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買掛金の差押通知のはなし

 国税や地方税の当局は、税金の滞納者について、その滞納者が提出している確定申告書に添付された内訳書等に基づいて、取引先等に対して電話で取引状況を聞いてくることがあります。電話での正式な照会はあり得ませんから、その電話で回答する義務もありません。「書面で照会してください」という対応が適切でしょう。

 近年は、当局を名乗る詐欺もあるそうです。電話で「差し押さえたのでここに振り込んでください」などという差押えはあり得ないことです。書面によることと、相手の身分を確認することが重要です。事情が知りたい場合でも、当局の電話番号を確認して、こちらから電話するといった警戒が必要でしょう。

 

 正式な書面での照会は、質問検査権の行使にあたります。回答をしなかった場合や、虚偽の回答をした場合には、罰則を受ける可能性があります(国税徴収法第188条)。きちんと調査をして、不明な点は質問等もして、適切に対応してください。

 

 調べがついて、第三債務者(滞納者に対する買掛金等を有する者)に買掛金等を当局に直接支払わせる手続きを「債権差押」といいます。税務署長名等の「債権差押通知書」が配達証明で送られることが多いようですが、当局の職員が直接訪問して身分証提示のうえで手渡すこともあります。

 この「債権差押通知書」を受けた後に、元々の取引先等に支払ってしまうと、その支払いは無効とされ、「二重払い」になってしまいますので注意してください(国税徴収法第62条)。なお、国税と地方税は独自に動くため、同じ取引先等について別々に通知してきますが、この場合は「早い者勝ち」だそうです。

 

 ここで注意が必要なのは、滞納者に対する買掛金等も有するが、同時に売掛金等も有している場合です。差押後であっても売掛金等の債権と相殺することができます(徴収法基本通達第62条関係-31)。買掛金等だけを当局に支払ってしまうと、税金を滞納している取引先等から売掛金等を回収することは困難が想定されます。当局には相殺後の金額が支払われるように、売掛金等の債権の有無を点検してください。

 

 終わりに、当局も滞納の回収に躍起になっているためでしょうか、債権の帰属がハッキリしない「債権差押通知書」が見受けられたので紹介しておきます。

 

 滞納者であるA社は、数年前から別会社Bを作って利益が出ている事業部門をB社に事業譲渡していました。今回「債権差押通知書」を受けることとなるXは、以前はA社との取引をしていましたが、B社に事業が移ったので、現在はB社との取引をしています。

当局は、XにB社との取引を照会したうえで、Xが有するB社に対する買掛金をA社に帰属するものと判断して、「債権差押通知書」を第三債務者Xに送達しました。「債権差押通知書」に滞納者はA社と記載され、「差押債権」欄には「滞納者が債務者に有する支払請求権」と記載され、記載金額はXの有するB社に対する買掛金の金額になっています。当局は、口頭でB社に対する買掛金である旨を説明し、第三債務者XがB社に支払った場合は二重払いになる旨を説明しました。

 ところで、当局が第三債務者に対して債権差押をするためには、債権の具体的内容を「債権差押通知書」において明瞭に示す必要があります。このケースでは、B社に対する買掛金であることが記載されていないという手続的な不備があると思われます。

 さて、その後に第三債務者Xは、B社が不服申立(A社とB社は独立した別法人であり、B社債権の差押えは無効だとする申立)を行っていることを知りました。そこでXは、Xが当局に支払った後にB社の主張が認められた場合には「二重払い」になるのかということを当局に問い質しました。すると当局の回答は、「当局としてはA社とB社は同じものだと認識しているが、XがA社とB社を同じだと認識するかどうかはXの判断だ」というものだったそうです。つまり「二重払い」の危険性があるということです。

 Xとしては、当局に支払ってもB社に支払っても「二重払い」になる危険性があるので、どのように対応したらよいか悩むところです。送達された「債権差押通知」は不備ですから一旦当局に戻して、適正な通知が再度送達される前にB社に支払うこともあり得ると思いますが、当局相手に選択しにくいとも思われます。当分は保留して事態の推移を見守る、あるいは金額が大きければ供託をするというのが妥当な選択肢だと思われます。

      岡本 治好 

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