協働 公認会計士共同事務所

レポート

レポート > レポート,税 務

2006年度税制改定の役員給与に関する追加情報

 前回、当ホームページで役員給与に関する事項を中心に、2006年度税制改定について解説した(「2006年度税制改定――役員給与に関する取り扱いの変更点」)。その後、これらの具体的な取り扱いや提出が必要な書類等の詳細が明らかになってきた。今回はこれらの取り扱いについて確定した事柄などについて解説する。なお、前回ホームページでお伝えしたものから変更された点もあるため、充分に注意していただきたい。

 

(1) 非常勤役員についての取り扱い

 

 従来、非常勤役員については役員報酬の支給が3ヶ月に1回や年1回であっても、それが定期的かつ同額であれば定期同額給与とされ、損金算入が認められてきた。しかし、今回の改定で損金算入される定期同額給与とはその支給時期が1ヶ月以内のもの、つまり役員に対して給与を毎月支給しているものとされた。

 そのため、3ヶ月に1回や年1回だけ役員報酬を支給しているというような非常勤役員がいる場合は、損金算入される定期同額給与には当たらないことになるので、これらを損金算入するためには所轄税務署に(2)に掲げる事前届出をする必要が生じることとなった。届出をしなかった場合は、その非常勤役員に対する不定期(毎月支給でないもの)の役員報酬は損金算入とならないため、損金に算入するためには毎月定額で支給する方法に改めるなどの必要がある。該当する法人については充分に注意していただきたい。

 

(2) 「事前確定届出給与に関する届出書」

 

 2006年度の税制改定で、役員に対する給与について定期同額給与以外のもの、いわゆる役員賞与についても、税務署への事前の届出を要件として損金に算入されることとなった。

 それにともなって国税庁が定めた定期同額給与以外の役員給与の届出様式、いわゆる「事前確定届出給与に関する届出書」が最近公表された。これについては国税庁のホームページなどからダウンロードすることができるが、これを見ると、定期同額給与の役員についても記載することとなっている。つまり、定期同額給与による支給方法以外の役員がいる場合には、本来届け出る必要のない定期同額給与のみの役員等の分も含む、全役員の役員報酬等についての情報を所轄税務署に事前に届け出なければならないということになる。

 当事務所が当局に確認したところ、全役員が定期同額給与のみである法人については、当然ながらこの事前届出書を提出する必要はないことが確認された。ただし、この事前届出書を提出しなければならない法人において、定期同額給与の役員分は記載しなかった場合にこの定期同額給与はどのような扱いになるのかについては明確な回答が得られなかった。原則的にいえば、定期同額給与の役員報酬損金算入は事前届出書の提出が要件とはなっていないため、その部分は記載しなくても当然これらは損金算入できるはずであるが、今後の動向を要注意といえる。

 なお、使用人兼務役員の使用人部分についての給与および賞与は従来どおり損金算入が可能であり、当該届出書に記載する必要はない。

 

(3) 事前届出金額と実際支給額に差異がある場合

 

 事前確定届出給与の意義は、「所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与」とされている。したがって、事前届出の金額よりも実際支給金額が多かった場合、または少なかった場合については、いずれの場合も届出金額が確定額とはいえないことから、この差異金額だけではなく、その役員に対する事前確定届出給与の支給金額全額が損金不算入となるとされているため、充分な注意が必要である。

 

(4) 定期同額給与の決定時期

 

 これまで説明してきたとおり、支給期間が1ヶ月以下であり、かつ毎月同額の役員給与、いわゆる定期同額給与については事前届出をしなくても損金算入が認められる。この定期同額給与の金額の改訂については事業年度開始の日から3ヶ月を経過する日までとされている。例えば3月決算の法人であれば、6月までに新給与の金額を決定し、その事業年度中に同額の支給であれば定期同額給与の要件を満たすことになる。

 なお、3月決算法人において6月の株主総会等で役員の定期同額給与を増額改訂し、過去分を遡及して6月の役員給与を増額して支給したような場合には損金算入とされないこととなる。したがって、このような場合にこれを損金算入するには、この増額分については当年6月から翌年5月までに支給される役員給与に上乗せするなどして、12ヶ月均等に等分して支給することとなるため注意されたい。

 

 上記のことから考えると、今回の改定は役員に対する賞与の損金算入を認めるものというよりも、あくまで今回の改定は、実態として従来のような年俸の12等分の支給形態だけではなく、賞与の時期に合わせてその月の役員報酬の支給金額を増額することができるという、あらかじめ定められた金額内での支給形態のバリエーションを認めたに過ぎない。

 また、従来認められていた非常勤役員に対する複数月まとめての役員報酬の支給や定期同額給与の役員分についてまでも事前届出が必要となったことを考えると、むしろその部分では課税の強化であるといえる。ましてや事前届出金額と支給金額が違う場合に、その支給金額全額を損金として認めないとすれば、これは明らかな課税強化である。

 特殊同族株式会社における役員報酬給与所得控除部分の損金不算入など、その他の課税強化の流れも含め、今後とも充分に注視していく必要がある。

 

 以上のことから考えて、当事務所の見解としては、役員給与等についての損金算入を考えた場合、これまで多くの法人で実施されてきたと思われる定期同額給与による支給方法を継続し、特別な事情等がなければ基本的には役員に対する臨時的な給与の支給は避けた方がよいものと考える。

(千葉 啓)

トップへ戻る