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事業協同組合の解散と清算による残余財産の分配について

(事業協同組合とは)

 

 事業協同組合は、『中小企業等協同組合法(以下、「中企法」という)』により設立された組織で、中小規模の商業、工業、サービス業その他の事業を行なう者等が相互扶助の精神に基づき共同して事業を行ない、これらの者の公正な経済活動の機会を確保して、自主的な経済活動を促進し、且つ、その経済的地位の向上を図ることを目的としている法人です。(中企法第1条)

 私たちの国の法人や個人事業者、それらに雇用されている人々の数は、大企業よりも中小企業の方が多いにもかかわらず、中小企業は、人材、情報、技術、資金調達力等の経済資源が大企業より不足しており、ひとつの中小企業が全ての要素を備えることは困難が伴い、限界が生じます。そのために相互扶助の精神に基づく組織連帯が必要であり、全国に約40,000の事業協同組合法人が事業活動をしています。

 

(事業協同組合の解散と残余財産の分配及び清算結了)

 

 日々、各々の事業協同組合は、その目的に向かって事業を進め、組合員の発展に寄与して活動が継続されていきますが、時にはその事業協組合の設立時の役割を終えて組織を消滅させることもあります。(中企法第62条)

 事業協同組合法人としての事業活動を終了させることを「解散」といい、解散した後その法人を消滅させるために法人の財産のすべてを換価していく活動期間=「清算事業年度」を進めます。

その後、清算が終わり残余財産を確定して、出資金を含む残余財産を組合員に分配をおこないます。最終的に事業協同組合の財産がすべてなくなったことが確認されたときが「清算結了」となります。なお、事業協においても基本的な登記事務手続や税務手続は、株式会社などの法人と同様ですのでここでは具体的手続きについては省略させてもらいます。

 

(残余財産は組合員へどのような基準で分配されるのか)

 

清算事務が完了して残余財産が確定されると、その残余財産(現預金)は組合員へ分配されることになります。事業協同組合は、各年度で生じた剰余金を「出資額」若しくは「組合員が事業を利用した分量」、又は「出資額と組合員が事業を利用した分量」に応じて配当(中企法第59条)して組合員に還元することから、そもそも清算結了時に出資額を超える多額の残余財産が残ることは少ないと思われます。各年度の剰余金の配当がおこなわれてきた場合でも清算結了時に拠出した出資額以上の残余財産が生じた場合、拠出された出資額を超える残余財産(現預金)は、組合員にどのように分配されることになるのでしょうか。

 

 事業協同組合の根拠法である『中小企業等協同組合法』には、残余財産の分配に関する規定は見当たりません。

一方、民法では、「組合」(民法第12節)のことが定められており、第688条3項に「残余財産は、組合員の出資の価額に応じて分配する。」とあります。

また、中企法には規定されていませんが、事業協組合の定款には、「持分」の条項を設け、「組合員の持分は、本組合の正味財産につき、その出資口数に応じて算定する。(均等式)」としている事業協同組合が多くが、この条項によりその事業協同組合の財産は、常に組合員が「出資額に応じた持分」により所有しているとしています。この持分の所有については、民法における「組合財産の共有」(民法668条)と同じです。

 このように『中小企業等協同組合法』に残余財産の分配、持分に関しての明文規定はありませんが、民法の「残余財産の分配」と「組合財産の共有」、その事業協同組合の定款の「持分」の条項により、清算結了時の残余財産(出資額及び出資金を超える額)についても出資額に応じて組合員が所有していることから、持分の割合で分配することに問題は生じないと考えられます。

 

 なお、残余財産の分配に係る税務上の取扱いは、組合員に分配された金額のうち拠出した出資金を超える金額は、みなし配当として源泉所得税の対象となりますので留意してください。

 

以上

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