協働 公認会計士共同事務所

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退職給付引当金繰入額の予算策定

<Q>
当法人では、退職一時金制度を採用し、退職給付債務の算定にあたり簡便法(期末退職金要支給額の100%を退職給付債務とする方法)を採用しています。期末になると、引当不足が生じることが多いのですが、退職者の予測に誤りがあるのが原因でしょうか。

<A>
予算策定における退職給付引当金繰入額については退職者の予測は不要です。ただし、資金繰りを考えるうえでは、実際に資金流出をともなう定年退職者と自己都合退職者の予想金額が必要となるため、ご留意ください。
以下はあくまで、「退職給付引当金繰入額」の予算策定に絞った説明となります
退職給付債務の算定にあたっては、期末現在在職している職員の退職金要支給額が1年後にどのように変動しているかに着目して両者の差額を計上すれば引当不足は生じないものと考えられます。退職者について退職金要支給額の変動(退職による要支給額の減少)は考慮する必要はなく、1年後も退職金要支給額がそのまま残っているものと仮定すれば問題はありません。
退職給付引当金不足の原因としては、例えば「○○太郎」氏のようなダミーデータをも集計して計算しているような場合やそもそもの退職金エクセルデータ自体の算式の誤りや算式の漏れが存在し正確に計算できていないようなケースが考えられます。また、退職金割増規定や1年目から退職金が発生するような個別に規定があるようなケースでそれらが正確にデータに反映されていないといった原因も考えられます。

以下、具体例をあげ説明します。
(前提条件)
・計算をわかりやすくするため、職員は5名とする
・××19年度末時点で退職金要支給額100%を引当金計上している
・定年延長を選択しても退職金は増加しない
・A氏は19年度末で定年に達している
・その他の者について、退職金要支給額の変動は下記表のとおり

  退職金要支給額
職員 ××19年度末 ××20年度末
A 200 200
B 150 153
C 30 32
D 10 11
E 0 1
合計 390 397

この場合に、退職金要支給額の変動は+7であり、××20年度においては年間で退職給付引当金繰入を7計上する予算とすればよいこととなります。
 これを仕訳で示すと
借方            貸方
(退職給付引当金繰入) 7 / (退職給付引当金) 7
となります。

(1)A氏が定年延長を選択し、A氏を含め××20年度において退職者がいなかった場合は、上記仕訳のみとなるため、××20年度末の退職給付引当金は397となります。この場合は特に問題がないかと思います。

(2)A氏が××20年度の途中で退職し、退職金が支払われた場合はどうなるかというと、A氏の退職金は、××19年度末において要支給額すべてが退職給付引当金として積み立てられています。したがって、支給時には
借方           貸方
(退職給付引当金) 200 / (現金預金) 200
となります。
 その結果、××20年度末における退職給付引当金は397-200=197となり、退職金要支給額も同額となりますが、退職給付引当金繰入(費用)の計算には何ら影響を及ぼさないことがわかります。

(3)C氏が××20年度の途中で退職し、退職金が支払われた場合(要支給額は31とする)はどうなるかというと、C氏の退職金は、××20年度退職時において要支給額すべてが退職給付引当金として積み立てられています。したがって、支給時には
借方           貸方
(退職給付引当金) 31 / (現金預金) 31
となります。
 その結果、××20年度末における退職給付引当金は390+7-31=366となり、一方で退職金要支給額は397-32=365となり、両者には1差額が生じます。この差額は、C氏退職以降のC氏要支給額の変動分(32-31)であり、退職給付引当金が不足するような事態は生じないことがわかります。

以上

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