することとなる。したがって資金収支会計を実践している労働組合では、「貸借対照表」を作成することはなく、簡単な「財産目録」を作成公開するに過ぎないのである。
 しかしこれでは、組合の適正な予算管理もできないし、支出を遅らせることによる不適正な収支差額を算定させてしまう恐れもあり、組合費の未収金や活動費の未払金などが適正に計上されないこととなってしまう。時には不正経理を見過ごしてしまう場合も起こりうる。

 人員削減や賃金ダウン等で、労組自身の財政状態がより厳しくなる今日で、不十分な会計管理は、活動の継続発展を保証する財政運営を実現し難い展開をもたらしてしまう。また所属する経営に対しての「経営分析」能力も向上しない取組に終始してしまいかねない。

 労働組合でも、発生した収益と発生した費用を対比して収支差額(剰余金)を算定する「発生主義会計」の採用が是非とも必要である。収益に計上して入金されていなければ「未収金」として残存して繰り越され、計上した費用を支払っていなければ「未払金」として残存し繰り越されていく、あとは「資金(繰り)の課題」というのが、発生主義会計の基本である。
 永年勤めた役員に退職金を支払ったら、大幅赤字となってしまうような事態を招かないためにも、発生主義会計での労組会計管理を実践されたい。
 労組の中にも、発生主義会計による剰余金(収支)計算書を作成する一方で、資金収支計算書も作成公開している労組も存在するくらいである。

2.決算承認会議

 労働組合の決算承認は、多くの労組規約で大会承認とされている。当然に1年前に承認された予算との対比で決算報告すべきことは言うまでもない。

 最近、労組の財政事情などから、大会の開催時期を年度の後半、すなわち秋期または春闘闘争方針確認時期と併せて、下半期に大会を開催する労組が増加している。その取組自身は組合内部の組織的課題であるから、どの時期に大会を開催しようとも、論評を差し挟む余地はない。

 一方、 近時は労働組合に対しても税務当局の攻勢が著しいが、法人税の収益事業の申告納税をする労組も少しずつ増加の傾向にある。その場合、法人税の申告は「確定した決算」に基づくものとされており、「決算確定」とは株主総会や総代会や大会の機関会議で承認されることを意味している。
 承認された決算等に基づいて作成された法人税申告書が正規の申告書として扱われる。そうでない申告書は無効とされ、たとえ申告納税していても「無申告」状態として処理されてしまう可能性があり、その場合は直ちに本税の1割の「無申告加算税」の追徴とされてしまうかもしれない。

 労働組合の規約または大会決議で、決算日後2ヶ月または3ヶ月内に中央委員会等で決算を承認するという権限委譲ルールを策定し運用することが必要不可欠と言える。
 参考までに法人税の申告書の提出期限は決算日後2ヶ月以内であるが、規約等で3ヶ月後までに開催される機関会議で承認という内容であれば、届出の上、申告期限は決算日後3ヶ月以内と、1月延長が認められている。

3.収益事業の区分経理

 法人税法では、労働組合が「収益事業」を営んでいる場合は、「区分経理」をした上で法人税の申告をすべきものと定めている。いわゆる区分経理の原則であるが、収益事業に属する収支と財産を、他の事業(通常は組合本来の活動の収支等)と区分して経理を行うべし、という意義である。
 この区分経理の原則は、収益事業ではない事業でも本来は必要な考え方である。例えば、50周年事業とか、組合員向け機関紙発行事業会計とか、助け合いの共済事業会計など、収益事業とは直ちに認定されないものでも、労働組合の規模や予算管理、資金区分管理等の状況によっては、労組本体の活動とは別に収支や財産を区分経理する実践も必要であり、各種の特別会計ないしは事業会計を設置運用している例も少なくない。

 一方で、法人税の収益事業課税は規模で差別をしておらず、申告については赤字でも申告書の提出を要求している。
 仮に、一定の収益事業対象収益が存在するとして、それに対応する費用(コスト)をいちいち区分するような取組は労組会計にはない。もとより、労組は「利益追求」の存在ではなく、「非営利」の事業体であるからに他ならない。
 営利市場の側の企業であれば、事業別とか商品別の損益計算をきっちり実行していなければ、生き馬の眼を抜く今日で経営破綻に追い込まれてしまう。

