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労働組合の共済事業は保険業法適用となるのですか

Q 私たちは組合員数900名程度の規模の労働組合です。組合員を対象として共済事業をおこなっていますが、保険業法の適用や責任準備金等を積み立てる必要があるのでしょうか? 

 

A  保険業法は、文字どおり生保会社、損保会社等の「保険業」をおこなう事業者を対象としていますが、労働組合内の共済や1,000名以下を相手方とするものなど、一定の要件に該当するものは適用除外となっています。したがって、貴組合について保険業法は適用されません。

 責任準備金等の積み立ても法的に要請されるものではありませんが、900名と一定の規模がありますので、将来の給付に備えた一定の蓄積(準備金)は必要と考えます。

 

 

〈解説〉

 

 保険業法は「保険業」をおこなうものをその対象としていますが、法制度上は「共済事業」についても「保険業」と同列とみなし、基本的に法規制の対象範囲とされました。

 本来は、労働組合等における「共済事業」は営利を目的としているわけではなく、助け合い・支え合いの制度であるため、こうした保険会社がおこなうものと同一として一律に法規制をかけることは適当ではありません。背景には、「共済事業」にも強い規制をかけ、アメリカ等の民間保険会社がさらなる市場拡大を画策していることがあります。TPPなどを含めてこうした傾向はより強まるおそれもあり、今後の動向を注視しながら、相互扶助としての共済制度を守る世論を広げていくことが重要です。

 

 現行の保険業法では、例えば以下のような共済事業は適用除外となっています。

 

 ・生協や事業協同組合等でおこなう「制度共済」

  →ただし、生協法や中小企業等協同組合法において共済事業に関する諸規制がある。

 ・労働組合が、組合員や家族を対象としておこなう共済

 ・一つの企業内でおこなう共済

 ・1,000人以下の者を相手方とするもの

 

 その他、学校内や町内会等でおこなう共済等についても、保険業法は適用されません。

 

 なお、保険業法の規制を受けない助け合いの共済だからといって、生じた剰余金等をすべて還元してしまっては、将来的に何らかの事由で多額の給付金を支払う必要が生じたときに困ってしまいます。それこそ、相互扶助としての共済事業に対する信頼性を損なってしまいます。

 したがって、各共済ごとに一定のルールにもとづいて将来生じる可能性のある多額の給付に備えた積立をおこなっていくことが適切です。こうした積立金を「責任準備金」といい、保険業法や各種「制度共済」においてその積立ルールが規定されています。

 もちろん、労働組合などでおこなう共済はこれらの法令に縛られるわけではないため、加入者構成や給付状況等にもとづき、内部的によく検討すればよいことです。ただし、今後の法規制強化の可能性を考えると、比較的規模の大きい共済などはこうした法令で定められた「責任準備金」を一定参考にした積立ルールを検討しておくことも重要と考えられます。

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