「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」について
Q 消費税の税率アップを前に、軽減税率導入が決まりました。その中で「適格請求書等 保存方式(インボイス制度)」がH33年4月より導入がされるようですが、どういうもの でしょうか。
A 平易に説明すれば。消費税は、売上の消費税額から仕入の消費税額を控除して計算し、 事業者が納める税です。
「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」は、原則として「適格請求書発行事業者」から交付を受けた「適格請求書」等を保存し、それらのみを仕入税額控除の対象とするものです。
「インボイス」は、送り状・納品書という意味の英単語(invoice)で、「税額控除票」 とも呼ばれるもので、適用税率や税額などの記載が義務づけられる書類をいいます。
欧州各国で導入されています。
参考:財務省HP(http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/index.htm)
●「インボイス制度」導入による問題点
・免税業書の取引からの排除
「適格請求書」を交付する場合、「適格請求書発行事業者」として登録が必要であり、 登録事業者のみが「適格請求書」等を発行することができます。登録事業者は課税事業 者となります。
つまり、免税事業者は「適格請求書」等を発行できないため、そこからの仕入は控除 の対象となりません。よって、「適格請求書発行事業者」の取引が有利となり、課税仕 入れが減る免税事業者は取引から排除されていく可能性があります。
改正法には経過措置があり、免税事業者でも一部仕入控除が認められるようですが、 免税業者は取引を続けるため、登録申請を行い課税事業者となることの判断が生じる可 能性もあります。どちらが事業者にとってよいか、慎重に検討することが求められそう です。
・正確に行うための手間がかかる(コスト等)
インボイス制度となれば、適用税率や税額などを記載する必要が出てきます。複数税 率を前提に考えれば、現在の請求書システムを入れ替えるなど、手間やコストもこれま で以上にかかると思われ、とりわけ中小事業者に負担を強いる状況が考えられます。
●終わりに
今回の質問は消費税制のシステムに関わるものですが、免税事業者を含め登録事業者とし、課税事業者とする方向を想定しているのではないでしょうか。
消費税は、本質的に所得の少ない人にとって税の負担が大きい、「逆進性」を含むところに論点があります。所得格差が広がるなかで、法人税減税による税収不足を消費税で補おうとするところは本末転倒のように思います。
消費税制については、これからも注視していき、国民の負担増とならないような取組、 議論が必要であると考えます。
(田中淳)