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非営利・協同

非営利・投資ファンド
2005/04



 この間、マスコミを騒がせている「ライブドア対フジテレビ」のニッポン放送株式会社に対する株式支配権の争いは、アメリカ型のM&A市場戦略の文化と、「我が社は……」という日本型企業文化との闘いのように映るが、先に手を出したライブドアの株式取得資金800億円を融通したのはリーマンブラザースという米国の投資ファンドである。本稿は、この市場経済の典型的な仕組みである投資ファンドを論じようというものではなく、まったく異質の投資ファンドを提唱せんがための論考である。

1.投資ファンド

 ファンドは、Fondであり、日本語的には、基金や資金という意義で訳されるが、様々な資金が集まっているもの、という意義であり、例えば財団法人のような公益的な団体で募集し蓄積している資金もファンドと言う。投資ファンドは何かに投資するために集めた資金総体を指すが、三十年以前には日本ではほとんど知られていない。我が国の企業が海外へ出る取組が旺盛になり、日本の証券市場が儲かる対象に選択されるようになってから、わが日本にも諸外国の投資ファンドが続々と店を構え、若しくは代理人を設置し始めたのである。
 投資ファンドであるから、高利回り、高収益を追求する最たる存在である。そこには理念もなく、ミッション(使命)もなく、ただファンドに集まった資金の供給者達の果実要求にどれだけ応えられるかで、その投資ファンドが成長するか衰退するかとなる。イリーガルは困るが、すれすれでも何でも儲かればよい、これが投資ファンドの生き様であり、資金の供給者の思いを超越しつつ、市場を徘徊し、補食の対象を探し求めるのである。高い利益を獲得するファンドのマネージャーらは法外な報酬を得ているとのことであり、世の中では、それを勝ち組という。そうなのだろうか。

2.社会的責任投資ファンド

 マネーの飽くなき増強を企図する通常の投資ファンドと異なり、投資の対象先にこだわる投資ファンドがないわけではない。以前、社会的責任投資について少し論じているが(本ホームページ「ザ・ニュース!」コーナー:書籍紹介『社会投資ファンド』参照)、SRI(社会的責任投資)とは、社会や地域や文化に適正に役に立つ事業や商品を開発推進販売するような企業に積極的に投資をするものである。例えば、環境にやさしい商品販売企業とか、地域の環境を破壊しない工場造りを展開する企業とか、疲弊した商店街を住民と共に再建する企画サービスを提供する企業などを調べ選択して、投資を実行するというものである。儲かれば何でもというスタンスではなく、どのように儲けるか、せっかく投資するなら少しでも社会的に役に立つ事業・企業への投資の仕方を模索したい、これが社会的責任投資という考え方である。
 投資をする資金に少し色を付けて運用したいという考え方には賛成である。ヨーロッパにおける社会的責任投資の実績では、大儲けは出来なくても安定して投資利回りが確保されていることが報告されている。何故ならば、手っ取り早くの儲けではなく、環境や地域に向き合う事業や商品であるから、長い眼で観れば、地域住民や他の企業に支持されていくこととなり、当該企業が破綻して投資資金が大損するなどはないということを意味しているからに他ならない。ハイリスク・ハイリターンではなく、安定した社会貢献的投資を目指したい、これが社会的責任投資ファンドと言える。
 我が国では真の社会的責任投資ファンドは見あたらないと思っているが、ヨーロッパを中心として一定の実績を有している。本来でいえば、金融機関がそのような機能を有しており、社会的責任を果たしていくような企業等には低利で融資をする、そのような取組が望ましいところである。

3.非営利分野の事業とペイオフ

 私どもが深く関わっている非営利分野すなわち医療・介護・福祉・障害者らの事業の分野では、民営化、営利化とともにそれぞれ公的な負担が削減され、事業の維持発展拡大に大きな支障が出始めている。これらの分野ではもともと公的な、公益的な事業活動の色彩が強く、人件費のウェイトが高いが、それでも相当期間の間には大型の設備投資が必ず必要となる分野でもある。診療報酬、介護報酬、支援費、補助金、助成金などが目白押しで減額削減されているために、一般の金融機関は腰が引けてしまい、資金を借り出すにも高利の要求すら出始めている。まったく本末転倒な話である。本来は国自治体が担うべき業務を相当程度に補完している非営利事業組織らは、この先、容易ではない経営展開が必至な情勢となっている。
 一方で非営利事業組織で働く役職員はもとより多くの国民や中小の企業では、完全ペイオフ状態となるこの4月から、なけなしの貴重な資金を預け運用する先ですら混迷不明瞭な事態となっている。同時に、社会的責任投資とまではいかないけれども、少しでも有効に、少しでも明瞭に資金を運用したいと願う人々や企業が無数に存在していることも事実であり、すなわち私が行き着いた論点が本稿最後の節となる「非営利・投資ファンド」となる。

4.非営利・投資ファンド

 そんなファンドはまだ聞いたことがない。このファンドが組成できれば、医療、介護、福祉、障害者、街造りなどの事業組織や団体に比較的低利で、比較的容易な条件で、非営利事業組織への投融資が可能な仕組みが構築しうるのである。しかも、このファンドへ結集する資金は、儲けだけの市場のファンドでは面白くない人々、少しでも社会的に意義のある資金運用を願う中小零細企業、高利回りでなくても安心かつ意義のある資金を拠出したい無数の庶民、これらの資金を結集するファンドの存在を、切に願うのである。
 そんなことは夢物語だ、と異議が殺到するかもしれない。しかし私どもが関わってきた非営利の事業組織では、本当に破綻・破産してしまうケースは市場経済の中心と比較すると限りなくゼロに近いのである。何故ならば、非営利の事業組織は本当に破綻・破産した場合に関わっている人々の数や思いの質量が極めて大きいことから、容易に破綻等できないのであり、だからこそ苦しい再建・再生の道を歩むこととなるのである。しかもその確率ですら、しのぎを削る市場経済の中心と比較すれば極めて低いのである。ばくちを打たずに意義のある事業や施設を思いのある人々を結集しつつ展開するからに他ならない。
 もちろん経営不良になる非営利事業組織もある。仮にその非営利・投資ファンドの投融資の条件に「経営点検」という一項目が入って、それが有効に機能していたら、投融資金が回収不能になる確率は相当に一段と低くなることは明かである。すなわち市場のファンドのように「リスクを取るための高利投資」をあまり考えなくて良いこととなる。それでも金融機関の預金金利以上の運用利回りの確保は可能である。現状のコンマ以下の預金利率をコンマ以上の利回りで運用することが可能である。
 超高利の運用はしないし出来ないが、ペイオフ対応で頭を悩まさずに意義のある資金運用が可能となる、これが非営利・投資ファンドのイメージである。私どもの力だけではイメージだけで終わる可能性が大である。実際にファンドを立ち上げるには、様々なノウハウを持つプロ集団の存在が欠かせない。どこかにいるに違いないが、まだお目見えしていない。イメージを膨らませつつ、「とき」を待つ、そんな2005年春である。
2005/04(坂根 利幸)

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