協働 公認会計士共同事務所

レポート

レポート > コラム

農協の研修会に参加して

 私は、縁あってある農業団体の監事を努めさせていただいています。できあがった決算書が正確かどうかの承認はできても、農業や農業協同組合のことは恥ずかしながら未だに知らないことだらけですが、もうじき監事になって6年になります。
 この農業団体は、農協法による産直の販売専門農協の連合会(全国組織)として、全国の産地の農協、農家と消費者を結ぶ産地直送販売を行い、協同組合活動を真っ直ぐに前進させてきました。片手で数えられるほどの職員で全国の圃場(農地)を駆け回り、主に消費生協を通じて消費者に生産物を届けています。この間の農協改革は、より収益力を高めることを主点におき大規模化を加速させ、日本が育ててきた家族農業やその人々が暮らす地域をなくそうとする道を進んでいます。このような農協改革のなかで、私たちの農業団体は、これからも協同組合運動を何よりも大切にして前進させるため、一般法人へ組織変更し、農協法ではできなかった新たな分野にも活動を拡げ、食料自給率の向上と日本の農業の再生に寄与すること目指し日々奮闘してます。

 昨年の12月上旬、その農業団体の理事会と役員研修会が茨城県の農協で開催され、現地で農協の活動や圃場、加工事業を見学しました。
 訪れた茨城県の農協の地域は、東京から約70?の距離に位置し、筑波山系の山々に囲まれた盆地で自然豊かな農村です。日本中の農村が直面してる高齢化の問題は、首都圏から近距離のこの地域でも深刻ものとなっています。今回は、こうした状況から一歩でも前進しようとする農協の一つの取り組みが紹介されました。
 この地域では約20年前から農協が「新規就農制度」を立ちあげ、毎年一組のご夫婦を受入れて2年間の有機農業研修を行っています。3年目からは独立して営農が行えるよう、圃場や住居の確保まで農協が支援し、20組を超える家族がこの地に移住しているそうです。最初は「家は貸したくない」「どうせ続かない」「家庭菜園の延長線だろう」と研修制度や研修生を「歓迎」という声ばかりではないと聞きました。そのなかでも移住者への住居の確保が一番難しいといいます。東京のようにマンションの隣人の顔は知りません、とは言うことはなく、ゆったりした地域の中で人々の繋がりを大事に生活されてきたからなのでしょう。しかし最近では、「集落活動に参加してくれるなら、空き家を貸したい」と言ってくれる人がいて移住者とのかかわり方にも変化が見られると聞きました。これは高齢者だけの集落では、共同で行ってきた作業ができなくなり生活そのものが成りたたない、若い夫婦の力を借りたいための選択だととらえられていますが、今まで容易に移住者を受け入れようとしなかった文化も時代により少しずつ変化しているのだろうと感じました。
 また、研修生への農産物の生産指導は、農協の「部会」と呼ばれる同業種農家の組織が援助して行っています。私のような農業素人でも、今まで長年やってきた経験値を教えてあげる・・・実際に圃場を見てくれることがある・・・、経験値が財産でありそのような優しい人はいるのだろうかと疑問が沸きました。しかしここでは「有機農業への志」が同じであり、農業者として自ら積極的に学ぶものに対しては快く教えると言います。このお話しを部会長さんがニコニコと笑顔でしてくれたのがいまも脳裏に浮かびます。きっと部会長さんは、農業、有機農業を営む人生に誇りを持ち、次の世代に繋いでいく自分の役割を確信して進んでおられるからだと私は思いました。
この部会長さんがいる間は、きっとこの制度もこの地で根付き大きくなることでしょう。
 人を育て、家族を育て、地域が成り立つ、当たり前のことが当たり前に続くような農業政策にしていくため、全国組織の声をあげる運動は重要だと改めて認識しました。
 これからもこの町で新たな営農者が生まれ、いきいきとその地域で生活する家族農業が続いていくことを願うばかりです。
 今回の研修に参加した全国の農協の役員さんがここで得た知識を持ち帰り、その地にあった方法に変化させ拡げていくことを期待しています。

 農業協同組合は、本来その地域の農家のための相互扶助組織です。
 農協は、その地域で農家が生活していく全てのものが揃うインフラのような存在で発展してきました。
 しかしこの国は、「一つの県に一つの農業協同組合」の方針の基に合併を推し進めています。このことは農家や地域住民の生活そのものを変化させてしまうことを意味します。
 ここでもう一度立ち止まり、組合員に問うことが必要なのではないでしょうか。
 「本当にこのまま合併して大きくなることでいいのですか?」と。
 今の農政に断固反対!!!と改めて想う茨城の二日間の理事会、現地研修でした。

 今日も笑顔の部会長さんがいる部会のネギをいただいています。
 農家のみなさんの苦労は計り知れないが、雑草と栄養分の争奪戦を制し、虫さんと共存し、大きく立派に育った強い白ネギ。
農家の皆さんとネギに感謝のこころを込めて、「ごちそうさまでした!」と伝えたい。
 

 
                                 岡村 弘子

 

トップへ戻る