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公益法人が賃貸していた土地・建物の売却

Q 当会は公益法人です。この度、20年間にわたって賃貸していた土地・建物を売却することになりました。相当古く取得した不動産であるため簿価が少額で、かなりの売却益が生じる予定です。これについて、法人税の取り扱いを教えてください。

 

A 公益法人であっても、収益事業に使っていた土地・建物などの固定資産を売却した場合の売却益は、収益事業に付随する行為の収益であるため、原則として法人税が課されることになります。ただし、相当期間(おおむね10年以上)にわたって保有していた土地・建物等の固定資産の売却益は、収益事業の損益に含めないことができるとされています。

 したがって、貴会については売却した土地・建物を20年間以上にわたって保有していたということなので、売却益に対して法人税は課されません。

 

 

〈解説〉

 

 公益法人等については、法人税法に定める34の収益事業をおこなっている場合に、その収益事業に関する所得に対してのみ法人税が課税されます。(ここでいう収益事業とは、あくまで法人税法で定めるものであり、公益認定法でいうところの収益事業とは異なりますので注意してください。)

 不動産の賃貸事業は、収益事業に該当しますので、公益法人等であっても基本的にはこの賃貸事業から生じた所得について法人税の申告をおこない、納税をおこなう必要があります。

 また、法人税基本通達15-2-10では「公益法人等又は人格のない社団等が収益事業に属する固定資産につき譲渡、除却その他の処分をした場合におけるその処分をしたことによる損益は、原則として収益事業に係る損益となる」とされています。したがって、通常であれば、賃貸事業に使っていた土地・建物を売却し、そこで売却益が生じたのであれば、この売却益も含めて法人税の所得計算をおこなうことになります。

ただし、同通達では次の2つに該当する場合の損益は、収益事業に係る損益に含めないことができるとされています。

 

 

(1) 相当期間にわたり固定資産として保有していた借地権を含む土地、建物または構築物につき譲渡、除却その他の処分をした場合におけるその処分をしたことによる損益。

 ※「相当期間」とは、一般におおむね10年以上とされています。

 

(2) (1)のほか、収益事業の全部または一部を廃止してその廃止にかかる事業に属する固定資産につき譲渡、除却その他の処分をした場合におけるその処分をしたことによる損益。

 

 

 したがって、公益法人等では、これら上記2つに該当する場合の固定資産売却益に対しては法人税が課税されることはありません。なお、公益法人等とは、公益認定を受けた公益法人だけでなく、非営利型の一般法人、社会医療法人、労働組合なども該当します。まれに、こうした法人において、課税所得に含める必要のない不動産の売却益も課税対象として申告してしまっている例を見受けますので、十分注意してください。

 

 なお、当該通達はあくまで「できる」規定であるため、収益事業に使っている資産から売却損や除却損が生じた場合には所得計算上も考慮した方が税額を低く抑えられ、有利となります。

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