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令和4年度(2022年度)税制改正大綱について

1.令和4年度(2022年)税制改正の基本的考え方からみえるもの

 

 昨年末に令和4年度の与党税制改正大綱が閣議決定され、1月以降、具体的な改正法案となって国会に提出されて審議がおこなわれ、例年3月末までに改正法は可決して成立へ進んでいきます。憲法では「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする(84条)」とされています。この憲法に基づき、国民や各種団体の要望を踏まえた税法改正案の基礎なるものが与党税制改正大綱です。

 今回の大綱における基本的考え方において、『岸田内閣は、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトに、新しい資本主義の実現に取組むこととしている』としています。このために30年間賃金水準がほぼ横ばいであることから積極的な賃上げを促すために税制上の優遇措置をおこなうことやカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出と吸収を差し引いて全体としてゼロ)を目指して税制面からも後押しすることが織り込まれた内容となっています。

しかし、基本的な考え方からみえるものは、内部留保がたくさんある大企業の賃上げの促進、省エネで性能の高い住宅を購入できる富裕層により手厚い優遇措置(住宅ローン控除等)をおこなうなどの税制が主なものであり、コロナ禍が続くなかでギリギリ踏ん張っている小規模な経営や人々が直接的に税の優遇を受けることはとても難しいものに思えます。

 また、昨年デジタル庁を創設し、税務行政においても急速に電子化を進めようとしています。この平成4年1月1日から開始予定であった、電子帳簿保存法のうち「電子取引の電磁的記録での保存の義務化」は、円滑な移行のために宥恕措置が整備される予定で、今までどおり電子データで受取ったものを出力書面にて保存しておくことが可能としています。慌てて対応することはなくなりそうですが、2年の間で準備して対応できなければ「青色申告取消し」を盾にして強引に対応を求めてくるのではないかと懸念されます。経営体力やデジタルに弱い小規模事業者にとっては、システムを導入し運用するのも簡単なことではありません。国民が納得して納税の義務を負える公平な税制のあり方とは何かを考え、今後も税法改正をしっかりみていきたいと思います。

 

 

2.主な改正内容

 

 令和4年度の改正で、主なものは以下のとおりです。

(法人税)

 ・所得拡大税制の拡充(中小企業は最大で前年比増加額の40%の税額控除)

 ・交際費損金不算入の特例(資本金等1億円以下は、年800万円まで算入限度額あり)の2年延長

 ・少額の減価償却資産(10万円未満)、一括償却資産(10万円~20万円)、中小企業等の少額減価償却資産(30万円未満、300万円まで)につい

  て、貸付け用の除外(但し、その法人の主な事業としておこなわれるものは除外するものに含まれない)

 

 

(個人所得税)

 ・住宅取得借入金等特別控除(令和4年1月1~令和7年に居住)

  控除期間が13年となり、控除率は一律0.7%、

  本人所得制限は3,000万円→2,000万円に引下げ

  *但し、コロナ特例法により居住年が令和4年末までとなっている特例は、現行の規定が適用される。  

 ・居住用財産の買換え等の譲渡損失の繰越控除等の2年延長

 

(消費税)

 ・適格請求書発行事業者の登録

  免税事業者が令和5年10月1日~令和11年9月30日までの間に事業者登録を受ける場合には、その登録日から適格請求書発行事業者(課税事業

  者)となることができる。

 

(資産税)

 ・住宅取得等資金の贈与の非課税の延長(非課税限度額を引下げて、2年延長)

  耐震、省エネ、バリアフリーの家屋の取得 1,000万円まで

  その他は500万円まで

 

(その他) 

 ・上場株式等の配当と譲渡所得について、令和6年度以降の個人住民税の課税方式は、所得税の課税方式と一致させる。

                                      以上

 

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