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決算賞与の支払う場合の税務上の留意点

 3月決算法人にとってこれからは、9月末に中間決算日が過ぎて、上期の経営活動や経営成績の総括を行い、下期の目標を再確認し、必要に応じて新たな戦略をたて実行していく季節です。

 これから年末または年度末に向けて、予算以上の利益見通しが見込まれ、その一部を職員

に賞与として還元することを検討されることもあると思われます。

 まずは冬期賞与の支給額を検討し対応されると思いますが、年度末見通しが立たない中で予算以上の支給ができず、年度末に決算賞与として支給することもあるのではないでしょうか。

 会計上は、年度内の勤務に応じた賞与の支給は、その年度の人件費として計上することになります。

 一方、税務上は、原則として「その支払いをした日の属する事業年度」の損金(人件費)となります。但し、3月までの年度末賞与(決算賞与)として4月に支給した場合であっても3月末までの損金として処理できるものがあります。具体的には、下記の税務上の要件を満たす場合に適用ができるとされています。

 

 

【法人税法施行令72の3、法人税法基本通達9-2-43~44】

 

 次に掲げる要件のすべてを満たす賞与は、 使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度の損金となります。

 

イ  その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること。

 

(注1) 法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、ここでいう「通知」には該当しません。

 

(注2) 法人が、その使用人に対する賞与の支給について、いわゆるパートタイマー又は臨時雇い等の身分で雇用している者(雇用関係が継続的なものであって、他の使用人と同様に賞与の支給の対象としている者を除きます。)とその他の使用人を区分している場合には、その区分ごとに支給額の通知を行ったかどうかを判定することができます。

 

ロ  イの通知をした金額を通知したすべての使用人に対しその通知した日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること。

 

ハ  その支給額につきイの通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。

 

 上記の年度末賞与の適用要件を満たして未払金計上をしていれば、税務申告書に明細書を添付することはありません。但し、税務調査を受けた際には確認をされることがあります。(必ずと言っていいかもしれません。)

 支給をすることを決定した会議の議事録から始まり、最終的は各人に交付した賞与支給明細書の控えなど、一連の流れを書類等で確認されます。

 特に要件のうち、「支給額を各人ごとに通知する」に適合しているか否かは、その通知方法や期日について、通知の控え等を提示できるようにしておく必要があります。なお、現在では送信記録が残るため、各人へのメールでの通知も良いこととされているようです。

 実務的には、年度末利益の見通し➝、機関会議において見通しの報告と年度末賞与支給の検討➝機関会議での決定➝支給額の計算➝各人ごとの支給額の決定➝本人への通知を3月末までに行うことになります。この実務が職員にとっては事務負担になることもありますが、利益を職員に還元することで法人税等を軽減することもできるため、法人としてなるべく早期の段階で検討できるよう準備を進めることが求められます。

(岡村弘子)

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