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映画「主戦場」を見て

 先日、しばらく気になっていた映画をようやく見ることができました。

 ミキ・デザキという日系アメリカ人2世のドキュメンタリー映像作家が監督した「主戦場」という作品です。テーマは「慰安婦問題」。なかなか難しいテーマであり、これまであまり深く突き詰めてこなかったこともあって、この機会に考えてみようと見てきました。

 

 この作品は、30名近くからのインタビューを論点に沿って、スクリーン上で討論をさせるような手法をとっています。いくつかのキーワードを基に展開し、「20万人」「強制連行」「性奴隷」「歴史教育」など、それぞれ、慰安婦支持派と慰安婦問題の否定論者の主張が繰り広げられます。自分自身はできるだけ史実に基づき、また実際の当事者に寄り添うことが大事ではないかと思っており、「歴史教育」の章は気になったパートの1つでした。

 

 慰安婦問題の否定論者は、語ります。『ニッポン人は「まぁこんな問題は嘘だろう」と。あんまり信じている人はいないと思うんですよね』と。

 でも本当にそうでしょうか。日本人の多くが、そもそもこの問題自体を知らないのではないかと私は思ってました。

 ある政治学者の説明では、歴史的な問題自体が中学校の教科書でも教えられない状況になっているのだというのです。

 1993年の河野談話で慰安婦問題について「歴史研究と教育を通じて永く記憶にとどめる」と決意した時期から、一時は教科書への掲載も増えたそうです。その一方で、「新しい歴史教科書をつくる会」が現れ、「教科書議連」なる組織が自民党を中心に設立されてくるのも、このあたりからです。そして様々な「手」を使い、だんだんと教科書から慰安婦の記述が無くなっていったことが語られています。

 

 私は、歴史に向き合い、そして未来を考える、という視点にたって考える必要があると思います。これは、以前ポーランドの国立オシュフェンチム博物館を訪問した時に感じたことでした。ドイツでは、小学生の社会科見学でアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所跡地を訪れ、過去と向き合う教育を進めているという話でした。

 

 「歴史教育」以外にも、様々なテーマで慰安婦支持派と慰安婦問題の否定論者の主張が出されると、終わる頃には、話し手の人間性を垣間見ることができた感じで、若干の気持ち悪さも交えて、いろいろと考えさせられる時間となりました。

 

 最近は、SNSの時代と言われ、自分の好む話題が手許に集中し、それ以外はアクセスしにくい状況が生まれています。史実に基づかない言説が多く広まったり、また意図して流したりと、ファクトとフェイクが見分けにくい世の中です。

 今も続いている、慰安婦を巡る問題を考える、1つのタネとして多くの人に見てほしい、特に歴史をなかなか学校で教えてもらえない若い世代に知ってほしい内容と思いました。

 

【田中 淳】

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