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適正性監査と準拠性監査について


 2018年度から一定規模以上の医療法人(社会医療法人)に対して、会計監査人による監査が義務付けられるが、医療法人(社会医療法人)に対して実施される準拠性監査とは何でしょうか?また、適正性監査と準拠性監査の違いは何でしょうか?


 2014年の監査基準の改訂により、適用される財務報告の枠組みの性格に応じて、適正性または準拠性に関する意見表明がなされるようになった。財務情報の適正表示を達成するために、適用される財務報告の枠組みに追加的な開示要請の規定がある場合には、適正性に関する意見表明がなされ、追加的な開示要請の規定がない場合には、準拠性に関する意見表明がなされる。
 但し、監査意見の表明形態が異なったとしても、合理的な保証という監査の保証レベルに違いはない。両者の違いは、監査意見を形成する際、財務諸表の表示方法の適切性に関する評価の内容が異なる点にある。

解説
(1)財務報告の枠組み
 財務報告の枠組みには、「一般目的の財務報告の枠組み」と「特別目的の財務報告の枠組み」がある。
 「一般目的の財務報告の枠組み」とは、広範囲の利用者に共通する財務情報に対するニーズを満たすように策定された財務報告の枠組みをいい、「一般目的の財務報告の枠組み」に準拠して作成される財務諸表を一般目的の財務諸表という。
 「特別目的の財務報告の枠組み」とは、特定の利用者に共通する財務情報に対するニーズを満たすように策定された財務報告の枠組みをいい、「特別目的の財務報告の枠組み」に準拠して作成される財務諸表を特別目的の財務諸表という。なお、監査基準では、特別目的の財務諸表は、特定の利用者のニーズを満たすべく特別の利用目的に適合した会計の基準に準拠して作成された財務諸表と定義されている。

(2)「適正表示の枠組み」と「準拠性の枠組み」
 「適正表示の枠組み」は、その財務報告の枠組みにおいて要求されている事項の遵守が求められ、かつ、財務報告の枠組みにおいて、具体的に要求されている以上の開示を行うことが必要な場合がある旨、財務報告の枠組みおいて明示的にまたは黙示的に認められている場合に使用される。
 「準拠性の枠組み」は、その財務報告の枠組みにおいて要求されている事項の遵守が求められるだけの場合に使用される。
 すなわち、適用される財務報告の枠組みに追加的な開示要請の規定がある場合には、「適正表示の枠組み」となり、適用される財務報告の枠組みに追加的な開示要請の規定がない場合には、「準拠性の枠組み」となる。

(3)異同点
 一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して行う監査は合理的保証業務であり、財務報告の枠組みが適正表示の枠組みか、準拠性の枠組みかにかかわらず、保証水準に違いがあるわけではない。また、監査意見の形成にあたり、監査人は財務諸表がすべての重要な点において、適用される財務諸表の枠組みに準拠して作成されているかを評価しなければならない点でも同じである。
 両者の違いは、監査意見を形成する際、財務諸表の表示方法の適切性に関する評価の内容が異なる点にある。準拠性の枠組みに準拠した財務諸表に対する監査の場合は、監査人は適用される財務報告の枠組みにおいて要求される表示に関する規定が遵守されているか否かを検討すればよく、財務諸表が適正に表示されているかどうかの評価、すなわち、財務諸表により提供される情報を利用者が適切に理解できるか否かの観点に立った俯瞰的な評価を行うことまで求められていない。

(4)準拠性監査の事例
 準拠性の枠組みに準拠した財務諸表に対する監査の例として、労働組合法監査、医療法人(社会医療法人)監査などがある。

(5)今後の研究課題
 今後、準拠性監査については、標準的な監査手続や具体的な監査ツールが日本公認会計士協会から示されると推察するが、準拠性の枠組みに準拠した財務諸表の利用者に資するよう保証水準を維持しながら、具体的な監査手続を検討していく必要がある。

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