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吾輩は観察犬ジョン!
…口述日記抜粋…
2004/12
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| 吾輩(ジョン) |
1年振りのご挨拶である。吾輩はラブラドル・リトリバーの男にて、もうすぐ5歳に相成る。このホームページの主宰者の一人である坂根家に同居しており、本H・Pのバックナンバーでもお馴染みのはずだ。吾輩の記事は、04年初頭以来のお目見えで、無沙汰の儀、たいへん恐縮至極である。
吾輩はときどきその日の出来事を口述しているのだが、何しろ、パソコンに入力するご主人の耳と手が稚拙なものにて、出来上がった文章が読めた代物ではないのである。
年末近くになって、ご主人に入力文章整理を提起し、再三再四促した結果、我が口述日記の幾つかをようやく掲載できる運びとなった次第なのである。
まずは04年も多くの読者のご支援にて無事に年越しをすることがかない、心中より御礼申し上げる。同時に、来る2005年も倍旧のご高配を賜りたく、我がしっぽを下げてお願い申しあげる。ついでに還暦まであと僅かとなった吾がご主人に成り代わって、深く頭を垂れるものである。おっと下を見たら義兄弟のクロ(オス猫)の餌が落ちているぞ。新年に向けて幸先良いことだ。ムグムグ……。
◆3月○日(日)
3月の下旬の日曜日、ご主人と散歩に出発した。春来たりて、夜明けが早くなり、このところ出発時間も5時半頃だ。日曜日のコースは大体決まっていて、四谷から迎賓館、清水谷公園から麹町を経るルートである。
何故に休みの日が、このコースなのかは吾輩には分からないが、いずれにしても毎日コースが違うことだけは間違いない。ご主人の話では、「ジョン(吾輩の名前)の縄張り意識を形成させないためだ」、と言う。一体何のことだろう。ま、いいか、この四谷コースは吾輩のお気に入りルートなのだ。
市ヶ谷駅の外堀側から四谷駅まで線路沿いに伸びている小道は緑が多く、同胞のにおいが満ち満ちていて、吾輩の想像力を充分すぎるくらいにかき立ててくれる優れルートなのである。
前に一度リードを外してくれたときに、階段を見ると昇りたくなる吾輩は、目の前の階段を昇ってしまい、外堀通りを横切ったのである。息を切らせたご主人が、「待てェヨー!」と叫びながら通りの向こう側まで駆けてきて吾輩を座らせて3分間説教をしたものだ。以来、この道でリードを外してくれることはない。
迎賓館の前庭には、概ね警察車両が一台駐車して見張っている。ご主人は、ときどきわざと近付いていって、しげしげと眺めたりする。ご主人の青春の時代風に言えば、「挑発は止めろ!」と言うべきかもしれない。この前庭は吾輩のトイレ場所として、知る犬ぞ知る場所である。
そこから上智大学のグランド脇を通り、ホテルニューオータニの横を通り過ぎて清水谷公園に至る。この公園ではときどきリードを放してくれるのだが、おっと今日はなんだか短く握っているぞ。ははぁ、向こうに小さな同胞を連れた女性が立っている。
ご主人はこういう相手になると、途端に動きが鈍くなり、身体中がこちこちとなるのだ。その様子がリードを通じて伝わってくる。ご主人は「おはようございます」と小さな呟きを発しつつ、通り過ぎようとするが、吾輩はその小さな同胞にきつい眼を一発飛ばしてやった。「キャーン」と叫んだ小犬を女性が抱き上げて足早に立ち去っていく。 ご主人はどういう分けか、ため息をついて、「ジョン、おまえ、何か俺に恨みがあるのか?」などと言う。恨みはないが、小生意気にチョッキなど着たプードルを見過ごすことは出ないだけだ。もっとも、そんなことを言ったら叱られるので、少し悲しそうな眼でご主人を見あげてやった。
◆7月○日(土)
