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不正と「内部統制」

 私どものような仕事をしていると、年に数件は不正や現金事故といった不適切な事例に関する相談や報告を受けることがある。残念ながら、「非営利・協同」「民主的」といわれる組織であっても、こうした事例はまれに発生するのである。

 

 昨今、「内部統制」や「コンプライアンス」といった言葉がしばしば使われる。私も以前、当ホームページで非営利・協同の事業体における内部統制のあり方について考えを掲載した。

 

  「会計&法律」 : <非営利・協同事業体と内部統制>

 

 「統制」というといかにも職員等を上からがんじがらめに管理する印象もあるため嫌がられる方もいるが、いずれにしても、こうした組織としての管理運営あるいは業務をおこなう上でのルールは非営利・協同事業体でもあっても非常に重要な仕組みであることは間違いない。

冒頭で述べた不正などは、もちろんそれをおこなった個人の責任は大きいが、組織として内部統制がきちんと確立・運用されていなかったという側面も大きいといえる。その点で、内部統制とは単に企業や組織のための制度というだけではなく、そこで働く職員等を守るためにも必要な制度であると考える。基本的には、「非営利・協同」「民主的」な事業体や組織は、そこで働く職員たちも善意であることが多いが、管理上のずさんさや甘さ、こうした点での組織的な風土が、こうした善意の集団であっても不正等の不適切な事例発生のきっかけとなることが多いのである。個人の善意に依拠するのではなく、そうであればこそ、そこで働く職員等を守るためよりきちんとしたルールや管理の仕組みを構築し、運用していくことが重要なのである。

 

 会計士的な視点からいえば、一番単純ではあるが「現金管理」こそ最も重要な内部統制の要素であるといえる。当然ながら、「現金管理」だけしっかりやっておけば他の業務を適当にやってもいいということではないが、現金の取り扱いのずさんさに端を発して、様々な不正等に拡大していくことが非常に多い。これは特に小規模・少人数の職場や組織において当てはまる。

「現金管理」のポイントは以下のような点が挙げられる。

 

・組織の費用や経費について、原則的に個人での立替はおこなわない。

やむを得ず一時的に立替する場合も、きちんとルールを定め、なるべく速やかに精算する。

・金額の多寡を問わず簿外現金はつくらない。

・現金の入出金がある都度、伝票や出納帳などに記録する。

・入出金の事実がわかる原始証憑と必ず照合する。

 また、できればそのつど「金種表」を作成し、原始証憑とセットで保管する。

・手もと現金の保有額を定める。不要な現金をもたない。

 

 当たり前のことのように感じるかも知れないが、こうした基本的な当たり前の管理をしっかりおこなうということが極めて重要なのである。この点を怠ると個人と組織の現金が混同されたり、何の現金なのか不明になったりして、現金と帳簿等と不一致が常態化し、不正等につながっていくということになる。

 人を疑うための内部統制ではなく、組織や人を守る仕組みとしての内部統制は、真に民主的な組織・職場のあり方として求められていると思われる。ぜひ、読者のみなさんのところでも、「現金管理」について振り返ってみていただきたい。

 

 

(千葉 啓)

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