所有権移転外ファイナンス・リース取引の消費税法上の取扱い
概略
所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る消費税の処理について、支払ったリース料の金額だけをその課税期間の仕入税額控除に計上するという従前の処理をしたとしても税務上の問題はありません。
以下、その内容について簡単に掲載します。
1.仕入控除の時期
平成19年度税制改正により、平成20年4月1日以後に契約を締結した所有権移転外ファイナンス・リース取引は、そのリース取引の目的となる資産の売買(譲渡)があったこととされ、賃借人における消費税の課税仕入れ等の税額の控除の時期は、リース資産の引き渡しを受けた日の属する課税期間において、(リース料総額に係る税額を)一括控除することとされた。
しかしながら、法人税法においては、賃借人が支払リース料として賃貸借処理をしても、償却費として損金経理された金額とされ、事実上改正前の取扱いが維持されている状況にあった。
その後「11月21日付」の質疑応答事例で、一括控除しか認めていなかった消費税法においても、消費税の仕入れ控除について、会計基準に基づいた経理処理を踏まえ、事業者の経理事務の簡便性という観点から、賃借人が賃貸借処理をしている場合は、(その課税期間に支払ったリース料を)分割控除を行うことができることとされた。
すなわち、所有権移転外ファイナンス・リース取引につき、賃借人が賃貸借処理をしている場合には、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間において課税仕入れとすることができるということである。要するに、実務上その期に支払ったリース料の金額だけを仕入税額控除に計上するという従前と同じ処理をしても税務上の問題はなくなったということである。
2.リース契約解約時における仕入控除の時期
リース契約を中途解約した際に支払う残存リース料に対する消費税については、その残存リース料を支払った課税期間において一括で仕入控除を行うのか、それとも売買があったものとされる課税期間(リース資産の引渡しが行われた課税期間)における課税仕入として修正しなければならないのか、どちらが正しいのか。
結論からいうと、どちらでもよいということである。
原則としては売買があったものとされる課税期間における課税仕入れとなるが、実務上の事務負担軽減等の観点から、リース契約を解約した課税期間に一括で課税仕入れと処理しても問題はないようである。これは、法人税や所得税の取り扱い上、リース契約の解約に伴って残存リース料を支払った場合、支払った期に損金算入が認められているからである。
3.事例等
賃貸借処理しているリース期間が3年のリース取引(リース料総額945,000円)で、リース期間の初年度にその課税期間に支払うべきリース料(315,000円)について仕入税額控除(初年度分割控除)を行い、2年目にその課税期間にその支払うべきリース料と残額の合計額(630,000円)について仕入税額控除を行うといった処理は認められるのかというと、認められない。
本件の取扱は、リース取引についてはリース資産の引き渡しを受けた日の属する課税期間(すなわちリース期間の初年度)において一括控除することが原則であるところ、その仕入税額控除の時期において、賃貸借処理に基づいて分割控除することを認めるものである。従って、初年度に分割控除を行い、2年目に残額を全額仕入控除するという処理は、認められないのである。
(久保田)