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所得税の還付申告と申告義務

Q:私は常勤として勤務するほかに副業(非常勤)もしており、計2ヵ所の勤務先に勤務しています。このうち勤務している1ヵ所では扶養控除等申告書が提出できないことから毎月の給与は税率の高い乙欄で源泉所得税が徴収されています。そのため毎年還付申告をおこなっていたのですが、2021年分については期限内(所得税の場合は3月15日まで)に申告することができませんでした。    

 以前所得税の還付申告については源泉徴収された年の翌年以降5年以内であればいつ申告したとしても受領してもらえると聞いたことがありましたが、今回の申告により罰金等が課されることはあるのでしょうか。ちなみに扶養控除等申告書を提出していない勤務先法人から受け取った2021年の給与は年間で150万円(額面金額)であり、所得税の申告義務者に該当します。

 

A:質問者の方は、還付申告書(納税申告書)を所得税の申告期限後に提出しており、所得税の確定申告書(申告により納税が発生するもの)を提出しているわけではないことから、法的には還付申告書を提出していることになります。したがって、質問者の方が指摘されているとおり源泉徴収された年の翌年以降5年以内に還付申告書の提出であれば、罰金を課されることなく所得税は還付されることになります。

 

<解説>

 今回の質問者の方は扶養控除等申告書を提出できない勤務先があり、当該勤務先では年末調整をおこなってもらえていません。年末調整されなかった収入が150万円であり20万円を超えてしまっている(下記「1.③」に該当)ことから申告義務が生じていたことにはなりますが、申告所得税の還付申告は所得税の申告義務者に該当するかどうかにかかわらず、定められた期限内に申告をおこなえば、請求した全額が還付されることになります。今回のケースでは還付であったことから実害はありませんでしたが、納税であった場合(期限後申告となる)は罰金等が課されていた可能性もあります。

 では、どういった方が申告所得税の申告義務者(前提として給与所得者に限る)になるのか以下で確認してみましょう。

 

1.給与所得者のうち申告所得税の申告義務者

 

①給与の年間収入金額が2,000万円を超える人

 *年収が2,000万円を超える人は所属法人等がおこなう年末調整の対象者から除外されることから申告が求められます。

 

②1ヵ所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人

 *ここでのポイントは収入が20万円を超えるのではなく、所得(収入から必要経費等を控除した金額)が20万円を超える場合に申告が求められるということです。

 

③2ヵ所以上から給与の支払を受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人

 *基本的には2ヵ所目の所属法人等からの給与の金額が20万円を超える方は申告が求められることになります。

(注) 給与の収入金額の合計額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ、給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。

 

 ④その他一定の者(レアケースなので今回は説明を省きます)

 

 給与所得者が申告所得税の申告が求められるケースは主に上記の①~③のケースであると想定されます。特に2ヵ所以上から給与の支給を受けている方は、毎月高い税率で源泉所得税が徴収されていることが多いことから確定申告をしなければ損をするという思いが強く、ご自身が申告所得税の申告義務者との認識がないことも多いのではないでしょうか。

 

2.さいごに

 

 今回みてきたとおり「申告所得税の還付申告」については、申告所得税の申告義務の有無にかかわらず申告所得税の申告期限後に還付請求した場合であっても、罰金の対象とはならないことが分かってもらえたと思います。

 申告所得税に係る還付申告をおこなっている方は、自分自身が申告義務者かそうでないかを考えて申告をしている人はほとんどいないでしょう。また、そもそも申告所得税に関しては本来申告する必要がない方で確定申告をしてしまっている方、その逆で本来確定申告をする必要があるにもかかわらずおこなっていない方、いずれのケースも現実的に起こっていると思われます。現状の難解な法制度のもとでは申告所得税に係る確定申告の対応対策をおこなわなければ、払わないで良い税金を払っていたり、追徴や罰金といったものを支払う羽目になることがあるかもしれません。経済的な事情で副業を余儀なくされている方も多くなってきている現況においては、まずはご自身の状況を適切に把握することが求められているのではないかと考えます。

 

以上

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