国や地方公共団体から現物給付をうけた場合の会計処理
長引くコロナ禍や政府行政の推し進めるDXの流れの中で、マスクや消毒液等の消耗品をはじめ、医療機器やその他の電子機器等を国や地方公共団体から現物給付されるケースがこの間見られます。こうした現物給付の会計処理について、場当たり的に処理していては、税務調査等思わぬところで足をすくわれかねません。以下に基本となる考え方を整理するので参考にしてください。
※国税庁等の正式な見解ではありませんので、判断に迷うケースでは事前に顧問税理士や監督官庁に問い合わせてください。
1. 法人税課税法人が現物給付を受けた場合
株式会社や生活協同組合等の法人税課税法人が補助金を受領した場合、「無償による資産の譲受け」に該当しますから、税務上は益金の額に算入されることになります(法人税法第22条)。そして、金銭以外の資産の無償の供与を受けた場合には、「その贈与の時における価額」をもって受贈益として益金に含めることとされています(法人税法第25条の2 2項)。
したがって、法人税課税法人が医療機器等を国や地方公共団体から現物給付された場合、その時点での市場流通価格等の「公正な評価額」をもって受贈益を計上することになります。現物給付を受けた年度には受贈益が課税所得を構成しますが、その後当該資産の減価償却を通じて費用(損金)になっていきます。また、「地方公共団体から土地等を時価に比して著しく低い価額で取得した場合」と同様、現物給付された年度に受贈益が課税所得を構成することを避けるために、国庫補助金等で固定資産を購入した場合と同じように圧縮記帳することも認められるでしょう(基本通達10-2-3)。
2. 公益法人等が現物の現物給付を受けた場合
収益事業をおこなっている場合に法人税が課される公益法人等が資産の現物給付を受けた場合はどのように考えればよいでしょうか。この場合、以下のように場合分けができます。
(1) 公益事業に対する現物給付
公益法人等においては収益事業に対して法人税が課税されますから、公益事業に対する受贈益には法人税は課税されません。
(2) 収益事業に対する現物給付
収益事業に対する補助金は、それが①固定資産の購入または改良に充てるための補助金か、②収益事業に係る収入や経費を補填するための補助金か、によって課税関係が変わります。具体的には①の目的の補助金であれば法人税は課税されず、②の目的の場合にのみ法人税が課税されます。この点については「公益法人等が収益事業に属する固定資産取得のために補助金を受けた場合の課税関係」で詳しく解説していますのでご参照ください。
現物給付の場合にもこのルールを準用することができると考えられます。例えば収益事業に機器等が現物給付された場合であっても、先の「①」の補助金の課税関係を準用し、受贈益には課税されないということです。
なお、(1)、(2)どちらのケースであっても、会計上は依拠すべき会計基準に則り、「公正な評価額」をもって収益計上することとなります。また、現物給付は「無償による」資産の譲受けであり、対価がありません。よって消費税は不課税取引として処理します。
3. 「公正な評価額」がわからない場合
たとえば医療機器を現物給付で受け入れた場合「公正な評価額」で収益計上することになりますが、医療機器の場合はその定価と実際の取引価格の間に大きな隔たりがあることも多く、流通市場も限られるため、「公正な評価額」が正確に把握できないケースもあると思われます。こうした場合、担当者が一人で考えていても答えは出せませんので、卸業者に問い合わせることも一つの手です。ただし、そのような場合でも最終的に全額を圧縮記帳するのであれば、利益(所得)の額には影響しませんので、ある程度任意に受贈益を算定したとしても実害は生じません。
以上