暑い。今年の夏は異常気象とかで猛烈に暑い。朝から汗が噴き出してくるような感じだ。もっとも吾輩らは汗をかかない、いや正確には「かけない」のだ。その代わり急上昇する体温を調節するために、長い舌を出したまま、外の些か冷たい空気を体内に取り込むこととしているのである。よって、ハァハァハァ、と息も絶え絶えの様子に相成る仕儀となる。今頃は朝5時前に家を出て少しでも涼しいうちに帰還するルートを取る。 ご主人も汗だくでときどき自動販売機で缶コーヒーを買って飲んでいるが、何時だったか、吾輩にミネラルウォーターを買ってくれた。もちろんラッパ飲みは出来ない吾輩なので、ご主人は持参のビニール袋にあけて飲ましてくれるのだ。いや、それが美味しいこと、この今年の暑い夏場は毎日1本飲み続けてしまった。なにしろ公園などの水飲み場の水道水は、いまや吾輩にはまずくて飲めない体質となってしまった。六甲の水とか、大清水の水とか、エヴィアンとか、いろいろの種類の美味しい冷たい水が飲めることから、吾輩は自販機が近付いてくると、苦しそうな息遣いを強化することに決めているのだ。もっとも、東京都は水道水を少しでも美味しくする工夫を開発中で、あと何年間で今の水道水が美味しくなるという話である。それでも吾輩は自販機の水の方が好きだ。
麹町の通りを歩いていたら、通りの反対側の歩道の花壇に水をまいていたおじさんが「犬がよー、粗相するから花が枯れちまうんだよなー!」と叫んでいる。吾輩は強く前進した。このようなときご主人の虫の居所が悪いと、わざと近付いていって、「いまのセリフ、オレ達に言ったのか?」などと言いかねないからである。あっという間にイスラエル大使館警護のお巡りが飛んできてしまう。したがって吾輩はご主人のトラブルを未然に回避すべく、現場を早く離れるために強く引っ張ったのだ。
今年の夏は梅雨知らずで、吾輩が合羽を着たのはたったの2回である。合羽を着るのはよいが、とにかく暑苦しくてかなわない。いつだつたか、リードを放してくれたので吾輩は茂みに突っ込んでいって、木の枝に合羽を引っかけて茂みから出てきたときは裸となっていた。ご主人が吃驚仰天して「ジョン、おまえ器用に脱げるんだなぁ!」と唖然と立ちつくしていたっけ。でも吾輩の合羽姿に、行き交う多くの人々や同胞らが、見とれつつニコニコとする姿を見ると、吾輩の気持ちもまんざらではなく、ご主人が合羽を着せるときはいつもおとなしく我慢している。
◆12月○○日(金)
今日はご主人の事務所協働の忘年会である。この日、ご主人の帰宅は例年通り遅くなる。前にも話したとおり、この数年間、ご主人の事務所では「拡大忘年会」と称して、大勢で騒いでいるらしい。おそらく今年も「非営利何とか」と称しては、集まってダボラを吹いている様子を眼に浮かべることが可能だ。
何しろご主人はどこかで飲んで、ご帰還したあと、よく家族全員を集合させて、ひとしきり、何かのうんちくを語るのである。その大部分は、医療がどうしたとか、障害者が大変だとか、国民の税金が上がるだとか、まったく吾輩の話などはこれっぽっちも登場することはない。
ほら、帰ってきたぞ。吾輩は家族の誰でも、ご帰還のときは出迎えることとしている。ご主人はときどき吾輩にも土産を買って帰るときがあるのだが、おや、今日は手ぶらみたいだ。母さんが訝しげに観ている。ご主人は何もない振りしてカバンの中から何かを取り出して驚かすこともあるのだ。おっ、ビッグボーンが出てきた。吾輩の大好物で、神楽坂の幾つかのコンビニで売っているのだ。もう涎がしたたり落ちてきた。すぐにお座りして、首を少し傾け、しとやかなる模範犬と化してやった。
ご主人は酒臭い息を吐き出しながら、「ジョン、もうすぐ5歳だ。悪戯小僧の時代は過ぎたのだ。分かっているのか?」
吾輩は、充分に分かったような顔をして、黒い瞳を大きく開けつつ見つめてあげた。もっとも見つめているのは、ご主人が手に握っているビッグボーンなのだが。自分でも、眼が点と化しているのが自覚できる。
