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会計と税務の境界 2008/09
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長年にわたり非営利・協同の事業組織の指導に従事してきたが、それらの組織や役職員において、会計と税務、そしてその境界について驚くほどの認識不足であることに愕然とすることがある。今回はこの論点の一部を紹介しよう。
1.決算書の作成責任
法人税の申告書は確定した決算に基づいて作成するよう法人税法が定めている。確定した決算とは、法人や団体等の決算承認議決機関で承認を受けた決算(書)、という意義である。よって例えば総会や評議員会、大会などの決算承認後でないと法人税申告書は提出できないこととなる。その前に提出して、それが判明すると当該申告は無効となることは言うまでもない。
さて非営利・協同の事業組織の相当数が申告書の作成はもとより、決算書の作成を会計事務所にお任せ、という状態と観える。創業当初ならいざしらず、決算書もその基礎資料も大切な論点も他人にお任せでは、経営担当者はその責を果たしていないと指摘されよう。その不十分さが繰り返された場合、決算業務のノウハウが経営内に形成蓄積されず、自ら中長期の経営計画も立案できない事態を招いてしまう。私どもでは申告書の作成も経営自身の手で担えるように、ゆっくりと指導し続けている。なお機関会議で承認確定した決算書類があるのに、税務用の決算書を会計事務所が作成提出している事例も多い。報酬を高く取るためなのか、意味不明といわざるを得ない。
2.繰越欠損金
会計上の当期損益と、法人税法上の当期課税所得金額は一致しない。その差の大部分は、会計上の費用のうち、法人税法の損金として認めていないものが多数在るからである。役員賞与の一部、限度額以上の減価償却費、賞与引当金繰入額、退職給付引当金繰入額、寄附金や交際費の一部等々は法人税計算上差し引いてもらえない。決算書の税引前利益金額より、法人税課税所得金額の方が多くなってしまう理由となっている。また、このため損益の累積である繰越欠損金も会計(決算書)と税法上で金額が相違することとなる。概ね税法上の赤字の方が少ないところが目立っている。
20年間赤字続き、などの非営利事業組織があるが、決算書では繰り越せても、法人税法は、赤字の繰越について7年間の繰越制限をしている。すなわちある年の赤字は、7年間の間に赤字を埋める利益を出さないと、8年目で赤字の権利が消えてしまうのである。 赤字の権利とは、黒字金額と相殺できるという権利である。
8年以前の決算書赤字が6千万円存在するとすると、税金負担を含めて1億円程度の税引前利益を獲得しないと、当該6千万円の赤字は消せない、という過酷な事態となる。非営利・協同の事業組織が破綻する時、その影響は経済性はもとより、関わる多数の人々の気持ちを打ち砕くことの方が社会的損失度合いが大きい。
非営利・協同の事業組織は赤字になりやすいが、生じた赤字は市場経済企業以上のスピードで解消しなければならない。
3.人件費カット特別利益
極めて経営の苦しい非営利・協同の事業組織で当期利益改善のために役職員らの同意を経て相当額の人件費をカットすることがある。極めて苦渋の選択であるが、事業を支える経営と雇用の継続のためには仕方のない事態も生じうる。
カットした人件費について決算書の上で何の配慮もしない場合が多いが、非営利・協同の事業組織ではカットした人件費を計上すべきである。そして当該人件費カット金額を特別利益として計上し、その旨の注記を行う。その限りで税法課税所得金額と差はないこととなる。
何故にこんなことをせよと勧告するかというと、第一にカットした年度のみ人件費や人件費率が低下して、経年的な経営推移の比較が容易ではなくなることが一点、カット人件費を計上しての経常損益を必ず回復する意思表示の決意のためという意義である。減価償却費を実施しなかった場合の事例でも、同様に減価償却取消特別利益を計上して表現するよう指導したこともあった。
4.事業所ごと会計
非営利・協同の事業組織の成熟度を何で測るかというと、会計の判る役職員が1割近くいるかどうか、などとしても議論しうるが、組織的な意味で考えれば、事業所ごと会計の進展度合いが鍵と言えよう。
事業所ごと会計は本部集中ないし本部経理集中会計に対立する会計管理システムである。市場の営利企業は如何に効率よい会計情報システムを作るかでしのぎを削るが、非営利・協同の組織では如何に現場で数値を認識整理しうるか、という課題が大切なのである。現場で予算をたて月次で点検する、この取組は事業所ごと会計管理を基礎として成り立つことであるから、この進展を無視して、みんなの経営とか、みんなで造る予算などとは言えないこととなるのである。
税務調査の場合も、この状況が如実に表面化している。本部集中管理の事業組織では立会人は本部経理部と会計事務所であり、まるで密室での対応のように見える。これに対して事業所ごと会計管理の事業組織では本部経理だけでは詳細の対応が出来ないことから、各事業所の事務幹部や会計担当者も調査立会人となり、組織をあげて闘うと共に次代へ繋ぐ学びとなる。事業所ごと会計が未確立のところは是非挑戦されたい。
最後に、税法や税務処理は重要な事項であっても経営の最大課題ではないことを強調しておく。税金は安い方がよいが、一定の税金負担をしない限り自己資本すなわち純資産金額は強化されないことも忘れてはならない。いずれにしても税務を含めた決算政策を、非営利・協同の事業組織自身が我がものにすることこそが必要不可欠である。
以上
2008/09 (坂根 利幸) |
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