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改めて今、「非営利・協同」について
1.はじめに
HPをお読みの皆さんは、「非営利・協同」という言葉をご存知でしょうか?クライアントの皆さんやその関係の方々であればご存知の方も多いかもしれませんが、一般的にはあまり馴染みのない言葉かもしれません。この春から入職した組織が「非営利・協同」を掲げているが、何のことだかさっぱりという方もいらっしゃるかもしれません。
実は、当事務所のロゴにも「会計」から非営利・協同の明日を拓くと書かれていますし、事務所の宣言にも6回も出てきます。この「非営利・協同」は当事務所にとって非常に重要な考え方であると言えます。そこで、この記事では改めて「非営利・協同」とはどういった考え方なのかを自分なりに整理しつつ紹介してみたいと思います。
2.非営利って?
「非営利・協同」と一言で言いますが、唯一の定義がある訳ではありません。今までも学者・研究者を含めて様々な人たちがそれぞれの考え方を述べています。ただし、基本的な認識に大きな違いは無いはずだと考えられます。。
まず、「非営利」について整理してみます。これまでに論じられてきたところをまとめると、営利と対するもの、「非営利」は利益がいらないわけではなく必要な利益は獲得しなければならないものであること。つまり利益の獲得を第一義的に追求するのではなく、組織の目的達成の為に維持・発展するのに必要な利益はしっかりと獲得するということが重要であること。利益は目的ではなく手段であること。というとこではないかと思います。
資本主義では営利が社会活動の中心となっているようにも見えますが、近年言われるようにもなった持続可能な社会・持続可能な開発目標のためには営利活動のみでは早晩行き詰まることは容易に想像できます。そこで重要となるのが「非営利」の概念ではないかと考えられます。利益を追求し格差を拡大させるような資本主義のあり方の矛盾を、利益を第一義的に追求しない「非営利」の考え方が広まることによって緩和することにつながるのではないでしょうか。持続可能な社会の目指すべき姿であると言えるかもしれません。そして持続可能な社会を目指す中で、その先に本当の意味で自由で平等な社会・誰もが自分の持っている能力を全面的に開花させられる社会を追求していくべきだと思います。その意味では、国や企業が社会的に果たす役割は非常に大きいもとなることは必然であり、その社会的責任として「非営利」の考え方が広がっていくことを願ってやみません。
また、我々個人も、企業も、団体も、国も、弱者を切り捨てることなく共生していく、差別無く平等に暮らしていける社会を創りあげていかねばなりません。それこそが持続可能な社会であると言え、この点で「非営利」という概念には、差別しない、平等なという想いが込められているものと考えています。言葉を換えると、「非営利」における利益は社会全体としてあまねく・こぼさず持続・発展していくための資源であると言えるでしょう。このように考えてみると、資本主義の矛盾を解消してあるべき持続可能な社会を目指す現状においては、そもそもの「利益」という概念について、の意義を考え直すことも必要な時期であるとも言えます。
3.「協同」って?
「きょうどう」は漢字で書くと「協同」、「共同」、「協働」と色々ありますが、それぞれ意味が違います。それぞれの意味を調べてみます。「協同」は二人以上の人や団体が心や力を合わせて物事をおこなうこと、協力協同。「共同」は「協同」にちかいですが、一緒に物事をおこなうことであり、必ずしも力を合わせるという意味にはならないようです(例えば共同所有など)。「協働」は同じ目的のために力を合わせて働くこと。という具合です。それでは「非営利・協同」における「協同」はどのような考え方なのでしょうか。
「協同」についてもこれまで述べられてきたところを整理してみると、人々が一定の目的や理念のもとに集い、協力協同して活動するもの。組織の運営原則であるとも言えること。
重要なのは目的や理念の共有であること。公平に平等に協力協同して活動することが重要であること。リーダーはいても支配者はいない、出資者・拠出者はいてもオーナーはいない、経営者のトップダウンではなく皆の叡智を結集して動くということ。民主主義、民主的管理運営が肝心であること。といったところでしょうか。
ポイントは組織の運営原則であることということであると考えます。そして目的や理念の共有が重要であるということです。協力・共同して活動するためには、組織の理念に共感して結集し、目的を共有することが不可欠です。そうすることで協力・協同した力がより発揮できることは言うまでも無いでしょう。「非営利」とは利益の獲得を第一義的に追求するのではなく組織の目的達成の為に維持・発展するのに必要な利益はしっかりと獲得するということが重要であると述べましたが、そのためにも「協同」が重要な役割を果たすことになります。
また、この「協同」はややもすると形骸化する可能性も否めません。当初掲げた目的や理念とその取組が形骸化してしまうような事例は当事務所のこれまでの経験の中でも実際にありました。経営危機を引き起こす原因の一つとも言えるでしょう。「協同」が根付いているか、日常的な取組としてなされているか、について画一的な判断基準を持つことは難しいかもしれませんが、少なくとも経営幹部は組織の現状を正しく把握し、「協同」の活動が形骸化しないように不断に取り組む必要があります。また、当然ですが全ての組織構成員は学習を含めた不断の努力に取り組むことが必要不可欠であるとも言えます。
もう一つ、公平に平等に協力協同して活動することが重要とありますが、この「公平に平等に」というのはなかなか難しい課題かもしれません。一見公平・平等に見えることも角度を変えるとそうともいえない、ということはままあります。また、効率化や迅速化を図るが為に公平・平等が損なわれるような局面もあるかもしれません。個人的な意見としては、組織の現状把握に関する必要な情報や何かの判断をするのに必要な情報が分かり易く役職員等に共有されていること(情報を理解するための教育も当然に必要です)、その上であらゆ場面で誰もが意見を出しやすい組織風土、少数意見をおろそかにしないこと、といったことが重要ではないでしょうか。
皆さんも自分の組織で「協同」の取組がおろそかになっていないかどうかを一度考えると改めて気が付くことがあるかもしれません。
4,おわりに
「非営利・協同」は「非営利」だけでも「協同」だけでも長期的には立ちゆかなくなると言われます。「非営利」であり、かつ、「協同」に取り組んでいることが重要であるということです。
研究者ではないのでここまで私見を述べてきたにすぎませんが、一方で、最初に述べたように我々協働も宣言にもあるように「非営利・協同」を自ら掲げ実践し、また志す組織や個人に寄り添い共に歩む事務所です。
先達が模索してきた「非営利・協同」をこれからも日々の活動を通して深化・発展させるべく追求していきたいと思います。
また、この記事を読んだ皆さんが「非営利・協同」について考えたり議論するきっかけになれば幸いです。
以上