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非営利・協同

共済事業と非営利・協同の理念
2006/07



 様々な共済事業組織が重大な危機に直面している。知る人ぞ知る「2006/04施行の保険業法改悪」によってもたらされた効果である。
 私たちの事務所「協働」も、長年に渡り多くの共済事業組織に関与しており、中には今般の共済規制課題の前に解散を余儀なくされたり、株式会社に組織変更をした共済団体もある。
 この共済規制課題を見過ごすことは出来ないことから、この間、多くの議論や取組に参加してきた。私共が主戦場としている「非営利・協同」組織の理念や事業を大切にしたいと願う多数の人々に向けて、些かなりとも共済規制課題の論点を整理し提起することとした。

1.無認可共済と法規制

 今から4年ほど前に、「良い共済・悪い共済」などと、マスコミに取り上げられた「無認可共済」事業組織に対して、当時の総理府がその実態アンケート調査を実施している。
 私どもが関与する共済団体の一部にも当該調査が及んだが、アンケートに対応した共済事業組織(無認可共済団体)は僅かであったと認識している。
 この調査結果がまとめられる頃から、「保険業法」の改定議論が浮上し、数回の審議を経て、あっという間もなく、昨年2005年の通常国会で保険業法改定が全会一致で成立したのである。この経過を観ていると、無認可共済の実態調査などは単なるアリバイであり、いわば極端にいい加減な無認可共済団体に対するマスコミキャンペーンも出来レースだったように映る。
 この法律案の審議経過では、無認可共済団体の「団体性の特定」が規制対象の重要なポイントとされていた。すなわち、まじめに、相互扶助としての任意の共済事業を長年に渡って苦労しながら展開してきた団体が無数にあることが明らかであったからである。障害者の団体やハイカーの団体その他である。共済規制の法律案が出てきたときには、「団体性」など関係なく、一部を除いて、無認可のあらゆる共済事業組織が「保険業法」の規制監督下に入ることとされた。本年3月までの旧保険業法の対象は「不特定の人々」を対象とする保険であり、金融庁の認可を得ない限り保険業を営むことは出来なかったのであるが、この4月から適用されている新「保険業法」では、特定の者を対象とする共済事業組織も、その法規制の下に置く、としたのである。

2.アメリカの金融資本戦略

 この保険業法改悪は唐突なことではなく、周到な構想による日米両国政府の企画であったことが明らかとされている。すなわち、バブル破綻で多くの不良資産等に頭を抱えていた日本の保険資本に対して、ここぞとばかりに触手を伸ばそうと意気込んだアメリカ金融資本の前で、保険需用を呑み込んでいったのが協同組合や労働組合の共済事業であったのである。これらの共済は保険業法で認可される対象ではないが、それぞれ「協同組合法」や「労働組合法」に基づく「制度共済」として位置付けられており、これらを直ちに金融庁規制対象とすることは容易ではなく、よってそれ以外の無認可共済事業組織を第一の規制対象ターゲットとして選択し、業法改悪施行したものと観ることが至当である。
 現に、昨年秋に北海道で開催された「保険学会」での議論も、今回の改定は「序の口」という学者らが目白押し、と聞いている。事実、改悪保険業法では、今回の規制対象から「制度共済は除外する」と、わざわざ謳っているほどである。それこそ、この除外規定を除外すれば、労働組合の共済であろうと、協同組合の共済であろうと、掛け金を頂いて給付を行う事業はすべて金融庁の規制監督下に入ることを意味している。
 団体性の特定出来ない、いい加減な共済事業組織は、共済ではなく保険事業の脱法的事業であり従来の保険業法で十分に規制できた筈であるのに、米国金融資本から背中を押された米国商務省の強い要求に対応した日本の与党政府は、一方で医療、福祉、障害者、年金等の分野で次々と弱者切り捨てと分断の施策を展開しつつ、相互の助け合いの組織と事業に僅かの繋ぎを求める人々の「願い」をも打ち砕こうとしている、と言わざるを得ない。

3.4年後への警告

 今回の保険業法改悪の下で、規制対象から除外された制度共済、すなわち労働組合や協同組合の方々には、業法の再吟味が予定されている4年後にも、規制対象外措置が継続されるかは大いに疑問である。
 同様に今回の規制対象外とされている短期少額共済や小規模共済、企業内共済等でも、次はうかうか出来ないことが十分に予想されている。
 我が国の大規模な制度共済では、これらの改悪措置方向に対して、連帯して闘う意気込みは現在のところ感じられない。したがって無数のまじめな共済団体と共に、各種の労働組合共済組織が改悪阻止および規制撤廃を求めて立ち上がるかどうか、そこに鍵がある、と考えている。

