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協同組合について

 「協同組合」とは何か、と聞かれて即座に答えられる人は少ないかもしれませんが、農協・漁協・生協というと身近に感じる人も多いでしょう。「協」という字はいずれも「協同組合」の略になります。改めて、協同組合について簡単にまとめていきたいと思います。

 

1.協同組合とは

 

 協同組合は、共通の目的のもとに集まった人同士が作る組織です。出資金という形で自分達が元手を出し、組合員となって事業を利用し、組合員として運営にかかわっています。言い換えると、組合員の相互扶助を目的として、組合員の出資にもとづいて、協同して事業活動を行う法人組織と言えます。

 協同組合では、出資者であり同時に事業の利用者でもある組合員が、組織運営をも担っており、組合員の民主的な参画が重要視されます。多くの協同組合で運営の基本方針は総会、あるいは、総代会で決定します。日常的な運営は選挙で選ばれた理事等の組合員代表が行なう代議制がとられており、組合員は出資額等にかかわらず、総代会等での議決権は1人1票が原則となっています。また、利益追求を第一義の目的には掲げておらず、出資金は出資額で払い戻されるのも特徴的なところです。このような法人組織としての性格からも非営利・協同の法人形態の1つであると考えられます。

 

2.協同組合の成り立ち

 

 協同組合の源流は、産業革命期のイギリスの実業家であるロバート・オウエンに遡ると考えられることが多いようです。ロバート・オウエンは資本家でありながら、協同組合の基礎を作り、労働組合運動の先駆者であった空想的社会主義者であると言われています。資本家初期資本主義がもたらした社会的経済的矛盾の激化を受けて、自給自足のための農場や工場を設立し、共有財産とし、運営を合議制にします。協同組合の源流があると言われるゆえんはこの辺りにあると言えます。また、同様の先駆者的組織はドイツ、カナダ、フランス、デンマーク等でも多元的に発生していたものと考える向きもあるようです。

 一方、日本でも農村漁村等の共同体は相互扶助組織としての機能を果たす面も持っており、協同組合的組織は昔からあったと考えることもできます。異論はあるでしょうが、幕末期に現れた、大原幽学が結成した先祖株組合や、二宮尊徳の報徳仕法という考え方も発想の方向としては協同組合と近いものがあると言えるかもしれません。ここで両者を少し紹介します。

 

3.先祖株組合と報徳仕法

 

 大原幽学が結成した先祖株組合は、前述したイギリスの協同組合設立よりも数年早く結成されており、「世界初の協同組合」とも呼ばれることもあります。大原幽学は現在の千葉県の農村を立て直すべく、複数の村で先祖株組合を創設しました。特徴としては、組合員には農地の一部を提供してもらい共有財産化すること、共有財産から得た利益は組合が確保し将来世代への積立や潰百姓の復興、組合の運営費等にあてることなどがあげられます。また、共感する名主による信用事業や教育事業にも取り組んでいたようです。結果的には行政により潰されてしまいますが、確かに近現代の協同組合と通じる所は多いと言えるでしょう。

 一方で、二宮尊徳については、今や減り続ける二宮金次郎像でご存知の方も多いでしょう。前述の大原幽学とほぼ同時期に農村復興政策である報徳仕法を説いた人物です。報徳仕法又は報徳思想と呼ばれる考え方では、私利私欲に走らず社会に貢献すればいずれ自分に還元されるとされます。キーワードは「至誠」「勤労」「分度」「推譲」であり、「至誠」と「勤労」は読んで字のごとく、「誠を尽くして」「勤勉に働く」ことを指します。「分度」は身の丈にあった暮らしをすること、生産能力や家計を把握してその範囲で生活することと考えられでいます。「推譲」は「分度」の結果残った譲与を将来世代や他人、社会へ分配することを勧めるものです。この点では相互扶助的考えを持つものであり、協同組合と共通する所があるように考えられます。また、二宮尊徳が年貢を取り立てる当局側に立つものではなく、貧窮する農民を救済する立場にあったことは重要なポイントと言えるでしょう。

 両者について簡単に紹介しましたが、興味のある方は研究所等にあたってみてください。

 

4.現代日本の協同組合の種類

 

 現代の日本では、事業内容ごとに個別の法律(特別法)で種々な協同組合が規定されており、協同組合に関する一般的な規定は存在しません。主な協同組合とその根拠法としては以下のものが挙げられます。

・農業協同組合(農協)・・・農業協同組合法

・漁業協同組合法(漁協)、漁業生産組合、水産加工業協同組合・・・水産業協同組合法

・森林組合、生産森林組合・・・森林組合法

・信用金庫(信金)・・・信用金庫法

・事業協同組合(事業協)、信用協同組合、事業協同小組合、火災共済協同組合、企業組合・・・中小企業等協同組合法

・生活協同組合(購買生協、医療生協等)・・・消費生活協同組合法

・労働金庫(労金)・・・労働金庫法

 

5.協同組合の税制と会計

 

 日本の協同組合は、出資配当(医療生協の場合は禁止)や残余財産分配権が組合員にあることから、株式会社のような営利法人に含まれると考えられているようであり、法人税法上は、株式会社と同様にすべての事業・活動が課税対象となり、税率が低いに過ぎません。

 また、その根拠法が個別であることから、会計ルールについてもそれぞれの根拠法施行規則等で定められているのが現状です。この間、各協同組合の会計基準の改訂を巡る動きとしては、企業会計の基準を取り込んでいる点が特徴的であると言えます。前述した協同組合の性質や活動内容等を考えると、規則等の改訂を丸呑みするのではなく、批判的に捉えつつ対応していくことも重要であると思います。

 

6.まとめ

 

 我々を取り巻く社会的経済的政治的環境が過渡期にあると考えられる現在において、協同組合はその果たす役割もますます大きくなっていると思います。日本においても先般全国の協同組合の連携を強化する意味も含めて日本協同組合連携機構が発足しています。また、根拠法のない協同組合である労働者協同組合の法制化に向けた取組も進んでいると聞きます。我々の関与先にも医療生協を主として協同組合がありますが、会計制度や税制はもちろんのこと、国際的な面も含めて環境変化を注視しつつ、関与先の維持発展により寄与できるよう奮闘していきたいと思います。

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