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公益法人等が収益事業に属する固定資産取得のために補助金を受けた場合の課税関係

Q:当法人は一般社団法人(非営利型)形態で事業をおこなっている薬局法人です。先日、当法人が所在している自治体から事前に申請していた設備投資に係る補助金の支給が決定した旨の通知を受けました。今回の補助金により取得する固定資産は、収益事業に係る固定資産として使用することになりますが、当該補助金の額は収益事業に係る益金の額に算入され、法人税等の課税対象となる理解でよろしいでしょうか。

 

A:非営利型の一般社団法人は、税法上の公益法人等に該当することになります。現行の法人税基本通達(15-2-12)によると、公益法人等が収益事業に係る固定資産の取得等のために受け取った補助金等の額は、益金の額に算入しないと定められています。

ご質問のあった今回のケースは、基本通達で求められている条件を満たしていることから、収益事業の益金の額には算入しません。したがって、法人税等の課税対象となることもありません。

 

*用語の解説

税務上の公益法人等のうち代表的なものは以下のとおりです。

・公益社団・財団法人

・一般社団・財団法人(非営利型に限る)

・社会福祉法人

・社会医療法人

・NPO法人

 

<解説>

 

1.公益法人等が受ける補助金等について

 税務上の公益法人等は、税法上限定列挙されている収益事業に該当する事業をおこなっている場合に、法人税等が課されることになります。収益事業は、「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもの」と税法上定められていますが、実務上収益事業に該当するのか判断に迷う取引に遭遇することがあります。ご質問のあった補助金等以外では寄附金も判断に迷う取引の1つかもしれません。判断に迷う寄附金ですが、公益法人等が受ける寄附金収入などは現行の収益事業課税のもとでは、課税対象としないとされています。これは収益事業に係る資産の購入または経費を支出する目的で受けたとしても、原則的には課税対象とされません。この点を踏まえて補助金等の課税関係はどうなるか(1)と(2)で確認してみましょう。

(1) 固定資産の購入または改良に充てるための補助金等

 公益法人等が、固定資産の取得や改良に充てるため、国や地方公共団体等から交付を受けた補助金等については、たとえ補助金等の対象となった固定資産を収益事業の用に供する場合であっても、税務上、収益事業に係る益金の額に算入しないことになっています。固定資産の購入または改良に充てるための補助金等は課税の対象とならず、このケースがご質問のケースに該当します。

 もともと公益法人等にとって他から受ける補助金、助成金などは、資本金・出資金のようなものであると考えられます。このような資本金・出資金について課税しないというのは、いわば資本取引に対して課税しないといった考え方によるものです。

 

(2) 収益事業に係る収入や経費を補てんするための補助金等

 収益事業に係る収入や経費を補てんするために交付を受ける補助金等については、収益事業に係る益金の額に算入します。(1)の取引とは異なり、収入や経費を補てんするための補助金等は収益事業に属する取引とされ、課税の対象となります。

 これに関しては基本通達で益金の額に算入すべき旨、定められていますので固定資産の取得等に係る取扱いと混同しないよう留意が必要です。

 

2. 「1.(1)」の補助金等によって取得した固定資産の減価償却について

 公益法人等が「1.(1)」の補助金等によって取得した固定資産の減価償却費ですが、結論からいうと取得価額の全額が減価償却費の対象となります。

 

 補助金等の収入が益金の額に算入されないことから、この補助金等に対応する固定資産の取得価額相当部分については、減価償却費は認められないのではと思われる方もいらっしゃるかもしれません。すなわち自己資金で購入した部分のみを減価償却費の対象としなくて良いのかということですが、このような対応は必要ありません。これは、「1.(1)」で触れているとおり、公益法人等が受ける固定資産購入等のための補助金等が資本取引と同様の性質ととらえられていることが理由です。生協や株式会社形態の法人でイメージしてもらうと、そもそも課税の対象でない資本金や出資金を元手に固定資産を購入したとしても、当然ながら自己資金部分と資本金・出資金部分の区分などおこなわず、全額減価償却費として処理します。当該補助金もこのような考えのもと、全額が減価償却費の対象となっています。

 

3. 補助金等の会計処理について

 公益法人等で収益事業をおこなうものは、収益事業から生ずる所得に関する経理と収益事業以外の事業から生じる所得に関する経理とをそれぞれ区分しておこなうことが税務の取り扱い上求められています。すなわち収益事業に区分された経理部分が課税の対象となることから、原則的には公益法人等が固定資産購入等に係る補助金等の額は非収益事業に係る経理区分で処理することが求められます。ただし、実務上は個別の諸事情により申告調整で対応する場合も想定されますので、実際はそれぞれの法人の実情に合わせて判断していくことになるでしょう。

 

<最後に>

 この間、我々が関与しているクライアントでも株式会社または有限会社形態の法人から非営利型の一般社団法人へ移行している法人が多くなっています。従来普通法人(普通法人は寄附金や補助金等含め全部課税)だった影響もあってか、一般社団法人(非営利型)で収益事業に属する固定資産を購入するために受け取った補助金についても、そのまま収益事業に係る収益に計上し、法人税等の課税対象としなければいけないと思っている方が多くいるのではと感じていました。実際に20年度の確定申告の作業をしていたときにも、今回の質問と同様の補助金が出た一般社団法人がありましたが、当該補助金について収益事業として法人税等の申告をしないといけないと思い込んでいる方もいました。

まだまだ公益法人等に係る会計や税務の取扱いに不慣れな部分もあると想定されますが、誤った理解のもと対応をしてしまうと、余計な税金を支払ってしまうこともあり得ます。普通法人であった時と比べて会計等の仕組みが複雑で担当者の方は苦労されている思いますが、少なくとも補助金・寄附金を受けた場合は今回紹介した点を踏まえ注意して対応いただければと思います。

 

以上

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