 労組会計では、規模の大きな収益事業対象収益については「事業特別会計」などとして区分した上で、対応する「直接的費用」も区分して経理計上する取組が望まれる。
 しかし、役員の人件費や書記局の費用、通信費や会議費などで、当該事業収益に対応する費用を綿密に区分経理することは、日常的に困難であり、合理的でもない。
 これらの「間接的、共通的費用」は、決算後において合理的な基準(収益額、直接人件費総額、事務スペース面積など)で按分負担計算を施し、当該収益事業対象収益に負荷することが要請される。そうすれば、課税される所得金額が多額に+(プラス)で算定されるようなこととはならないものと考えられる。非営利という存在であるからである。

 決算書の上で表現していないものであっても、合理的な配分・按分表などを基礎として割り振った費用を計上して、収益事業の収支計算書を作成し、その収支差額(おおむね赤字であろうが)から課税所得金額計算を行う、この考え方と取組が重要である。帳簿や決算書で区分していなければ認めないというわけではない。

4.労働組合本体への課税

 かつて「消費税」法が施行されたときに、会費収益や労働組合費は消費税の課税対象となるのかどうかが論点とされた。
 消費税の課税対象は、「対価を得て行う資産の譲渡・役務の提供」であるが、会費や労働組合費は、その支払対価をもってサービスの提供を受けるものであり、本来は「消費」という枠組みに入るべきものと整理されたが、影響が大きいことから、支払う側も受け取る側も消費税課税対象から除外し、その旨を団体などの決算書で明示することにより、消費税が課税されないこと(課税対象外取引)とされたのである。会費や組合費は消費税法上、「非課税」ではなく、とりあえず「課税対象外」とすることが出来る、という取扱と言える。

 政府与党の弱い者いじめの施策は、依然として強力に進展しつつあり、2005年度以降も、引き続き増税の嵐が吹き荒れるものと推定される。
 消費税については、次は税率アップであり、消費税率10%は間違いなし、ともっぱらの噂と化している。その税率アップの際は、1千万円未満の免税制度や、益税といわれる簡易課税制度も廃止となることは必定であり、同時に、この間は課税から除外されていた会費や組合費も課税対象対象として浮上してくることが十分に予想される。
 消費税については、自治体の一定事業も課税されているように、組織形態の如何を問わずに、一定の取引に課税が行われる仕組みであり、政策的な非課税等をあまり設けるとその税制の意義が薄れてしまう、という意義である。
 悪税である消費税の廃止が出来ない場合には、これに対抗して、医療、福祉、食品、団体会費等の分野で、庶民や非営利組織は、ゼロ税率若しくは軽減税率の設置を要求する闘い方も必要ではないだろうか。

 さらに恐ろしいことは、この間の「公益法人制度」改定と「原則課税」議論が継続進行していることである。
 すなわち、民法34条の公益法人の規定を削除し、あらたに「非営利法人法」を制定し、非営利法人法制の一元化の土台を創ろうとするとの取組であるが、この議論の底流に位置している税制の議論では、「収益事業を営む場合に課税すると」いう現行法人税法をやめて、「原則課税」として、別途非課税の場合を措置するという議論である。
 しかも、その原則課税という議論では、「対価を伴う事業は原則課税」という代物であり、先の消費税の課税対象議論とまさに重なる理解となっている。
 すなわち団体等でも、対価性のある事業については消費税も法人税も課税するという目論見として映るのである。考え過ぎと言われるかもしれないが、そうであれば胸をなで下ろしたいところである。しかし、公益法人を原則課税として扱うことで、他の非営利法人や法人格なき団体はそのまま現行通りと措置しては、だれも新非営利法人に移行などしない。
 収益事業課税制度ではなく、一部非営利事業のみ非課税という新たな税務論点と税制度が突きつけられてくるのも「もう直ぐ」であると観ている。注視と検討が必要であろう。そして、この間の不明・混迷・不正な政治を転換しない限り、非営利組織等にとって、ゆっくり眠れる日が来ることもない。
2005/02(坂根 利幸)

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