水道法「改正」案とは?
現在、国会は終盤をむかえ、国有資産売却問題や「共謀罪」法案など重要な課題が山積する中、文科省問題で国民の声に耳を傾けるふりで逃げ切るのかと思うような報道となっています。そんな中、あまり聞こえてこないニュースの行方が気になっています。
「水道法改正」について閣議決定がなされ、今国会で成立、2018年度の施行というものです。この「改正」とはいったい何だろう、というのが第一印象でした。
その一部には、「官民連携の推進」という項目があり、「民営化」に道を開くものとの危惧があるようです。
【「改正」案の背景】
報道では、「市町村が主に担う水道事業は人口減などを背景に赤字体質のところが多い。都道府県を広域連携の推進役とし、経営基盤の強化を通じて水道網の維持につなげる。法改正を踏まえ、給水人口が少ない市町村と事業統合する中核都市への助成を拡充する方針。18年度予算で要求する。」(日経新聞より)とあります。
「広域連携の推進」ということで、収益低下や設備投資の必要から、事業基盤強化の名の下に、一方的に「広域化」が進められないか、という危惧があるようです。
推進する側は、「広域化」することでのスケールメリットを強調しています。その一方で、地域ごとのニーズ等と照らしてその「広域化」が真に地域のためかのチェックがされず、押しつけとならないかは不明であり、要注意だと思います。
また、「官民連携の推進」という項目に、「地方公共団体が~中略~水道施設に関する公共施設等運営権を民間事業者に設定できる仕組みを導入する」とあります。
これまでも第三者委託などいくつかの官民連携があり、新しい方式を認めようとするものです。
これにより、民営化の推進、または外国資本なども視野に入れているのでは、との危惧が出されています。
【外国の事例】
少し調べてみると、海外ではすでに民営化の事例もあるようです。しかし、料金の値上げや環境汚染などの問題点を抱え、再び行政に戻した事例が35カ国 180件はあるという報告も出ています。「再公営化」にあたっては、違約金を払うケースもあるようです。このような世界各国での経験を教訓とし考える必要があると考えます。
【強行に注意】
水道事業は、私たちの生命や暮らしに欠かせないもので、水道法は憲法第25条の生存権の保障を具体化するものとの位置づけがある法律です。しかし、なかなか重要な法案についての報道が届いていないようにも思います。
国民の生命と生活に欠かせない事業は民営化になじまないと考えますし、重要な中身を十分議論がなされない、また情報がもたらされないまま、推し進められないように、気をつけていかなければならないと考えます。
(田中 淳)