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サッカーワールドカップ観戦の勧め VOL.2

 4年前の日本と韓国で開催されたワールドカップでは、当方の顧問先が某大手広告会社から押しつけられた超高額チケットの消化に協力し、埼玉スタディアムでの日本対ベルギー戦(2:2の引き分け)を観戦することができました。日本代表のユニホームを着て応援しようと思いましたが、確か1万5000円(ユニホーム1枚ですよ!)と言われ、断固買わず、「青いポロシャツなのでまあいいか」と妥協したのが勝てなかった原因か? としばらく悩まされました。

 

 さて、月日のたつのは早いもので、サッカーワールドカップがドイツにおいて開催されています。前回の日本と韓国で開催されたワールドカップにあたって、当時の当事務所機関誌「バランス」に「ワールドカップ観戦の勧め」を掲載しましたが、今回もVOL.2として当方の勝手な思いによる観戦のポイントを述べ、皆さんが観戦する上での参考に供したいと思います。

 

 

◆現代サッカーの潮流――トータルフットボールとハードなプレッシング

 トータルフットボールとは、簡単に言うと「全員攻撃、全員守備」という考え方でのサッカーを言います。1974年開催のワールドカップで準優勝した、当時の世界的スターであるヨハン・クライフ率いるオランダ代表が実施した戦術です。

 従来攻撃はフォワード、守備はバックスというようにポジションにより明確に分かれていましたがこれをあらため、全員が攻撃にも守備にも動くこと、ポジションそのものも頻繁に入れ替わること、守備についてもマン・ツウ・マン(相手の攻撃者個々に守備者が対応する)ではなくゾーン(自陣の守備エリアごとに守備者が対応する)ディフェンスをとること、といった点でのサッカーにおける革命的な戦術転換が図られました。極端な話、バスケットボールのゲームのようにサッカーを行うということですが、これ以降、サッカーにおける先進地域であるヨーロッパ、南米のいずれでもトータルフットボールを指向した戦術がとられるようになります。テレビではグラウンドの全体が写されないのでわかりにくいのですが……。

 

 そして現代サッカーにおけるトータルフットボールの進展は、自チーム選手間の距離の接近とそれに基づくハードなプレッシング゛(相手チームボール保持者に対する圧迫)を共通の特徴とします。シュートを打たれる可能性のある自陣ゴールに近いエリア(バイタルエリア)以外でも、フォワードも含めてボール保持者にプレッシャーをかけていくことにより、全員での守備とボール奪取後でのスピーディな攻撃を目指すのです。これも極端な話ですが、ゲームに参加しているゴールキーパー以外の20人全員が一つのボールを追いかけ回す少年サッカーのようなものが現代サッカーなのです。

 昔のサッカーと比べると、90分間で選手は2倍の距離を走り回り、ボールを持って考える余裕はなく、激しい接触プレーも増加しているのが現代サッカーの特徴です。サッカー選手はマラソンランナーではありませんから90分間走り続けるのは不可能です。チームとして攻勢をかける時間と、体力を温存する時間を明確にし、攻勢時に確実に得点し、一方でそれ以外は相手の攻撃をしっかり受け止める、こうしたメリハリがしっかりついていることが、強いチームの条件です。

 

 

◆ポゼッション(攻撃的)かカウンター(守備的)か

 一方で、各国のサッカーには引き続き違いはあります。大きく言って、ゲーム中でのボール保持率を高め主導的に攻撃する方法、すなわちボールポゼッション(ボール保持)を重視するサッカーと、ボールは相手に持たせておいてプレッシングを掛け、ボール奪取後相手の守備陣形が整わない内にスピードある直線的攻撃を行う方法、すなわち守備を重視し反転攻撃(カウンター)を行うサッカーの二つです。

 現代サッカーはプロリーグが国際的になっていることもあり各国の特徴が薄まっているのですが、それでもポゼッションサッカーの代表は優勝候補筆頭で日本と予選リーグでぶつかるブラジルでしょう。また、カウンターサッカーの代表者はずいぶん攻撃的になったと言われてはいますがイタリアと思われます。

 日本は、ブラジル人で現役時代「白いペレ(世界一のサッカー選手と言われている)」と呼ばれていたジーコが監督ですから、ポゼッションサッカーを指向しています。また、日本のライバルといわれる韓国は、オランダ人監督の影響で攻撃的特徴を持ちますが、どちらかというとカウンターサッカーの性格が強いと思います。しかし、両国間のゲームでは、ホームとアウェイ、点数の状況、残り時間等でこうした性格が入れ替わることもしょっちゅうあり、これもサッカーの面白いところです。

 

 サッカーはゴールにボールをけり込んで勝敗を付けるスポーツですから、ポゼッションが良くても勝利につながるとは限らず、一方で守備ばかりしていては勝つことは不可能です。戦術を明確にし、90分間で体力を適切に配分し、11人の意思をしっかり統一したチームが勝利者になるのです。

 

 

◆組織か個か

 また、サッカーを11人の連携で組織的に行うか、それとも選手個々の技術や体力で勝負するかといった志向の違いも、各国で違います。一般的にはヨーロッパサッカーは組織、南米サッカーは個といわれています。

 ただし、これもサッカー選手の交流が広がる中で、一概にそうともいえなくなっています。ブラジルなどは現在世界一といわれているロナウジーニョをはじめとして技術的に優れた選手が多く傑出しているので個のサッカーといえるかもしれませんが、他の国のサッカーは組織と個の力をミックスして戦っているといえるでしょう。

 日本は諸外国と比べて体格が劣るので、組織的なサッカーをするとされています。ただし、組織的なサッカーだけでは限界があります。当然ながら目の前の敵と1対1で闘い、ボールを奪うあるいはディフェンスを跳ね返すといったこと抜きには、やはりサッカーは勝てないからです。この点がフランス人の前監督トルシェからブラジル人監督ジーコへの交代を契機に4年間叫ばれてきました。ジーコの方針は、体格を急に上げることは無理だけれども、技術や自由な創造性、精神力でカバーしようというものです。この点がうまくいっていくかどうか、注目されます。

 

 本文執筆段階ではまだ日本のゲームは始まっていませんが、日本の目標はとりあえず予選リーグを勝ち抜き、決勝トーナメントに進出することです。なかなか厳しいと思いますが、第1戦のオーストラリア戦の結果がそれを決めると思っています。すなわち、勝てば進出、引き分けか負ければ敗退というのが当方の私見です。がんばって応援しましょう。

2006/06(根本 守)

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