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「種子法」廃止について

・参院で5時間のスピード決議で廃止

 

 数の横暴で終わった国会が終わっても、未だに政権与党議員のお粗末な状況が報道されて、この国はこのままで大丈夫なのかと思ってしまいます。

 今国会では、なかなか報道が届いてこない法案も本当に多くありました。

 今回の話題もあまり取り上げられることが少ない案件です。

 種子法(主要農産物種子法)廃止案が参院でたったの5時間という審議時間であっという間に決議がなされ、自民公明などの賛成多数で可決成立し、来年の4月1日に施行予定となりました。

 

・種子法とは?

 

 「主要農産物種子法」は、1952年(昭和27年)に、戦後の食糧増産を目的に制定された法律で、米、麦、大豆の種子の生産・普及を都道府県に義務づけてきました。

 この法律のもと、種子生産者の技術水準の向上等により、品質の安定がはかられてきました。都道府県は地域特性を活かした自ら開発したものを「奨励品種」とするケースが多く、米では民間が開発したものが指定されるものが少ないと言われています。

 そこで、都道府県が自ら開発した品種に偏っているとして、種子生産の民間参入を妨げ多様な品種開発を阻害している、と政府は問題視して今回廃止案が出されました。

(なお、民間参入は1986年の改正で可能だが、大きな利益が望めないので民間が参入していないとの指摘もあります)

 

・廃止の影響、今後どうなる

 

 そもそも、現在の我々の多くが口にする農作物は、スーパー等で購入するものが大半です。大量消費のための農作物は、それに適した種子を農家が業者から購入して育て出荷します。その農作物のタネはF1種(一代雑種)という一代限りのもので、種取りがうまくいかないように作られていて、生産を続けるために種子を毎年購入しなければならないという話です。いかに売れる種子を作るか、大手メーカーはしのぎを削って研究しているわけです。一部、固有種という昔ながらの、各地域で育てられた種取りのできるものも販売されていますが、大量生産向きでないため大手メーカーより「タネ屋」さんで家庭栽培向けに続けられています。

 

 政府は種子を農業の戦略物資と考え、民間参入をより進められるようにすることが主眼のように思われ、これまで以上に国民の食の安全を守れるか、はなはだ心配であり、以下のような危惧も出されています。

 

(1)これまで培われてきた国民の知的財産が海外流出し、外資による種子の独占な  どになりはしないか

 

(2)種子価格の高騰を招きかねないのではないか。農作物の安定供給に影響はない  のか。

 

 日本の大手種苗メーカーは世界でも10社に入るが、他の多くは農薬企業や遺伝子組み換えを手がけているバイオメジャーが軒を並べています。

 中南米ではすでに、農民の種子の権利を否定し、種子企業の知的所有権の農民の権利への優越を認める内容の植物種苗法が出されており、反対運動なども起きているようです。

 

 このような情勢をみると、今回の種子法廃止が、我々国民と切り離されて、一部の企業や外国企業のための施策になるのではないか、との疑念が出てきます。

 また、種子法に変わるものがないと、将来的にすべての種子を独占され、固有種の自家採取さえ脅かされる事態にならないとも限らない。

 

 我々の食の安全を守るため、食料主権の放棄にならないよう、こうした問題を大きく取り上げ、また知らされないまま進められないよう情報開示を求めたり、政府をチェックできるように取り組むことが重要ではないでしょうか。

 

(田中淳)

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