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絵画(美術品等)の減価償却の取り扱いの改正

Q 3月決算の医療法人の経理を担当していますが、当法人の固定資産台帳の器具備品に絵画が2点あり「非償却」となっています。どちらも昭和の時代に入院されていた画家から寄贈されたものだそうで、その画家の個展での値札の金額で受贈益を計上したそうです。

 1点(A)は60万円で病院の待合室に飾られています。もう1点(B)は25万円で、病院の改修工事の際に取り外して、現在は倉庫に保管されています。

 最近、こういった絵画も減価償却ができ損金になると聞きました。可能であれば償却したいと思いますが、どうでしょうか。 

 

A 美術品等が減価償却資産に該当するかどうかの判定についての改正があり、平成27年1月1日以後に取得をする美術品等について適用されます。また、過去に取得して非償却としていたものでも償却が認められる経過措置が置かれています。

 

 ご質問のケースは改正後の判定基準によれば減価償却資産に該当するものと思われ、経過措置によって「適用初年度(平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度=貴法人は平成27年4月~平成28年3月の期)」で減価償却資産として取り扱えば、その処理が認められます。償却方法は固定資産台帳の取得日時点の方法で、耐用年数表の器具備品「11.前掲以外-その他-その他」の5年が適当と思われます。また、貴法人が中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)の特例の適用があれば、25万円(B)について「適用初年度」でこれを適用することも可能です。

 ただし、留意が必要なのは、25万円(B)は倉庫に保管されており事業の用に供されていないことです。経過措置は「適用初年度」において事業の用に供しているものに限られますので、償却したいのであれば待合室に掲示する等が必要でしょう。

なお、減価償却資産とした場合、償却資産税の対象になります。詳細は未確認ですが、貴法人の場合は平成28年1月1日現在保有の償却資産として申告することになると思われます。貴法人に非課税等の適用があれば、非課税等の用途とする工夫もあり得ると思われます。

 

 

〈解説〉

 

 美術品等の取り扱いについて定めた法人税基本通達7-1-1(所得税は2-14)が平成26年12月に改正されました。

 美術品等は「価値の減少しない資産」と考える税務当局の基本スタンスは変わっておらず、「価値が減少しない資産」であることの認定がどのように担保されるのか等の不明瞭さは引き続きますが、金額基準が1点100万円以上に改正されるなど実情を一定考慮したものと思われます。

 従前の通達で減価償却が可能とされていたものは、美術関係の年鑑等に登載されていない作者で1点20万円未満といった概略でした。

 今回の改正で、平成27年1月1日以後に取得する美術品等は下記概略のように減価償却資産に該当するかどうかを判定することになります。

 また、同日前(過去)に取得した美術品等で今回改正後の基準で判定して減価償却資産に該当する場合は次のような取り扱いになります。

 

・原則は従前どおり非償却とされている。

・経過的取り扱いとして、平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度(「適用初年度」)において事業の用に供しているものに限り、「適用初年度」から減価償却資産に該当するものとしている場合には、これを認めるものとされている。また、中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)の特例の適用についても「適用初年度」において可能とされている。

 

※上記の経過的取り扱いは「適用初年度」に限っての選択であって、失念した場合は減価償却の機会を失うものと思われるので留意が必要。

 

 

<判定の概略>

 

・まず、「歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの(例として古美術品や古文書等)」は金額に関係なく「価値の減少しない資産」とします。

 

・次に(1)1点100万円以上のものを「価値の減少しない資産」とし、(2)1点100万円未満のものを減価償却資産とします。

 

・その上で(1)1点100万円以上であっても明らかに減価するものの場合は減価償却資産とします。例示として、移設困難で転用を仮定した場合に市場価値が見込まれないロビーの装飾用のもの等があげられています。(例示が1つだけなので分かりませんが、設置等したことによって将来売却しようと思っても、それなりの値段で買い手がつかないと想定される場合だと思われます。経過的取り扱いについて、20年前に取得して展示した200万円の絵画が、手入れが悪くて現在では買い手がつかないといったようなケースでは、これを減価償却資産とすることには無理があるように思われます。)

 

・また、(2)1点100万円未満であっても「価値が減少しないことが明らかなもの」は減価償却資産から除くことになります。(具体例は思い当たりません。)

 

参照:法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)平成26年12月19日

https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/kaisei/141200/pdf/01.pdf

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