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決算予想の重要性 

 3月になり暖かさを感じる日も増えてきました。私たちのクライアントでも多くの法人で年度末決算の時期を迎えます。21年度予算編成議論もいよいよ終盤に差し掛かっていることでしょう。20年度は例年とまるで異なる決算になる法人も多くあると思いますので、主として医療や介護事業を展開する私たちのクライアントの皆様に向けて、決算予想作成の取組と次年度予算編成の関係を整理し、決算予想の重要性について考えてみます。

 

1.決算予想の重要性

(1) 決算予想の意義・目的

 決算予想とは、上半期や10月決算までの累計の経営実績に基づいて通期の経営状況を予想することです。決算予想を作成することの目的は主に2つあります。1つ目は、上期に生じた経営の諸課題への対策をしっかり議論し、これが実践された場合の決算予想を示すことで、法人や事業所幹部による収益増や利益確保追求への動機づけになるということ。もう1つは、経営改善に向けた各種の具体的な数値目標に年度の後半から取り組み、その進捗具合を計ることで、次年度の予算編成をより実践的なものにするということです。

 

(2) 事業所積上げ方式の決算予想

 決算予想を作成するにあたって、決算予想作成時点までの決算書や、その原因となった動態資料をよく分析・総括し、これが下期どのように推移するのかを想定します。この時、「上期の到達が収益予算の97%だったので、下期も同様の水準と予想する」といったように、単純に現状の延長線上で捉えるのは適当ではありません。決算予想は先述の通り法人や事業所幹部による、収益増や利益確保追求への動機づけの意味合いもあります。その点で、単なる上半期の延長予測ではなく、予算乖離が生じた原因を丁寧に抽出し、その対策を講じた場合の予想とするべきです。

 また、決算予想は法人の本部事務局が単独で作成するのではなく、事業所積上げ方式で作成することが大切です。事業所の管理会議や各種職場会議に出された意見や改善提案を踏まえ、限られた経営資源をどこに注力するのかを専門職も含めて役職員がリアルに共有できていなければ、事業所が求められている利益水準に対してあまりに低い決算予想や、逆に到底実現できない荒唐無稽な決算予想となってしまいかねません。決算予想が「机上の空論」になってしまっては、せっかくの取組が無駄になってしまいます。決算予想を作成する取組を通して下期の具体的な行動提起をおこない、その実践結果としての経営改善に結び付けていくことが本質的に重要です。事業所で作成した決算予想を本部事務局が点検し、場合によってはその修正を求めることも必要でしょう。

 

(3) 事業所の決算予想が固まったら

 こうした過程を経て事業所の決算予想が固まったら、各種引当金の繰入や戻入、減価償却費の精算等の決算整理項目を調整して、法人全体の決算予想を作成します。設備投資や退職者の見込はこのころまでには概ね見通せるはずですから、あとは冬季賞与の支給水準が確定すれば、収益・費用ともに一定の精度で決算予想を立てることが可能になります。

 

(4) 決算予想を踏まえた予算編成

 法人の決算予想が固まるころに合わせて、次年度予算編成の議論がスタートします。法人の管理部門が提起する予算編成方針は、法人を取り巻く医療・介護の情勢を見定めつつ、法人それぞれの中長期経営計画やそこから導かれる「必要利益」等をもとに作成されます。これをうけて各事業所で次年度の予算編成を議論しますが、今年度の経営の到達をしっかり踏まえなければ、根拠のないでたらめなものとなってしまいかねません。私たちが関与する法人・事業所の中にも、現場からの要求を反映して人員を大幅に増加させる費用予算「ありき」で、必要利益を確保するために無理やり収益予算を大幅増収で見込んでいるケースは少なくありません。こうした予算では、次年度において実績と予算を実際に比較する段になって、収益と人件費が予算から大幅に下振れることになり、予算に基づく目標管理の実効性が薄れてしまいます。今年度の上半期の時点で実践できず、決算予想にも織り込めなかった経営改善の方策が、翌年度の4月から突然できるようになることは通常ありません。その点で、今年度の決算予想は次年度の予算編成や経営指標の目標設定と「地続き」であると考えるべきで、決算予想の中に目標とすべき姿をしっかり織り込み、下期から取り組んでいくことが重要なのです。

 

2.コロナ禍での決算見込

 2020年度は私たちのクライアントの法人をコロナ禍が直撃しました。これまでにない経営管理が求められる中で、コロナ禍で事業活動の見通しを立てることが困難であることを理由に決算予想を作成しないことを検討している法人がありました。

 まず初めに認識すべきことは、「必要利益」はコロナ禍であっても引き下がるものではないということです。多くの法人で20年度の資金繰りが何とか成り立ったのは、新規の借入や補助金収入があったからにほかならず、今期生じた深刻な経営へのダメージは21年度以降回復させなければなりません。借入金は一部返済猶予期限があるにしてもいずれは返済しなければならないものですし、補助金についても(21年度以降もしっかり勝ち取っていくことは重要ですが)20年度よりも支給水準が引き下がる可能性を考慮せざるを得ません。こうしたことからすれば、法人の「必要利益」はむしろ引き上がっているものと考えるべきでしょう。この情勢の中で21年度の経営管理を適切に遂行していくには予算を実効性のあるものとすることが不可欠です。そのためには、先述の通り予算と「地続き」となる当期の決算予想は必要不可欠なものと考えるべきではないでしょうか。

 

 

3.まとめ

 コロナ対応については医療活動上、経営上、難しい側面は確かにあります。しかし、困難な時だからこそ、基本や教訓に立ち返り、科学的かつ民主的な経営管理をもってこの局面を打開していくことが求められます。本コラムが21年度予算編成や、ひいては21年度における予算管理に関する「見方」「考え方」の整理の一助になれば幸いです。

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