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行政コスト計算
2006/03
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行財政改革とか三位一体の改革などと叫ばれているが、国や自治体の行政サービスにかかるコスト計算が正確に実施されているのであろうか。そのような感覚で国・自治体の財政報告書等を眺めたことはない。そのような明解な資料もない。
しかし、概ね2004年度に発足した独立行政法人や国立大学法人では、行政コストの計算の実施と、その情報公開が実施されている。
会計の専門家としては興味があるものの、時間はない。たまたま関わった独立行政法人等の2004年度財務諸表を眺めつつ、まだ観たことのない読者に些かの論点を送る。なお、独立行政法人等の財務諸表はインターネットで検索し閲覧入手が可能である。この情報公開作業にも膨大なコストを要している、と想像するに難くない。
1.独法会計基準
各種の研究機関や各省庁の附属的機関、国立病院や国立大学などが国から分離独立し、それぞれが独立法人化しているが、独立行政法人会計基準は法律で規定され、その会計基準の基本は「企業会計原則」によるとされている。
従前の、予算対比の消費会計的、資金収支計算的な仕組みから、発生主義に基づく会計へ変貌し、未収金、未払金の計上や減価償却計算の実施、退職給付や一時金費用の引当金計上処理など、企業ではあたり前の取組が、独立行政法人では目を白黒させながら取り組まれつつある。
しかし、そもそも自己収入を中心とした独立採算であれば、企業会計原則も馴染むものと言えるが、依然として国からの交付金等を前提とした事業経営であり、現状での独法会計基準と経営状態表現は、まだまだ発展途上と観ている。
2.膨大な不動産と国家出資金
独立行政法人では、独立初年度の期首貸借対照表を確定するために、相当前から不動産の時価評価を始め、国より承継する減価償却資産の償却累計額を算定確定し、国の所有か独法の所有か財産・債務の区分け整理を実施している。中には時間切れでスタートしてしまい、初年度で多額の修正損益を計上している独法もある。
簿記を理解される方ならお判りになるだろうが、スタート時の資産と負債との差額すなわち「純資産金額」は、原則として「国家の出資金」として計上された。
他の出資者は存在しないことから、独立行政法人は国家の子会社と言えるだろう。この出資金には当面配当はないが、将来、収支が償われて採算が取れるようになれば、当該出資持ち分は第三者に譲渡したりされることとなると思われる。その場合は、もはや公的負担など必要としない経営状態を意味している。
一方で、膨大な不動産金額と財投資金借入金などを引き継いだ独立行政法人では、莫大な債務弁済と支払金利負担、そして減価償却費の算定が待ち受けていた。国立病院等では各病院毎のバランスで最初から債務超過と算定されている事業所もあるくらいだ。債務超過の事業所が幾ら奮闘しても利益を獲得するには至らないものと思われる。そもそも、そのような負の遺産については、国家が負うべきである。何となれば、そのような事業所や施設の建設や配置は国家としての政策上の産物に他ならないからである。もっとも今更返還など出来ないと思うが、せめて債務弁済や金利負担の軽減を求めるべきであろう。ともあれこんな状態により、独法の事業の大半が総資本回転率1以下であることに繋がる。
3.特殊な独法会計
独法の中でも国立大学法人会計基準は我が国の会計基準の中でも最も難解なものと思われるが、独法会計基準全般を通じて、その特殊性は次の通りである。
まず、独法は5、6年間程度の中期計画を策定承認されており、これに従った会計処理が実施されている。設備投資にかかる施設交付金についても、交付時には収益とはしないで、負債(預り金か前受金のようなもの)として処理し、計画と実施状況等を勘案して「収益化」を図ることとされている。また施設交付金等で取得した減価償却資産の減価償却費は損益計算書には計上せず、貸借対照表のみで実施する。いわば国家の出資金金額が目減りするということである。
寄付金についても、特定目的の寄付金は目的達成まで負債計上である。また退職給付の負担すなわち国家と独法の負担方法については独法によって微妙に差異があり、準備する会計の方法も相違している。
4.業務実施コスト計算
独法の財務諸表は貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書までは、一般企業と同様であるが、最後の表は一般企業にはない。「業務実施コスト計算書」である。本論のタイトルに付けた「行政コスト計算」書である。
損益計算書に計上されている収益のうち、国等からの交付金収益、補助・助成金収益などを除外する。よって収益は自己収益のみとなる。病院で言えば、保険や患者さんから得た収益のみとなり、国立大学では学生等の納付金や企業からの受託研究収益等のみとなる。さらに国の資産等を無償で使用しているものについて適正な相当賃料を追加計上し、同時に国家の出資金に対する相当の金利コストを支払うものとして算定される金額を追加計上する。
このようにして、謳い文句としては「当該独法に国民がどれほどのコストをかけているのか」を算定報告する、これが「業務実施コスト計算書」と言われる財務諸表である。
この業務実施コスト計算書では、どの独法でも莫大なコストを要していると報告されている。しかし公的なサービスのコストはあくまで相対であると思う。
税金の徴収コストはどうか、国の予算と決算にはどれほどのコストが掛かっているのか、凶悪犯罪者の摘発等に掛かる警察コストはどれくらいか、1本の法律が出来上がるまでの国のコストはどれほどか、総理大臣が外国訪問する費用は一日あたりどれくらいか、などの相対比較が必要であると思う。一人、独法だけがコストが掛かり過ぎだ、と批判を浴びる必然性はない。
おそらく2009年度あたりの「中期計画」終了時点で、独法の将来が、また大きく左右されていくものと想定される。人件費への圧力増強、事業所の統廃合やさらなる民営化、民間への身売り等々である。
この国の課題は、そのときの生産力の配分の議論の未熟さと、国家や自治体等の予算の中長期的・相対的・合理的な配分論の欠如にあるものと考えているが、このままでは公的サービスがどんどん後退し、経済性のあるものが相当のサービスを高負担で受けられるという、本末転倒な国に進んでいくような気がしてならない。こんな悲観論は、一人私だけであろうか。
2006/03(坂根 利幸) |
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