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「非営利・協同」の組織における監事の役割

Q 今年の6月より、ある医療生協の監事に就任しました。「非営利・協同」の組織における監事の役割とはどのようなものでしょうか。

 

A 監事の職務内容や人数、任期等はそれぞれ個別の根拠法によって定められており、法人の種類によって異なりますが、会社法の規程が準用されるケースが増加しているようです。従って法制度上の監事(監査役)の定めは営利企業と「非営利・協同」の組織で大差はありませんが、その役割は本質的に異なるものと考えられます。

 

 

1.営利企業の監査との共通点

 

 例えば医療生協の場合はその機関設計については消費生活協同組合法(以下「生協法」)に準拠することになります。この生協法、2007年に全面的な改訂が行われ、監事の権限の強化、独立性の保障等がはかられています。具体的には理事会への報告義務や、監事による理事の行為の差止請求等が明文化されましたが、これらは会社法の規定を準用したものです。

 その他の様々な法人形態においても監事の制度が取り入れられていますが、概ね会社法の規程を準用する場合が多くなっています(ただし細かな点で会社法と異なる場合もありますので、ご自身の監査する法人の準拠する法令を参照ください)。従って、業務監査と会計監査のあり方を中心とした、法制度上の監事(監査役)の定めはたとえそれが「非営利・協同」を理念に掲げる法人であっても大差はないという状況です。

 

 

2.営利企業の監査との相違点

 

 しかし、誰のために、何のために行われる監査か、という観点からは営利企業の監査と「非営利・協同」の組織の監査は本質的に異なります。

 

 営利企業の監査は、一言で言えば企業の所有者である株主の利益を保護するために行われるものであり、様々な定めは、組織やその構成員に対する不信感から要請されるものです。

 それに対して「非営利・協同」の組織の監査は、社会的にあるいは組織の属する地域社会に向けて、自らの組織が民主的な管理運営の実現に向けて不断の努力を傾けていることを、主体的に検証・確認・証明するための仕組として捉えるべきものです。組織の役職員や地域及び組合員等にむけて、組織の信頼性を担保するためのチェックの仕組を整備・運用しているとことを自ら訴明する仕組ということです。

 「非営利・協同」の組織においては、「協同」の取組が不十分になればなるほど経営の状況も不順なものとなっていく場合が多く、そのような状況を早期に認識・是正し、また主体的にそのことを発信していくための取組として、監事の役割は非常に重要なものと言えます。

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