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区分記載請求書等の記載事項について

Q:当法人は病院等を中心に医療活動をおこなう法人です。2019年10月1日から消費税率の引き上げが予定されていますが、予定通り引上げが実施された場合、仕入税額控除制度は軽減税率制度の実施に伴い、現行の請求書等保存方式から2023年9月30日までは区分記載請求書等保存方式となると聞きました。その場合、当法人が発行する健診等課税取引に係る請求書や領収書などは10%と8%の区分を設けたものに変更しなければならないのでしょうか。

 

A:ご質問のあった法人は医療活動をおこなう法人であり、課税売上について基本的には軽減税率の対象となる取引はないと思われます。発行する請求書等に軽減税率対象取引がなければ、標準税率(10%)対象の金額が記載されていれば良いことになっています。特段、合計欄等に「8%対象0円」等といった記載は必要なく税率が10%対応になっていれば、従来の請求書等を使用しても差し支えありません。

【解説】

 2019年10月1日から予定されている消費税引き上げ時の軽減税率制度の実施に伴い、消費税の税率が軽減税率(8%)と標準税率(10%)の複数税率になり、事業者は発行する請求書等について、税率ごとに区分して合計した金額を記載することになります。

 ただし、区分記載請求書等保存方式による場合、取引に軽減税率の対象となるものがない場合は、標準税率(10%)の対象となる金額を記載していれば、「8%対象0円」等といった軽減税率(8%)部分の記載は要しないとされています。ご質問のあったケースが当該ケースに該当します。

 なお、医療活動をおこなう法人における軽減税率(8%)の課税売上・仕入れに該当すると想定される具体的な例示は以下のとおりです。

・課税売上

 該当する取引はほとんどなく、売店における飲食料品の販売や健診等における大腸内視鏡を実施する場合の「検査食セット」の提供など

・課税仕入れ

①会議等の際に提供される弁当代

②新聞代(週2回以上発行されるもの限る。)

③職場等で提供するために購入する飲料水代や軽食代

④給食材料の仕入※

※(1)みりんや料理酒については、酒税法に規定する酒類に該当するものは軽減税率の対象となりません。ただし、酒税法に規定する酒類に該当しないみりん風調味料(アルコール度数が一度未満のもの)は、「飲食料品」に該当するので、軽減税率の対象となります。

※(2)栄養剤や栄養ドリンクのうち、「医薬品」や「医薬部外品」に該当するものは軽減税率の対象外となりますが、「医薬品」や「医薬部外品」に該当しない栄養ドリンク等は「食品」に該当となるため、軽減税率の対象となるので、留意が必要です。

 

 上記例示ですべてカバーされているわけではありませんが、以上のような取引を領収書等から判断し、区分経理をおこなうためにも、区分記載請求書等の作成が求められています。

 

 一方で、2023年10月1日から、より法的拘束力の強い適格請求書等保存方式の導入が予定されており、請求書への税率ごとの消費税額及び適用税率の記載要件がさらに加わります。合計欄等に「8%対象0円」等といった記載が必要かどうかは具体的にまだはっきりしませんが、軽減税率の対象取引がない場合でも、「8%対象0円」等といった記載を制度上強いられることになると対応せざるを得ません。

 

 今回のご質問のケースでは、軽減税率対象取引がないことを前提としていますが、医療活動をおこなう法人であっても売店等をおこなっていれば区分記載請求書等導入時点においても、税率ごとに区分した請求書等発行の対応が求められる場合もあると想定されます。

 消費税制度はそもそも矛盾を多く抱える制度であり、増税に伴う経済的な負担は計り知れないものであるにもかかわらず、働く現場等に対しても対応のための負担を強いるなどあってはならないことであり、消費税増税阻止を強く訴え続けていかなくてはなりません。

 

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