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法人が寄附等を受けた場合の課税関係

Q:私共の法人は医療保健業を営む税務上の公益法人等です。先日地域の方から現金と土地を寄附していただきました。現金は10,000千円で、土地は時価ベースで30,000千円(購入代金10,000千円)でした。私共の法人は税務上の公益法人等であり寄附を受ける行為は収益事業に該当しないことから、これらの寄附について課税関係が生じないと認識していますが、間違いないでしょうか。また、この他に何か注意する点はあるでしょうか。

・イメージ

財産(現金10,00千円および土地30,000千円)

  個人(寄附者)  → →  法人(公益法人等)

 

A:今回の寄附については、寄附を受ける法人が税務上の公益法人等であることから、質問者の方の認識とおり法人側で法人税等の課税関係が生じることはありません。

 ただし、今回のケースの場合は法人に寄附をおこなった寄附者個人に対して課税関係が生じてしまいます。

以下の解説で課税関係が生じる仕組みを簡単に紹介するとともに法人側での必要な対応も確認していきます。

 

<解説>

1.寄附に係る課税関係

(1) 寄附を受ける法人(公益法人等)での受贈益課税

 寄附を受ける法人が医療法人や株式会社といった普通法人の場合、現金現物の金額と不動産である土地の時価が受贈益として計上され、法人税等の課税所得(税金計算上の利益)を

構成することになります。今回のケースが医療法人であった場合は、現金と土地の時価の合計額である40,000千円が受贈益として計上され、法人税等の課税対象となってきます。

 一方で、受領法人が法人税法上の「*公益法人等」の場合は、寄附を受けること自体は収益事業に該当するわけではないので、法人税等の課税所得を構成することはなく、法人税等の課税関係は生じません。

 今回のご質問のケースでは、寄附を受ける法人は公益法人等に該当しますので、この寄附により法人税等が課されることはありません。

 *公益法人、社会福祉法人、社旗医療法人、「非営利型」一般法人等

 

(2) 寄附をする個人側におけるみなし譲渡所得(所得税)

 個人から法人に対し土地等の不動産や有価証券の寄附をおこなった場合は、現行の所得税の取扱いでは、これらの資産の譲渡があったものとみなされ、その譲渡があった時点における時価と当時の取得価額(購入代金)との差額について所得税が課されることになります。

 厚意による寄附に対して課税関係が生じることについて、一般的には理解しがたいですが、現行の所得税制度ではこのような取扱いになってしまいます。税率も長期譲渡所得で15.315%であり、決して低い水準ではありません。

 ご質問のケースでは、土地についてはみなし譲渡所得の対象となることから、寄附者本人が所得税の確定申告の手続きをおこなうことになります。今回不動産のほかに現金の寄附をおこなっていますが、現金による寄附については、みなし譲渡所得の対象とはなりません。

・みなし譲渡所得税の計算例

  みなし譲渡所得:30,000千円(時価)-10,000千円(取得費)=20,000千円

  みなし譲渡所得税:20,000千円×15.315%=3,063千円

  ※みなし譲渡所得税のほか住民税5%(1,000千円)が課されます。

 

2.その他留意事項

 みなし譲渡所得課税は一般的な感覚からすると、理解しがたい税制度であることから、個人である寄附者側も当該制度そのものを認識せず、寄附をされる方が大半だと思われます。こうした状況を踏まえ法人側では、みなし譲渡所得の対象となる不動産等の寄附の問い合わせがあった場合に、みなし譲渡所得制度に対する最低限の知識を備え説明できることは、寄附者との間におけるトラブル回避にもつながるものと考えます。

 また、みなし譲渡所得課税を回避する手段として、一部法人に対しては非課税制度が設けられています。「一般特例」・「承認特例」といった2つの制度であり、税務署(国税庁長官)に申請し、承認を受けることで非課税となる制度です。この両制度は対象法人や要件に違いがありますが、みなし譲渡所得税が非課税になる点は同様です。

 これらの特例は対象法人が公益法人等に限定されていることや、そもそもの要件のハードルも高く適用を受けること自体困難なケースが多いですが、公益法人等が土地の寄附を受けた場合は、みなし譲渡所得課税を回避するためにも当該非課税制度の適用の有無を調査対応することが寄付者のためにも必要と考えます。

 最後に、法人が相続により不動産等の財産の遺贈を受けた場合に、みなし譲渡所得の対象に該当するケースがあります。このとき法人で遺贈者のみなし譲渡所得に係る準確定申告手続きや納税といった手続きが求められる場合があるので留意が必要です。また、遺贈の場合は財産の状況把握や手続等複雑な対応が求められることから、遺贈案件に遭遇した場合は、弁護士や税理士といった専門家に速やかに問い合わせることも重要です。

 

以上

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