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非営利組織における固定資産税の非課税等

 私共が関与するクライアントの皆様方は非営利の組織を運営している法人が大半です。ただし、非営利組織だからといってすべての税金が非課税というわけではありません。各税目によって様々な非課税等の取り扱いが設けられています。その中で今回は非営利組織における固定資産税の主に非課税について簡単に紹介させてもらいます。
 固定資産税とは、1月1日に固定資産を所有する所有者に市町村が課する税金です。法人税等の申告納税方式とは異なり固定資産税は賦課課税方式すなわち市町村が固定資産の価格等を決定し、納税通知をする方式によっています。
 固定資産税は市町村が課税の手続をするので、本来は非課税や減免の措置の適用を受けられるにもかかわらず受けていない法人もあるかもしれません。今回はそのような事態に陥らないためにも、非課税の対象となる範囲を確認していただければと思います。

〈固定資産税の非課税〉
 固定資産税の非課税には人的非課税といわれるものと物的非課税(用途非課税)といわれるものの2つがあります。人的非課税とは、国、都道府県、市町村などに対しては固定資産税を課すことができないというものです。
 一方で物的非課税とは、一定の法人が固定資産税の非課税の規程に定められている用途に対象固定資産を使用する場合は固定資産税を課さないというものです。この記事をお読みの皆様方においてはこの物的非課税の規程に該当すれば非課税ということになります。
 物的非課税のうち法人形態ごとの非課税の範囲を簡単に以下に記載します。

(1)医療法人
 a.老人デイサービス、老人短期入所施設などの事業の用に供する固定資産
 b.無料又は低額な費用で介護老人保健施設を利用させる事業に係る固定資産(無低利用に係る入所者の割合要件あり)

(2)社会医療法人
 (1)に係る固定資産のほか、社会医療法人が直接救急医療等確保事業の用に供する固定資産(有料駐車場、売店などは除かれる)

(3)公益財団法人・公益社団法人(医療保健業を営む法人)
 (1)に係る固定資産のほか、無料又は低額な費用で医療を提供する事業に係る固定資産(無低診の患者の割合要件あり)

(4)医療生協
 a.(1)および(3)に係る固定資産のほか、病院および診療所の用に供する固定資産(有料駐車場、売店などは除かれる)
 b.法人が使用する事務所および倉庫

(5)社会福祉法人
 社会福祉事業に係る固定資産

(6)法人格のある労働組合
 組合が使用する事務所および倉庫(市町村の実地調査が入った際、屋内にある喫煙スペースなどは非課税から除外されたと聞いたことがあります)

(7)その他
 社会医療法人、特定医療法人、公益財団法人・公益社団法人、非営利型一般財団・社団法人が看護学校等で直接教育の用に供する固定資産

 以上のように非営利組織における固定資産税の取り扱いは非常に複雑で難解です。また、固定資産税には非課税のほかに各市町村の条例で定められている減免措置(固定資産税の全額又は一部が免除される制度)も設けられています。
 最初にもふれましたが固定資産税は賦課課税方式を採用しています。だからといって、市町村の側で法人における用途等を判断し、非課税・減免とされることは実務上ないと考えてよいでしょう。よって、市町村に申告・申請が必要となってきます。
 減免制度については市町村のHPなどで減免の対象事業や用途などが掲載されていると思われます。事業所所在市町村の制度を適正に認識しておくことが必要です。判断が困難な場合は直接市町村に問い合わせることも一つの手段といえます。特に複数の市町村に事業所がある法人は市町村ごとに減免の取り扱いが異なる場合もあるので留意してください。
 いずれにしても本来支払う必要のない税金を支払うことがないよう法人側で固定資産税の非課税・減免の制度を一定理解把握することが重要といえます。

(久保田 寛)

 

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