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前払する保守料に含まれる10%消費税の処理方法 

Q

 9月決算法人ですが、毎年8月に9月から翌年8月までの1年分の保守料を前払しています。消費税の増税で、10月分以降は10%の消費税で計算された請求書になっています。会計ソフトは、税込金額で入力して自動で税抜きする設定になっていますが、10%の税率は使えません。この10%の消費税の会計処理をどうすれば良いかが分かりません。 

 

A

令和1(2019年)年10月分以降の、消費税率が10%となる家賃や保守料の前払を、短期前払費用として損金処理する場合の会計処理と消費税の申告(仕入税額控除)の方法は2種類あります。保守料の1年分前払等の他に、当月支払う翌月分の家賃等も対象になりますので、実務面を考慮して、採用する方法をご検討下さい。(参照:H30年10月の国税庁消費税室「平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に関する経過措置の取扱いQ&A」問7及び問4)

 なお、下記の例は税抜経理で会計ソフトで自動税抜を採用している場合です。また、イメージであり、具体的な会計ソフトの使い方はメーカーと確認して下さい。

 

原則的な方法
 10%消費税相当額を仮払金として翌期に繰り越して、翌期の消費税の申告で仕入税額控除を行う。

 

仕訳入力例:9月決算法人が、10月分家賃110,000円(税込)を9月に支払った。
 

 ・支払時(課税仕入、外税入力)

   地代家賃 / (諸口) 100,000

   仮払金  / (諸口) 10,000

   (諸口) /  預金  110,000

 

 ・翌期(不課税)

   仮払消費税/ 仮払金 10,000  

 

留意点
 ・翌期の仮払金から仮払消費税への振替は1件ずつ仕訳する必要はなく、当該仮払金の残高で良いですが、一定のリストを作成する必要があります。当期も翌期も、損益科目の金額と仮払消費税の金額の対応関係に、10%分を仮払金で処理した部分のズレが生じます。消費税の点検では、そのズレを考慮してチェックするために、対応する損益科目ごとの一覧が必要になると思われます。仮払金に補助科目を設定(又は、科目を新設)し、或いは固定摘要を作る等をして、元帳等のデータを活用するのが効率的だと思われます。

 

 ・受取家賃等を10%で収入し、益金処理する場合も同様で、仮受金等の科目で繰り越すことになります。

 

例外的な方法
 当期は10%部分も含めて普段通りに税率8%として処理をして、翌期に10%部分について8%の税率による仕入対価の返還を受けたものとして処理した上で、改めて10%で仕入れたものとして処理する。

 

仕訳入力例:9月決算法人が、10月分家賃110,000円(税込)を9月に支払った。
 

・支払時(課税仕入、税込入力)

  地代家賃(8%) /  預金 110,000  (→地代家賃101,852、仮払消費税8,148)

 

・翌期(課税仕入、税込入力)

  (諸口)    / 地代家賃(8%)110,000 (→地代家賃△101,852、仮払消費税△8,148)

  地代家賃(10%) / (諸口)  110,000 (→地代家賃100,000、仮払消費税10,000)

   ※合計すると、仮払消費税/地代家賃1,852。支払時に8%で税抜処理したため、過大だった地代家賃と、過小だった仮払消費税を翌期で調整する意味。   

 

留意点
・地代家賃などの損益科目は、税率2%相当分が当期は過大に、翌期は過小に計上されます。

税務上認められた処理で、影響額も小さいと推察されますので、会計上も容認されると思われます。

 

・翌期に調整を行うために、対応する損益科目ごとの一覧リストを作成する必要があります。補助科目を作る、或いは固定摘要を作る等をして、元帳のデータを活用して作成することが効率的だと思われます。(仮払金等に補助科目を作り、一旦そこに計上して振り替えることも考えられます。仮払金等の借方貸方発生額が膨らんでしまうことに留意して下さい。)

 

処理方法の検討にあたって
 上記のどちらかの方法によることになりますが、事業所数が多い法人等では実務的に煩雑で、決算実務の遅延等の影響が危惧されます。実務的には2.の方法を採用する方が無難なように思われます。

 なお、9月決算法人において、2.を採用した場合では、支払をした年度に費用が多く計上され、1.を採用した場合と比べると課税所得が少なくなりますが、翌期には費用戻しが生じるため、逆に課税所得は大きくなり、2年間を通算すればどちらも同じ課税所得となります。この場合、2.を採用した場合であっても法人税の課税所得の調整は不要とされていますのでご留意下さい。

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