吾輩がボーンをむしゃむしゃ食べていると、ご主人らは今年のご主人の5大ニュースは何かを話し始めた。吾輩の今年の重大ニュースは何だったろうか。そう一番目は今夏、独りぼっちにさせられてしまったことだ。お盆過ぎのある日、吾輩は朝の散歩から帰ると、何時にないご馳走を供されたのだ。喜んで朝食(というよりも1日1食だが)を食し、満腹感に浸っていたら、突然、訓練所のおじさんが現れて吾輩を強制連行したのだ。
何がなんだか分からないうちに軽トラックのゲージに押し込められて、5日間ほど家族と離ればなれにさせられたのだ。訓練所には仲間の犬たちもいるが、我が家よりはずっと狭い部屋だし、甘えられる家族もおらず、好物も与えられず、寂しい限りだった。この最悪のニュースは年に1回か2回は発生するのだ。家族旅行なら是非吾輩も連れて行ってもらいたいと、何度も懇願しているのだが、実現したことはない。
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| 義兄弟クロ |
吾輩のその他のニュースは、年老いた同僚のクロが寒くなってきてご主人の布団の中に潜り込むようになり、吾輩が入り込むのに往生するようになったこと、ハスキー、黒ラブ、サモエド、ミニ芝、ミニダックスなど何匹かの知人が増えたことか、いずれも優劣は付けがたい。
何かご主人が叫んでいる。「なんて言ったって、今年のニュースのトップは、我が事務所の15周年記念事業だ。まず季刊紙の拡大号で紙発信の最後を出したろ、大月から1冊刊行して、その後ホームページを開設した。これらのことは描いて提起追求しないと実現できないのだ。これが私の今年のベストワンだな。」
まぁ、季刊紙の最終号には吾輩の勇姿も掲載されたし、吾輩にとってもトップニュースだったのかもしれない。吾輩にはファンレターこそ来ていないが、ご主人が時々、「ジョンは元気ですか!」と聞かれたぞ、などという話を聞くにつけ、吾輩の全国的人気が充分に理解できる。
「まったく今年のニュースで参ったものの筆頭は、海外へ出かけられなかったということだ。今年こそと張り切っていたのに、年の前半で早くも断念してしまった。私も眼や足が衰えてきて、来年こそ実現し、トップニュースに持ってきたいもんだ。」
おいおい、まったく身勝手なのはご主人だ。ご主人が、海外など長期に不在となったら毎朝の散歩は一体どうなるんだ。長兄が散歩に連れて行ってくれるだろうが、長兄の散歩指導には厳しいものがあるのだ。もっとも毎日10日間も指導を受けたら吾輩もダイエットできるかもしれない。この前も訓練所の先生に、「ジョン、甘えておねだりしてはいけない。君のベストの体重から2割もオーヴァーしているんだ。食べ過ぎないこと、散歩はリズムを一定とすること!」などと説教されてしまった。
おや、ご主人は早くも眠そうな顔になってきている。明日の散歩も予定通り6時に起こさないといけない。吾輩が二階へ上がり、ご主人の部屋で何か悪戯を始めれば、物音を聞きつけたご主人は、きっと「よーし、ぼちぼち寝るか!」と言ってベッドへやって来るに違いない。これでも吾輩はご主人の健康管理には気を使っているのだ。
2005年、我が家にも、多くの人々にも、よいニュースが少しでももたらされんことを祈っている。しかしこの間のご主人の話を総合すると、小泉何とかのせいかどうかは不明だが、聞こえてくるのは暗い話題ばかりのようだ。こういうときこそ原点に還る、すなわち寝て起きて散歩して食べる、これに尽きるというものだ。
年が代わっても、吾輩の観察犬としての技能は些かも衰えることはないことを宣言しておこう。引き続き、このホームページで、つたない口述筆記でありつつも掲載すること決意申し上げる。2005年、本年も宜しく。
2004/12(ジョン&坂根) |
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