協働 公認会計士共同事務所

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医療生協における減損会計等の考え方とは

Q

 当法人は、会計監査人を設置していない医療生活協同組合です。従来から病院として利用している土地(今後も売却等の予定はなし)に多額の含み損がありますが、このたび監事から減損損失を計上しなくてよいのかと指摘を受けました。この場合の拠るべき会計処理方法を教えてください。

A

 含み損は、土地の時価が下落した結果であり、医療生協としての医療活動から生じたものではありません。ましてや、病院の土地として利用しており、売却予定もないのであれば、多額の減損損失を計上することは職員や組合員等に適切な経営状況の認識・理解を得られない可能性があります。
 貴生協では「中小企業の会計に関する指針(以下、「中小企業会計指針」)」に拠る会計処理が適用できますので、その土地を病院として継続的に利用しているのであれば、含み損があっても減損損失を計上する必要はありません。

解説

 消費生活協同組合法施行規則では、生協の会計処理は「一般に公正妥当と認められる会計の慣行をしん酌しなければならない」とされています。ただし、会計監査人を設置していない中小規模の組合は、実務的に対応しやすいよう「中小企業会計指針」に拠ることが認められています。(「消費生活協同組合施行規則の一部改正に伴う組合の財務処理等に関する取り扱いについて」H20.3.28厚労省通知)

 「中小企業会計指針」とは、日本税理士会連合会・日本公認会計士協会・日本商工会議所および企業会計基準委員会の4団体により策定された中小企業の会計処理等に関する指針です。2005年8月に公表され、その後何度かの見直しがおこなわれて現在に至っています。
 企業の会計基準が非常に難解かつ複雑化していくなかで、例えば会計情報に関する投資目的等での利用者がほとんどない中小企業において、こうした複雑な会計基準を強制適用することは費用と便益の比較から必ずしも適切とはいえないことから、会計処理の簡便化等のために策定された指針が「中小企業会計指針」です。

 適用対象は、以下を除く株式会社となっています。
 (1) 金融商品取引法の適用を受ける会社並びにその子会社及び関連会社
 (2) 会計監査人を設置する会社及びその子会社

 なお、冒頭に記載したとおり、一定の消費生活協同組合においても「中小企業会計指針」に拠る会計処理を適用することができるものとされています。

 「中小企業会計指針」は、会計処理の簡便化や実務負担の軽減が目的のひとつであるため、様々な企業会計基準につき簡便的な方法が認められています。
 具体的に、ご質問にある固定資産の減損にあたっては、「減損会計基準の適用による技術的困難性等を勘案し」、以下の??のいずれかに該当し、かつ、時価が著しく下落している場合に減損損失を認識(計上)すると定められています。

a 将来使用見込みが客観的にないこと(資産が相当期間遊休状態にないこと)
b 固定資産の用途を転用したが採算が見込めないこと

 したがって、病院として土地を活用しており、用途も継続しているのであれば、時価が下落していることをもって、減損損失を計上する必要はありません。なお、まじめに医療活動をおこなう多くの医療生協では、長期間に渡って多額の遊休資産を保有することはほぼあり得ないため、bの用途転用があった際に若干の注意を払えば、実務上も減損はさほど問題にならないものと考えられます。

 様々な企業会計基準が国際化の流れのなかで複雑になり、投資家のために企業の「価値=時価」を評価・測定しようとする基準が次々に制度化されています。非営利・協同をめざす事業体の会計の目的は、会計情報の正確な提供と構成員等の共通認識です。金融市場のための会計基準に振り回されることなく、その内容をよく吟味しながら対応していくことが望まれます。

 

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