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認定NPO法人制度について

1.概要

 2011年の法改正により認定NPO法人の認定要件が緩和され、かつ、当該認定NPO法人に対する寄附金について個人の所得税で税額控除が適用できることとなってから一定の年数が経過した。
 当該法改正により、多くのNPO法人において認定NPO法人となることができる可能性が大きく広がったといえる。内閣府の発表によると、実際にNPO法人の認定数は2011年3月末時点では約200であったものが、2017年3月末時点では1,000超となっており、今後も増加が見込まれるものである。
 ここで、改めて認定要件や税制上の優遇措置について以下に記載する。

2.認定要件

 認定を受けるためには下記の8要件をすべて満たす必要がある。ただし、非営利・協同の事業体を目指すNPO法人においては基本的に1)以外の条件は満たしていると思われ、実質的には1)をクリアできるかが認定の分岐点になると考えられる。

(1)実績判定期間

 主としてパブリックサポートテスト(以下参照)等の要件に該当するか否かを判定する期間は、初回申請時は前2事業年度となる(認定を受けたことのある法人は前5事業年度)。

(2)具体的な認定要件

1)パブリックサポートテスト(PST)。  (イ~ハのうち1つを選択適用)

 イ.経常収入金額のうち寄附金が20%以上(相対的基準)
 ロ.年3,000円以上の寄附者の数が年平均100名以上(絶対的基準)
  →氏名・住所等が明らかな者のみ。1世帯は1名とカウント。役員は除外。
 ハ.都道府県・市区町村の条例により個人住民税の優遇措置を受けている。(条例個別指定基準)
*ロの要件について、寄附者100名以上というハードルは高いものの、金額的には300,000円(3,000円×100名)であり、非営利・協同の事業体を目指すNPO法人については、主にロで該当できる可能性があると考えられる。

2)事業活動において、共益的な活動の割合が50%未満。(=会員等の特定の者だけを対象とした活動ではない)

3)運営組織及び経理が適切。
 ・役員が親族等で占められていない。
 ・公認会計士若しくは監査法人の監査を受けているか、青色決算法人と同等の会計帳簿記録等。

4)事業活動の内容が適切。
 ・宗教活動、政治活動等を行っていない。
 ・役員、社員又は寄附者等に特別の利益を与えない。営利を目的とした事業を行う者等に寄付を行っていない。
 ・特定非営利活動にかかる事業費/総事業費 ≧ 80%
 ・特定非営利活動にかかる事業費に充てた寄附金/受入寄附金 ≧ 70%
 
5)情報公開を適切に実施。
 ・事業報告書等、役員名簿等及び定款等
 ・役員報酬又は従業員給与の支給に関する規定等

6)所管庁に対して事業報告書等を提出。

7)法令違反、不正の行為、公益に反する事実がないこと。

8)設立の日から1年を経過している。

☆認定までにかかる期間は通常6ヶ月程度であり、認定日以降の寄付について税制上の優
遇措置の対象となる。
☆認定の有効期間は5年間である。更新の際には実績判定期間が5年となるため、基本的に毎年PSTの要件を満たしておく必要がある。   

3.税制上の優遇措置

(1)所得税(=個人の寄附)

 所得税の取扱いについては、所得控除と税額控除の選択適用が可能である。以下の計算式により有利な方を選択することとなるが、通常は税額控除が有利となるのが一般的である。

1)所得控除(寄附金控除)
【寄附金額-2千円=寄附金控除額】=所得金額から控除
2)税額控除
【(寄附金額-2千円)×40%=税額控除額】=所得税額から控除

*対象となる寄附金額がいずれも総所得金額の40%が限度。
 税額控除は所得税額の25&相当額が限度。

(2)法人税(=法人の寄附)

 法人税の取扱いについては寄附した側の法人の法人税計算において、認定NPO法人は特定公益増進法人等の寄附金として扱われる。この場合、通常の寄附金の損金算入限度額より一定枠が拡大される。損金算入限度額の計算は以下の通り。

【(資本等の金額×0.375%+所得金額×6.25%)×1/2=損金算入限度額】
*資本等の金額がない法人の場合は1/2は不要。

(3)みなし寄付金制度

 認定NPO法人が、その収益事業から非収益事業に支出した金額を寄附金とみなす制度が「みなし寄附金」である。このみなし寄附金の損金算入限度額は、認定NPO法人の場合、所得金額の50%又は200万円のいずれか多い額となっている。これは実質的に資金流出なく課税所得を減少させることができるということであり、認定NPO法人自身の税金面でかなり有利になる。
 また、認定が取り消された場合には、取り消しの日を含む事業年度の収益事業から生じた収益として、益金算入するという取戻課税がおこなわれることとなる。取り消しとは申請書類の虚偽や不正があった場合、役員の親族要件等を満たせなくなった場合、ならびに事業報告書を所轄庁に提出しなかった場合などであり、例えばPSTにおいて認定要件を満たせなくなり認定の更新をできなかった時点ではない。したがって、通常の運営を行っていれば取り消しという事態は基本的にないと思われる。

4.その他

 設立後5年以内のNPO法人の内、運営組織及び事業活動が適正であって特定非営利活動の健全な発展の基盤を有し公益の増進に資すると見込まれるものについては、要件からPSTを免除し一定の基準に適合した場合は、税制上の優遇措置が認められる特例認定を1回に限り受けることができる。これは2011年の法改正であらたに仮認定NPO法人として導入されたものであり、2016年の法改正により2017年4月より特例認定NPO法人と名称が変わったものである。認定の有効期間は3年であり、その間に特例認定NPO法人から認定NPO法人になる法人も一定数見受けられる。ただし、特例認定NPO法人にはみなし寄附金制度が適用されない等の一定の制限限がある。
 法人の組織運営や事業内容等が適切・適正と認められるNPO法人(私どもの事務所が関与する多くの法人は該当すると思われる)は、仮認定を積極的に検討することが望まれる。また、内閣府のNPO法Q&Aによると、対価性のない会費(具体的な例示としては賛助会費)などはPSTの判定上、寄附として取り扱うことができるとされている。賛助会費制度があるNPO法人は、寄附金と合わせて認定NPO法人の要件をクリアできる可能性があるか再検証することも必要であると考える。

5.まとめ

 認定NPO法人に関する認定要件や税制上の優遇措置等は上記の通りである。非営利・協同分野に対する攻撃・規制・圧力が増大する中で、闘い、対応する為にも各NPO法人においては認定を受けることは検討に値すると考えられる。
 なお、国税庁から「認定NPO法人制度の手引き」や「申請にあたってのチェックシート」が公表されているので、参考にされたい。

以上

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