社会福祉法人に対する個人寄附金の税法上のメリット
Q:私共は社会福祉法人ですが、個人の方から寄附金を受領した場合、寄付をされた個人の方に税法上のメリットはあるでしょうか。また、税法上のメリットがある場合、当法人側で必要な手続きはあるのでしょうか。
A:社会福祉法人に対する寄附金については、寄附をした個人の方に対して一定の控除制度が定められています。
以下に所得税について簡単にその内容をまとめています。この他に自治体からの条例指定を受けた社会福祉法人に対して寄附をした場合、住民税においても税額控除の制度が設けられていますが、ここでは割愛します。
社会福祉法人側においても当該制度を活用するための必要な手続きがありますので、併せてその内容をまとめています。
【解説】
1.個人の方が寄附をした場合の取り扱い
個人が社会福祉法人に対して寄附をした場合、所得税法上、一定の優遇制度が設けられています。その制度とは所得控除と税額控除というもので、所得控除は従来からある制度ですが、税額控除は平成23年の税制改正により制定された制度です。これらの制度は個人が確定申告を行うことによりいずれか一方の制度の適用を受けることができます。
〈所得控除〉
所得控除とは所得金額から寄附金のうち一定の金額を控除する制度です。控除できる金額は以下の算式により求めることができます。
・所得控除額=その年中に支払った寄附金の額-2,000円
※ただし、控除できるのは所得金額の40%が上限となります。
〈税額控除〉
税額控除とは算出した所得税額から一定の金額を控除する制度です。控除できる金額は以下の算式により求めることができます。
・税額控除額=(税額控除対象法人への寄附金額-2,000円)×40%
※ただし、控除できるのは所得税額の25%が上限となります。
〈所得控除と税額控除の有利選択〉
・現行の所得税法では所得1,800万円未満の人は所得税の税率が5%~33%であるため、所得控除よりも税額控除を選択したほうが有利です。
・所得が1,800万円以上4,000万円未満の人は所得税の税率が40%であるため、どちらの制度を選択しても違いがありません。ただし、税額控除は所得税額の25%が控除限度額となっているため、一定多額の寄附をしている場合は所得控除のほうが有利となる場合があります。
2.社会福祉法人側の手続き
先に示した税額控除制度は寄附を受けた社会福祉法人が税額控除対象法人に該当しなければ寄附をした個人においてその制度の適用を受けることができません。ただし、所得控除については寄附を受けた社会福祉法人が税額控除対象法人でなくてもその制度の適用を受けることができます。
〈税額控除対象法人になるには〉
(1)所轄庁からの証明が必要
税額控除対象法人になるには社会福祉法人認可を受けた所轄庁に対して申請し、租税特別措置法等に定められている要件を満たしている旨の証明を受ける必要があります。
以下の2つの要件のうち、いずれか1つを満たしていれば証明を受けることができます。証明の有効期間は5年間です。
・要件の適合を判断する「実績判定期間」は、5年間
実績判定期間は直前に終了した事業年度から遡って5年間
※設立後5年に満たない法人は設立の日から直前に終了した事業年度終了日(設立から1年以上)までが実績判定期間となります。
(要件1)3,000円以上の寄附金を支出した者(判定基準寄附者数)が、平均して年に100人以上いること
※私共が関与するクライアントにはほとんど影響がないが、この間の改正により判定基準寄附者数について緩和措置が設けられている。
(要件2)経営収入金額に占める寄附金等収入額の割合が5分の1以上であること
3.新設社会福祉法人の留意点
新設社会福祉法人の場合は、寄附をした個人において税額控除の適用を受けることができないといえます。ただし、新設社会福祉法人であっても所得控除の適用は受けることができますので、全く所得税法上の優遇措置を受けることができないわけではありません。その旨をしっかり寄附をしていただいた方に説明し、理解を得る必要があるといえるでしょう。実績判定期間を確保した後、速やかに税額控除対象法人の申請することがよろしいでしょう。
以上