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書籍紹介 -「ブラック職場」 笹山尚人 著 光文社新書2017年11月発行-

 「働き方」改革という呼称で働くもののための改革かのように連日報道がありますが、内容からみても誰のための改革なのかと疑問がわいています。
 今回紹介するこの書籍は、著者は、労働弁護士として多くの「ブラック職場」に接した経験から、「働きやすいホワイトな社会」で生きていけるにはどうしていくかを提起しています。
 前段で、この間起きた労災認定事案が繰り返される悲劇に触れ、また、多くの若者が学生から社会に出されるにあたり、知識を持たずに労働者となる実態などが語られています。
 とりわけ若い労働者は労働者としての知識や教育機会が少ないとあらためて認識しました。

 現在、長時間労働、非正規雇用、賃金格差などこの国が抱えている労働環境は厳しく、そんな中で、著者自身の経験から具体的な事例を通じて検証し、解決策として「5つの解決策の提起」を行っています。
1 労働法制の強化
2 法規制を守らせる仕組み、運用の体制を整える
3 労働法とその使い方を周知させる
4 労働者に抵抗力をつける
5 利益至上主義の企業活動を改める取り組みを進める

 一例としては、1の中で労働時間の規制強化として、時間外労働に法律上の上限を求めるべきとしています。その他、最低賃金の底上げやパワハラ防止の基本法なども求めています。

 また、使用者側への提言として『ホワイト認証』を積極的に取り組むよう求めていく点は今回のこの書籍で初めて知った点です。弁護士の活動として、「経営陣が労働法制等を遵守する意欲を持ち、労務管理の運用実態等に問題がない『ホワイト企業』であることを証明する制度」ということです。

 働き方を考える上で、労働者として、まだ不十分な点を補強し、また経営サイドがなすべき課題について、著者の意見なども大いに参考としていきたいと感じました。
ぜひ、これからの働き方や職場のあり方への提起として、参考にしてはいかがでしょうか。

 
(田中 淳)

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