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外国人留学生アルバイトの源泉徴収等

Q
 内科と歯科を行っている診療所です。近年は外国人の受診が増えていています。語学力の問題もありますが、療養上の指導をするうえで生活文化を理解することが必要だと感じています。
 国際交流と言うと大袈裟かもしれませんが、実習の要素も取り入れて医療福祉系の外国人留学生のアルバイト採用を積極的に行おうと考えています。
 アルバイト代の源泉徴収などアドバイスをお願いします。

A
 飲食業界やコンビニ業界で外国人留学生のアルバイト採用が増えていることが話題になっています。看護学校の外国人留学生の医療機関でのアルバイトも2016年10月から「緩和」され可能になっています。進歩的な側面と、格差と貧困を深化させる反動的な側面が混在する複雑なテーマですが、それは脇に置いて実務的なお答えをします。
外国人留学生のアルバイト採用にあたってのポイントは次の点だと思います。
 (1)「資格外活動許可」の確認と就労可能時間の制限の厳守。
 (2)その留学生が居住者か非居住者で源泉徴収の取扱いが異なる。
 (3)租税条約によって、手続きをすれば、所得税住民税が免除される場合がある。
 (4)所得控除で「勤労学生控除」が適用できる場合がある。

解説
(1)「資格外活動許可」の確認と就労可能時間の制限の厳守。
 留学という在留資格は、就労できない在留資格ですが、「資格外活動許可」を受けることによってアルバイトをすることが認められますので、許可の確認が必要です。
 ただし、留学中の学費や諸経費を賄うために、勉学等を妨げない範囲での就労なので、就労時間に制限があり、1週28時間まで(夏休等は1日8時間まで)とされています。雇用した事業主はハローワークに「外国人雇用状況届出書」を提出しなければなりません。
 この就労可能時間には残業時間も含まれることに留意してください。また、アルバイトの掛け持ちをしていれば全ての合計時間になるので、掛け持ちの有無を確認することに留意が必要です。
 これらに違反した場合、留学生は不法就労となり、事業主は不法就労助長罪となり得ますので、労働局HPなどを参照して労務管理のマニュアルを整備してください。

(2)その留学生が居住者か非居住者かで源泉徴収の取扱いが異なる。
 外国人留学生に支払うアルバイト代は、下記(3)の場合を除いて、所得税(復興所得税含む)の源泉徴収が必要ですが、居住者か非居住者かで取扱いが異なります。
 居住者であれば日本人と同じ取扱い(「扶養控除等申告書」の提出を受けて甲欄を適用するか、乙欄を適用するか。住民税の取扱いも同じ。)ですが、非居住者であれば一律20.42%の源泉徴収になります。
 この判定は来日時点で行います。日本における在留期間が契約等により1年未満であることが明らかな場合を除いて、居住者と推定されます。(所令14-1-1、所基通3-2、同3-3)
例えば、半年限りの交換留学なら非居住者、4年間の在学の最後の半年でアルバイトを始めても居住者ということです。

(3)租税条約によって、手続きをすれば、所得税住民税が免除される場合がある。
 日本と租税条約を締結している外国から来日した留学生は、租税条約の学生条項の内容によって税金が免除される場合があります。ただし、租税条約に規定される“学生”は、大学や高専等の学校教育法第1条の学校の学生なので、専門学校や日本語学校等は免除対象になりません。
 免除の適用を受ける場合は、入国日以後最初の給与等の支払いを受ける前日までに、「租税条約に関する届出書(在学証明等を添付)」を、給与等の支払者を経由して、給与等の支払者の所轄税務署長に提出することになります。届出書の提出をしていなかった場合でも、5年以内であれば源泉徴収された税金の還付を受けることができます。なお、住民税についても同様の手続きが必要です。
 厄介なのは租税条約の内容です。その留学生の出身が締結国なのかを調べるのもそうですが、内容が国によって様々です。外務省のHPで調べられるのですが、アジアと中南米ですと、例えば中国は免除され、タイは5年間免除されます。その他概略で例示すると次のような具合です。
・免除されるが期間と金額制限がある
 5年間 韓国、フィリピン、インドネシア
 3年間 ブラジル、パキスタン
・租税条約の学生条項はあるが免除されない
 ベトナム、インド、シンガポール
・租税条約が無く免除されない
 ネパール、ペルー

※具体的内容は微妙に異なるので実務に際してはご注意ください。現実的には税務署に問い合わせるのが近道だと思われます。

(4)所得控除で「勤労学生控除」が適用できる場合がある。
 外国人留学生が非居住者であれば原則として源泉徴収で完結します。居住者の場合は暦年で所得計算が必用になり、勤労学生控除の対象であれば27万円が控除できます。
留学生なので給与所得だけと推察されますが、その場合は給与の収入が年130万円以下であれば適用となり、給与所得控除65万円+基礎控除38万円+勤労学生控除27万円(=控除合計130万円)で非課税になります。
 源泉徴収が甲欄の場合は扶養控除等申告書に記載し、扶養親族等の数を調整して月額表で計算して、最終は年末調整で清算します。乙欄の場合は確定申告で勤労学生控除を適用することになります。
 ただし、勤労学生控除の対象は、大学や高専等の学校教育法第1条の学校の学生なので、専門学校や日本語学校等は適用対象になりません。分からない時は学校の窓口に問い合わせるのが早道のようです。
 なお、これらの要件の判定は12月31日の現況で行います。詳しくは国税庁HPのタックスアンサー等を参照してください。

(5)その他
 退職時は特に慎重な実務が求められます。帰国するなど、その後の連絡が取れなくなる可能性が非常に高いからです。年末調整や住民税の一括徴収などを抜かりなく行うようにしてください。

 

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