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<消費税増税前に期末決算を迎える法人が支払った短期前払費用に係る消費税の仕入税額控除に留意>

Q 当法人は10月末決算(消費税は原則課税)ですが、節税策として、事務所家賃を前払いしています。今期も、翌期1年分(平成25年11月分~平成26年10月分)の家賃を平成25年10月31日に前払いしますが、家主との契約に基づいて、平成26年4月分以降は消費税率8%で計算して支払うことになりました。今期の消費税の確定申告での仕入税額控除は、平成26年4月分以降の家賃の部分については8%で計算できるのでしょうか。それとも、8%で支払っているのに5%で計算するのでしょうか。

 

A  消費税増税の経過措置によって消費税率が5%になるものについては、法人税で短期前払費用を適用している場合は、従来どおり、支払時での課税仕入として算定することが認められます。しかし、経過措置の適用にならず、短期前払費用のうちに8%で計算される部分がある場合には、法人税では全額損金算入されますが、消費税は、翌期に対応する部分の仮払消費税を繰り延べる(仕入税額控除を翌期に行う)ことになると思われます。なぜなら、期末時点で施行されている消費税率は5%(8%は未施行)なので、8%で仕入税額控除を計算することはできないため、特例を適用できず、消費税の原則に従って、実際に資産の譲渡等が行われた課税期間で仕入税額控除を行うことになると思われるからです。ご質問のケースでは、翌期1年分の家賃に係る仮払消費税を繰り延べることになると思われます。(明確な通達や回答等は確認できていませんが、理屈の上では、このように思われます。)

 

 

解説

 

 消費税の仕入税額控除は、原則として、実際の資産の引き渡しやサービスの提供があった課税期間で行います。特例として、法人税の短期前払費用の損金算入(法基通2-2-14)を適用している場合は、その短期前払費用に係る仕入税額控除を、その支払った課税期間で行うことが認められています(消基通11-3-8)。

 ご質問のケースのように、施行中の消費税率が5%のうちに期末(課税期間の終了)を迎え、法人税の短期前払費用を適用するもののうちに、消費税率8%で対価を支払った部分がある場合には、消費税について、仕入税額控除の算定に留意が必要です。

 

 

(1)税抜経理の場合

 

 今期末で施行中の消費税率は5%であるため、仕入税額控除について8%を適用することはできず、短期前払費用に係る仮払消費税(5%と8%が混在)を、一括して今期の仕入税額控除とすることはできないと思われます。仮に5%で一括するとしたら、仕入税額控除を適切に行えませんし、法人税の課税所得も歪んでしまいます。一括して仕入税額控除を認める特例が適用できませんから、原則の考え方に従って、翌期に対応する部分に係る仮払消費税を繰り延べて(前払いをした消費税と考えて)、翌期の消費税の申告において仕入税額控除を行うことになると思われます。

 注意点は、翌期に対応する部分ということです。8%部分だけを繰り延べるということではありません。

 以下の設例は、雑誌を10月号から年間契約し、平成25年10月に1年分を支払い、法人税の短期前払費用を適用した場合です。決算月に応じた仮払消費税の繰り延べのイメージです。

 

【1】平成26年3月決算の法人

・10月分~3月分(5%消費税)→当期の仕入税額控除にする。(ア)

・4月分~9月分(8%消費税)→当期は仕入税額控除せず、残高をBSに残して繰り延べる。翌期の申告で仕入税額控除をする。(イ)

 

【2】平成25年10月決算の法人

・10月分(5%消費税)→ (ア)

・11月分~3月分(5%消費税)→ (イ)

 ※5%だが、翌期に対応する部分は繰り延べる。

・4月分~9月分(8%消費税)→ (イ)

 

【3】平成26年5月決算の法人

・10月分~3月分(5%消費税)→ (ア)

・4月分~5月分(8%消費税)→ (ア)

・6月分~9月分(8%消費税)→ (ア)

※期末時点の施行中の消費税率は8%であり、特例の適用ができ、繰り延べる必要がない。

 

 なお、会計上は、通常であれば残高がゼロとなるBSの仮払消費税に残高が残ります。誤解を生じるようであれば、仮払金に振り替えるか、前払消費税などの科目を作成するなどが考えられます。また、法人税の繰延消費税とは異なりますので、混同しないようにしてください。

 

 

(2)税込経理で消費税が原則課税の場合

 

 考え方は上記(1)と同じで、翌期に対応する部分を、当期の仕入税額控除の計算から除外し、翌期の計算に含めることになると思います。

 しかし、税込経理なので、BSの仮払消費税などで繰り延べることができず、PLの経費に含まれてしまいます。そのため、法人税の課税所得の計算上での調整が必要になると思われます。

 税抜経理であれば繰り延べることとなる、翌期に対応する部分の消費税額相当を、法人税の別表で「前払消費税否認」などとして加算留保し、翌期に減算することになると思われます。

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