4.税制改悪への警告

 杞憂に終わればよいと考えているが、税制改悪の方向にも「危険なにおい」が満ち満ちている。
 そもそも、共済事業を普通法人形態すなわち株式会社形態などで遂行している共済事業は少ない。なぜ少ないのかというと、普通法人ではすべての損益差額が課税対象となるし、次年度以降の多額の給付発生に備える積立金などは僅かしか税法上の損金性を認められず課税対象となり得てしまい、有効な共済事業収支の企画展開を困難とするからに他ならない。
 もともと、共済団体では比較的軽便な掛け金を基礎として「いざ」というときの助け合いをするという前提での事業であるから、その収支差額に想定外の税金を賦課されては成り立ちようがない。そこで、団体組織ではあるが、「法人格なき団体」で共済事業を営む組織が多いということとなる。
 それらの法人格なき団体等では、消費税法上では保険や共済の収益は「非課税」と定められていて、消費税課税の心配は要らない。法人税法上も、限定列挙されている「収益事業」の中には「保険業」は記載されておらず、これに準ずる共済事業も「自主共済事業」であれば法人税の申告納税義務がない、こととされてきた。

 もともと旧保険業法では、認可を経ずして保険業を営めないことから、通常の保険事業者は課税事業者であったし、一方で無認可の共済団体は、営利を目的としていないし、規模も小さなものであった、ことなどから「収益事業の範囲」には含められていなかったものと推察している。もっとも従来でも共済団体が生損保などから受け取る「手数料収益」などは「請負業」等として法人税の収益事業課税対象である。

 さらにこの間、公益法人制度改革の過程や政府税制調査会の税制改革の議論の経過では、非営利法人に対する税制のあり方や収益事業課税のあり方について、根本的な議論が行われてきた。
 この中では、「原則非課税・収益事業のみ課税」という現行課税方式から、「原則課税・一部非課税」という方式にすべきだという議論が出ている。また、「収益事業課税の範囲」を見直すべきだという議論があり、いずれも非営利団体には厳しい結果をもたらしうるものと観ている。
 保険業法改悪なった現時点で、保険会社と共済事業組織は、同様の土俵での監督下となったことから、法人税法収益事業課税の範囲の中に「保険・共済事業」と付け加えられる可能性も否定できないところである。業法規制に加えて、課税制度の圧迫があっては無認可共済事業組織は成り立ちようが無く、市場経済に飲み込まれることが余儀なくされてしまう。
 法人の税制については、2007年度通常国会で成立を期すというのが政府与党の戦略であり、今秋には税制改悪案が提起されるものと思量される。共済団体のみならず、非営利組織は極めて要注視であることをを指摘しておく。

5.保険と共済

 保険は、不特定の人々を対象にして特定の保険事故を因とする給付を行うことを約して掛け金を収受する事業であり、事業を遂行する組織は通常「株式会社」であり、株主の利益すなわち「配当と株価」を拡大することを第一の目的とする「営利」の事業である。だからこそ、発覚するまで、支払うべき給付をしないで澄ましている保険会社があとを絶たないのである。

 これに対して、真の自主共済事業は、当該組織自身の利益を第一には考えない、あくまでも共済加入者のための共済事業についての長期的安全性の観点から、単年度剰余を描き追求し、時には「割戻し等」を実施するのである。すなわち、適正な共済事業組織の理念は、「非営利」である、と規定できる。
 そして適正な自主共済事業組織は「特定」の人々を対象として組織される。同業者であったり、同種の課題や困難を持つ人々であったり、或いは職場や同一職種の人々であったりするが、いずれの場合も当該共済事業の管理運営を担当する理事者らを機関会議で選任し、予算と決算の議論と承認を行い、掛け金の割戻し等の議論に加入者自らが直接または間接的に参画する、これらの仕組みを有して運用する団体であり、それ故に「協同(民主的管理運営)」の組織と位置付けることが出来る。

 我が国の無数の無認可共済団体には、この「非営利性」や「協同性」またはその両方で欠格している団体があることも事実と思われる。それらの不十分さを突かれて、今回の改悪規制法が成立するきっかけともなっているかもしれない。それ故に、日米の市場戦略に抗する闘いの展開と共に、非営利・協同の「内なるテーマ」でも足を掬われないように留意することが大切と考える。

 助け合い、相互扶助など人類の歴史の当初から無数の共済の営みが展開されてきたが、21世紀初頭で我が国では自主共済事業は瓦解してしまうのかどうか、共済団体のみならず、非営利分野の組織や人々にかかる「正念場」である、と言えよう。
2006/07(坂根 利幸)

◆追加
 私どもが関わっている「非営利・協同総合研究所いのちとくらし」では、本7月から1年以上をかけて「共済」に関する学習会を開催継続することとしている。このHPからもリンク出来るので、ぜひ跳んでいただきたい。

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