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補助金に対する貸倒引当金

Q 当医療生協では、法人税法の定めに則って期末に一括評価金銭債権に対する貸倒引当金を計上しています。当期新たに購入した医療機器に対し、国からの補助金3百万円の交付が確実となりましたが、入金は年度をまたぐ見通しです。会計上未収金計上をおこないましたが、この債権を一括評価金銭債権に含めてもよいのでしょうか。

 

A 基本的には会計上・税務上一括評価の債権に含めてよいものと解します。

 

 

【解説】

 

1.会計上の取扱

 

 会計基準上の引当金の計上要件は企業会計原則注解18に示されており、以下の4つの要件を満たす場合に、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰り入れることとされています。

 

・将来の特定の費用又は損失である

・その発生が当期以前の事象に起因する

・発生の可能性が高い

・その金額を合理的に見積ることができる

 

 本来は、組織の所有するすべての債権について上記の4要件に照らして貸倒見積高を算定し、引当計上することが厳密な処理なのでしょうが、実務上現実的ではありません。そこで、「金融商品に関する会計基準」において、債権を以下の3つに区分し、それぞれに対応した計算方法を用いて貸倒見積高を算定することが示されています。

 

・一般債権(経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権)

 →債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実積率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する方法。

 

・貸倒懸念債権(経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権)

 →債権額から担保の処分見込額及び補償による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態および経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法。

   又は

  キャッシュ・フローを割引いて算定する方法(詳細は省略)。

 

・破産更生債権(経営破綻又は実質的に経営破たんに陥っている債務者に対する債権)

 →債権額から担保の処分見込額及び補償による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とする方法。

 

 つまり、特別の検討を要する貸し倒れのリスクが高い債権についてのみ個別に貸倒見積高を算定し、そのほかの債権については貸倒実積率等の合理的な基準によってまとめて貸倒見積高を算定するということです。

 

2.税法上の取扱

 

 法人税法上は、法人が貸倒等による損失の見込額として損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額のうち、貸倒引当金の繰入限度額に達するまでの金額を損金算入することができます。また貸倒引当金の繰入限度額は、個別評価金銭債権と一括評価金銭債権に区分して計算することとされています(法人税法52条)。

 

 ここで、法人税法上の一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲に関しては、「一括評価金銭債権に当たるもの」と「一括評価金銭債権に当たらないもの」が法人税法基本通達に例示されています(法基通11-2-16~20。タックスアンサーをご参照ください→No.5500)。

 ここには国等からの補助金に関する規程がなく、一定解釈の余地があります。しかし、「一括評価金銭債権に当たるもの」として法基通11-2-16 (1)(タックスアンサーの1(2))に「未収の譲渡代金、未収加工料、未収請負金、未収手数料、未収保管料、未収地代家賃等又は貸付金の未収利子で、益金の額に算入されたもの」という記載があり、言い換えれば「未収金のうち益金の額に算入されたもの」は「一括評価金銭債権に当たる」と読むことができます。医療生協に対する補助金は益金算入されますから、この規定を素直に読めば本件の未収金を一括評価金銭債権に含めることは認められると解します。また「一括評価金銭債権に当たらないもの」に例示されていないことも(消極的ではありますが)根拠となりうるでしょう。

 

3.まとめ

 

 国に対する未収金は貸倒れるリスクが低く、引当金計上の4要件のうちの3つ目、「発生の可能性が高い」を満たさない、という考え方もあり得ますが、金融商品会計基準からは会計上一般債権に含めて引当計上することが適当であると考えます。また、条文や通達を素直に読めば、税法上の一括評価金銭債権に含めることも可能であると思われます。

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