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一般法人への事業譲渡時に係る消費税
Q:当社は現在株式会社の形態で事業をおこなっていますが、2017年9月末日より一般法人(非営利型)へ事業を移す計画をしています。一般法人は2017年に4月に設立登記をおこなっており、9月末日に株式会社の営業のすべてを一般法人に譲渡する計画です。一般法人は3月決算法人であり当該譲渡時に課税事業者選択届出書を提出しないとした場合でも、特定期間の規定により、2018年度から課税事業者となってしまうのでしょうか。ちなみに株式会社の2017年度9月までの課税売上高は7億円、課税売上割合はほぼ100%と試算されます。なお、一般法人では4月~9月において人件費は生じていません。また、株式会社では原則課税により消費税の申告をおこなっていました。
A:2017年9月末日を譲渡日とした場合、2018年度は特定期間の課税売上高が存在しないため、事業を移した後の一般法人は2017年度と2018年度は免税事業者となります。したがって、1年半の期間については免税事業者となり、その期間に係る消費税納税負担は生じないことになります。
【解説】
消費税は原則的には基準期間(前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超えた場合に課税事業者となりますが、ご質問のケースは基準期間がないため、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えるどうかによることになります。結果、回答にもあるように特定期間については課税売上高が存在しないということになり、免税事業者となるのですが、その内容を以下に説明します。
1.特定期間
・前事業年度開始の日以後6月の期間
又は
・前事業年度が短期事業年度(7ヶ月以下)の場合は前々事業年度開始の日以後6月の期間
2.事業年度
設立時は原則として設立登記の日が事業年度開始の日となります。
3.一般法人に事業を移した後(9月末日譲渡を前提)の特定期間及び課税事業者
〈2017年4月~9月が特定期間となる。〉
9月末日に事業を移した場合、株式会社では4月~9月は7億円の課税売上高となっていますが、一般法人では4月~9月(特定期間)の課税売上高は無く1,000万円未満のため、翌事業年度(2018年度)いっぱい免税事業者となります。
4.消費税に関する留意点
・株式会社側
株式会社側では、事業譲渡で譲渡される資産の種類に応じて課税売上、非課税売上が生じるので留意が必要です。
・一般法人側
免税事業者の場合、資産移転時に株式会社で課税された建物等に係る消費税負担分がある場合でも当該消費税を一般法人側で控除することができません。課税事業者を選択することで資産移転による仕入税額控除をすることもできますが、有利不利は実際に試算して判断することになります。なお、ご質問の範囲では想定されませんが、課税事業者を選択した場合、一定期間は「免税・簡易」の適用を受けることができない縛りがあるので留意が必要です。詳細は国税庁のタックスアンサーを参照ください。
5.最後に
一般法人への事業譲渡は、税金対応の他にもいくつもの手続が必要となってきますので、一般法人に事業を移すことに関して組織的に議論し、準備を進めていくことが重要となってきます。