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暴走安倍内閣は弱者への大増税を準備中

 政府税制調査会はH26年6月27日の総会で、「法人税の改革について」を決定した。ダボス会議(H26年1月)での安倍総理の「法人にかかる税金の体系も、国際相場に照らして競争的なものにしなければなりません」という発言を端緒として取りまとまられたものである。

 グローバル経済の中で日本が成長していくためには、儲かる産業分野を国内に残して、外国企業からの投資を呼び込み、国内産業の新陳代謝を促すという発想で、その最低条件が恒久的な法人税率の引き下げだとしている。

 法人税の恒久減税のために、恒久財源を用意することが鉄則であると強調し、「“広く薄く”負担を求める構造」にするとしている。“広く薄く”とは、は法人税の範囲にとどまらない。法人の利益への課税を減らし、利益以外への課税(均等割や付加価値割など)を増やすことで、儲かっている大企業の税負担は更に軽く、儲かっていない中小零細企業人等の税負担は重くすることを意味している。また、税制上一定の配慮がされている中小法人や公益法人・協同組合などへの課税強化を含むとともに、これにとどまらず個人所得への課税強化も含まれる。

 そして、税制だけではダメで、TPP促進、労働市場改革、原発推進、規制緩和などの政策とワンパッケージで行う必要があるとしている。日本が多国籍企業やハゲタカファンドの草刈り場にされる光景を想像してしまう。

 

 準備されている「法人税の改革」は、私共のクライアントの皆様をはじめ、非営利・協同の組織にとって重大な内容になっており、消費税増税とともに死活的な問題になってくる。

 以下にいくつかの概略を紹介するが、この「法人税の改革について」は秋から年末に自民党税調を経て税制大綱に具体化される。期間は短いが、税制に限らず集団的自衛権行使や秘密保護法、TPPや原発推進、生活保護や医療介護の改悪など安倍内閣の全ての「暴走」を止める取り組みが必要である。私共も非力ながらクライアントの皆様とともに、その取り組みに参加したいと思っている。

 

 

1.公益法人等への抜本的な課税強化 

 

 公益法人等(公益法人、社会福祉法人、社会医療法人、認定NPO法人など)について、その存在意義に照らして租税負担を軽減する措置が取られているが、「公共的とされているサービスの提供主体が多様化し、経営形態のみによって公益事業を定義することが適当でなくなっている。」として、次のような見直しを準備している。

 

 ・社会福祉法人が実施する介護事業は、名指しで課税すべきとされている。

 ・法人税法で「公益法人等」に含める法人の範囲自体の見直し。

 ・全ての事業を課税対象とし、非課税事業を限定する見直し。

 

 現在は、公益目的事業は基本的に非課税で、法人税法に限定列挙された「収益事業」についてのみ課税対象としている。これを、「対価を得て行う事業は原則課税とし、一定の要件に該当する事業を非課税とすべき」としている。

 

 ・「みなし寄付金」制度の適用のうえに軽減税率の適用を受けるのは過大であるとしている。

 

 これらの見直しは、福祉や介護などの非営利分野を営利企業の市場として開放する政策がとられてきた帰結である。営利企業が儲からなくなったら撤退することは、介護保険制度導入後の事実からも明らかである。儲けを直接の目的とせず地域を支えている公益法人等と、儲かるところにだけに資本投下する営利企業とを、「課税の公平」或いは「イコールフッティング(事業の競争を行う条件を平等にする)」という理屈で括ること自体が不当である。

 

 

 

2.中小法人等への課税強化

 

 中小法人等に対しても軽減税率等の租税負担を軽減する措置が取られているが、「真に支援が必要な企業に対象を絞る」としている。「真に必要」という文言は弱者切り捨て政策の枕詞である。現在、800万円以下の所得に適用される軽減税率は「厳しく見直す」「役割を終えている」としている。儲かっている大企業の税率は下げるが、僅かな利益しか出せない中小零細企業などの税率は上げるということである。

 

 

 

3.法人事業税の外形標準課税の適用拡大、法人住民税均等割の増税。

 

 法人事業税は、原則的には法人税と同じく所得に対して課税されるが、資本金1億円超の法人には外形標準課税が適用されている。公益法人等や協同組合等の非営利法人は基本的に外形標準課税の適用対象から除外されている。

 外形標準課税では3つの要素に対して課税される仕組みである。1つ目は所得(儲け)、2つ目は付加価値(主に人件費の大きさ)、3つ目は資本金等(企業の大きさ)である。つまり、外形標準課税の適用対象となれば、赤字でも人件費に対して課税される仕組みである。

 「法人税の改革」では、3つの要素のうち、所得(儲け)と資本金等(企業の大きさ)に対する課税は軽くして、付加価値(人件費)への課税を重くすべきだとしている。加えて、資本金1億円以下の法人にも外形標準課税を適用すべきだとし、公益法人等や協同組合等への適用も考えられる。また、赤字でも負担する法人住民税の均等割も増額することが望ましいとしている。

 地方税においても、大企業の儲けへの課税を減らし、その穴埋めは中小企業や非営利法人への増税で賄うということである。

 

 

 

4.その他の増税

 

 儲けている大企業の減税の穴埋めに、手っ取り早い増税も検討されている。「“広く薄く”負担を求める」ので、個人所得にも及ぶ。 

 

・政策減税の見直し。大企業減税の柱である研究開発減税は「重要度が高い」とするが、ゼロベースで見直すとしている。

・減価償却の定額法への一本化と、任意償却の見直し。欠損金の繰越控除の見直し。

・事業税や固定資産税などを損金不算入とする。

・個人の資本所得課税の強化。主に高齢者の「蓄え」の運用利回りをターゲットにしていると思われる。

・給与所得控除の水準の見直し。

・個人の住民税や固定資産税などの「充実」の検討。

・新税導入の検討。

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